プロローグ
さっきまで、なんともなかったのに…
すごい勢いで自分の中の何かが弾けた気がした。
胸が苦しく意識が薄れていく中、私は思い出した。
前世の記憶を……
※
乙女ゲーム『暁の魔法使いと約束の乙女』の登場人物が一人。
悪役令嬢 メアリー・アルデバランにどうやら転生したらしい私は、魔力暴走によって前世の記憶を思い出した。
正直洒落にならないくらいの激痛で記憶を思い出したはいいが今世で早々に死ぬところだった。
いや、悪役令嬢に転生とかこれからのこと考えると大人しく死んで何もかも忘れて生まれ直した方がよかったのでは?と思ったけどそうは問屋が卸さないらしい。
「うっ……あ……あ、ん?」
「っお嬢さま!?お目覚めになられたのですね!すぐにすぐにお医者様と旦那様達をお呼びいたします」
3日ほど意識不明での生還を私は果たしたらしい。
嬉しそうなメアリーの家族や使用人達の顔が印象的だった。これが将来辿るエンディングによって変わってくるんだから恐ろしい…
それから、数日ベッド生活を送り今日無事全快となった。私が一番に確認したのは容姿だ。感覚的にはメアリー・アルデバランに転生してしまったとわかっていても確かめずにはいられなかった。
子供には大きい姿見の前に立ち写った姿を見る。
背中辺りまで伸びた濡れ羽色の髪に少し吊り目気味のサファイアを思わせるブルーの瞳。
幼さはあるが間違いなく、あのメアリーで間違いないだろう。
「そうと決まれば…アン!まっさらなノートを一つ持ってきてくださる?」
現状と攻略開始時のチャートなどなど、ノートにまとめなくてわ!
<まとめノート記述>
①乙女ゲーム『暁の魔法使いと約束の乙女』の世界であること
②現時点では、小さい子供のわがままで済まされているらしい
③攻略開始は13歳からの一年半程期間。
④ルートは主に4つ。
王太子ルート・幼馴染ルート・先生ルート・先輩ルート
そこからさらにそれぞれのエンディングへと分かれる。
ルートに入るのは簡単だけど、このゲームはそのあとが大変なのだ。それぞれに、ライバルの出現や謎解き、魔術師としての力量が一定値必要になってくるからしてゲーム上最初は必ず選択したルートのノーマルエンディングとなる。
⑤悪役令嬢のルートは全てBADENDである。
主に王太子ルートで活躍のメアリーは幽閉end・処刑end・魔界へ追放end・冷たい結婚endがある。
「救いがない!!」
思わず、書きかけのページを力強く握ってしまう。ちなみにだが、他ルートでもメアリーは登場する。2周目以降主人公の行動次第でどのendへと行くのかが決まってしまうどうやってもこのどれかのendを辿ってしまうのだ。
「落ち着いて少なくとも、この世界のベースは1周目扱いのはずつまり私が迎えるendも一つしかない!!それに、このゲームの攻略を知る私がいるんだから、少なくとも大人しくしていれば愛がある結婚になるかもしれないわ。」
はい!方針は確定した。どうにか王太子を振り向かせるわ!!
ノートを閉じ椅子から飛び降り、私は自室から勢い良く出ようとしたら何かに突進されてひっくり返ってしまう。
「メアリー!!!!よかった〜とっても心配したんだよ。」
「!??え、えーっと、ルー??」
「どうしたの?まさか…僕のこと忘れちゃったとか言わないよね?」
「も、もちろんよ。片割れのあなたのこと忘れるわけないじゃない」
すみません。誰ですか!?こんなキャラいたかしら…?いや、メアリーとしての記憶がきっちりと覚えている。メアリー・アルデバランの双子の片割れ ルートヴィッヒ・アルデバラン。
メアリーと色違いの赤い瞳を持つ少年。
……どんなに、前世の知識から探しても悪役令嬢に双子の弟なんていなかったはずなんだけど!?