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03 オッサンもいろいろ大変なんです

前回のあらすじ


呪いを解くため、百年後に勇者マコトが召喚されたよ。人類総オッサン化の呪い。

 言葉をなくした会議室に異世界スズメのコーラスが響いて3分、ようやく勇者マコトの再起動が完了。


「えっと、その、なんとおっしゃいました?」


 あまりにあまりな発言に、出来れば冗談であってほしいと一縷の望みをかけるが、


「ですから、世界中の人間が、おっさんになってしまう呪いなのですじゃ・・・」


「それは、何かの比喩で? おっさん臭い行動をとるとか?」


「残念ながら言葉どおりの意味だ」


 おっさん二人に真顔で言い切られては、中々に反論のしようもない。

 おっさんその①、大司教グロリオ12世が恐ろしくもおぞましい、魔王の呪いについて語る。


 曰く、およそ百年前、勇者ヤマダにより魔王が討伐されようというその間際、魔王の呪いが世界に駆け巡ったのだと。

 当時、この世に生を受けていたあらゆる『人間』が、老いも若きも、男も女もすべておっさんになってしまったのだ。

 勇者ヤマダはイケオジに。

 神盾(イージス)の戦士はマッチョオヤジに。

 海母神ティティスの女僧侶は正統派の紳士に。

 真理アレーティアの女魔導士は色気ムンムンのチョイ悪オヤジに。

 そして、魔王が求めた幼女アリスは、ちっさいオッサンに。


「ちっさいオッサン!?」


「左様。お伝えしました通り、すべての人間がおっさんになってしまいましたからな。

 それは子供や赤子といえども例外ではないのです。

 言い伝えでは、お花とおままごとのお好きであられたアリス王女は、呪いを受けて以降、酒と演歌と競馬を愛する、立派なおっさんになられたとのこと」


「思ったより大惨事だ!?」


「がははは!なぁに、意外と人間はしぶといものよ!

 確かに当初は世界中大混乱に陥ったとのことだが、程なく適応しておる。

 百年経った今では、おっさんだらけの現状が普通という感覚になっている者が殆どだわい!」


「そこ、胸を張るところかなぁ」


 おっさんその②、将軍ビクトールにこの物言い。正に勇者!


「えっと、適応ってどういうことでしょう?

 その、男性だけでは、なんというか、次の命を迎え入れることができないというか」


「ああ、アレのことですな。

 勇者どの、どうせこの国にはおっさんしかおらんのです。堂々と言えばよろしい。

 田舎の農民だと生まれてから一度もおなごと話をしたこともない者ばかりですぞ」


「うわぁ、チェリーの大農園だぁ」


「質問にお答えしますとですな、おっさんしかおらぬ状態ではありますが、赤子は授かりますゆえ、存亡の危機ということはないのですじゃ」


「さずかる・・・?」


「左様。男同士の【友情値】が100を超えると、コウノトリが運んできますのじゃ」


「ゆ、ゆうじょうち?」


「冒険者ギルドや各地の領主館にある、鑑定の魔水晶で確認できますじゃ」


「ほえー」


「こう、互いに肩を抱き、左右から指を搦めて水晶の上に置くと、ピンク色に染まっていくのですじゃ」


「絵面がひどい」


「コウノトリ以外にも、畑でおっさんが採れることもありましてな」


「それなんて恐ロシア?」


「こちらは個人の【父性】が100を超えると、ある日とつぜん庭にキャベツが生えて、その中には小さな可愛らしいおっさんが」


「うん、軽くホラー」


「がはははは! 子供の作り方なんぞで怖がっていてはいけませんぞ勇者どの! ちなみに俺の【父性】は53万じゃ」


「国どころか星ごと滅びそうだ!?」


「勇者どのも危機感を抱いていただいたご様子ですな。

 ちなみにそうやって授かるのは、小さいとはいえ立派なおっさん。

 普通に歩けますし、初めから会話もできますし、ヒゲや体毛もビッシリですじゃ。

 ビールと焼き鳥で育てるのが今のブームですかのう」


「なにそれこわい」


「赤子は神界でちいさなおっさんになるまで育ててから届けてくださっているのですじゃ。

 神界生まれのおっさんにはヘソがないのが特徴ですかのう」


「なにそれもこわい」


「がはははは! まぁそういうものと受け入れてしまえば良いだけのこと!

 『呪い』についてはご理解いただけたかな?」


「まぁなんとなくは。

 女性的な特徴が男性的な特徴に変換されてオッサン化したってことかな。

 それでもこの世界が崩壊しないように、戦乙女ヴァルキュリア様以外の神界の方々も尽力されている、と」


「そういうことですじゃ。神託でも神々からの檄が飛びますからのう」


「・・・子育て、大変そうですもんね」


「最近の神託では、女神様と天使様を見る小さいおっさんの目つきがいやらしいので、はよ魔王の呪いを何とかしろとのことですじゃ」


「あー。戦乙女ヴァルキュリア様も美人でしたしねぇ」


「ワシもお会いしてみたいものですじゃ」


「なんていうか、近寄りがたい神々しさがありましたねぇ」


なんとなく光の差し込む窓の方へ手を合わせ、無言で目を瞑る3人。

冗談みたいな呪いでも、それに対抗するにはあっちもこっちも大変なのだ。


 目を開けると、いつの間にか黒子が窓から見える位置に女神と戦乙女の像を並べていた。

 小さく親指を立てる。

 きっと黒子なら気づいてくれるだろう。



「司教様、将軍様、ありがとうございます。『呪い』についてはあらかた理解しましたので、魔王と魔族についてお聞かせください」


私の執筆力は0.53です。

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