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「それでは続いて、ランク付けのための試験を受けていただきます。
試験は模擬戦、実戦、実技の3つから一つ選んでください。
模擬戦では、こちらの用意した人員と戦っていただきランクを付けます。
実戦では、モンスターと戦っていただき、その結果からランクを付けます。
実技では、調査、採取、護衛、運搬などの戦闘能力以外の能力からランクを付けます。実技と実戦は日数がかかることがあります。
ランク付けが済めばギルド証をお渡しできます」
これは模擬戦だな。俺は野生のモンスターを1から探すのなんてしたことがない。探索之結界があるから障害物は無視して探せるが、それでも慣れないことは余計に時間がかかる。
調査、採取なんてまず無理だろう。見たことの無い物を採ってこいなんて言われても俺には出来ない。護衛は多分対象を護るのが仕事、運搬は物を運ぶのが仕事内容だろう。異空間作成は使えそうだが、そもそも時間がかかりすぎそうだ。
「模擬戦でお願いします。戦えるのはいつになりますか?」
「サクマ様の準備が整い次第で構いません。何時でも大丈夫なように、スタッフは常に準備していますから」
「それなら今からでお願いします。ルール説明をお願いしたいのですが」
「かしこまりました。模擬戦を行う訓練場まで少し歩きますので、その間にご説明します」
そう言って建物の奥へ続く通路を手で示した。
道を進んでいるとルールの説明が始まった。
「模擬戦では爆発物、毒薬、ガス、空気に干渉する攻撃は禁止です。武器、防具は自前の物を使用していただいて構いませんが、貸し出しも行っておりますので必要の場合はおっしゃってください。
始めに述べた攻撃以外のスキルに制限はありません。決まっている範囲から出るか降参した時点でそちらの負けになります。ランク付けに必要なのはどのように戦うかですので勝敗は関係ありません。また制限時間も設けませんので、時間をかけて戦われても大丈夫です。
他に質問はございますか?」
とりあえず禁止攻撃は俺には関係ない。
「あの、一つだけ。俺と模擬戦をしてくれるのはどんな人ですか?」
「戦い方は事前にお知らせしてはならない決まりになっています。実績につきましては、試験官になれるのはBランク以上の方ですので、思うように戦っていただいて構いません」
何度か分かれ道を曲がりながら説明を受ける。もうかなり歩いた気がする。
「訓練場はもうすぐそこですよ。屋外に作ってあるので歩かなければならないんです」
〔全くお前も面倒なことになりやがって〕
「うお!?」
「ど、どうかしましたか?」
「あいや、なんでもないです……」
急に喋るなよ、びっくりしたじゃないか! しばらく黙ってたせいでお前の事忘れてたよ。
〔喋らなかったんじゃなくて喋れなかったんだよ。あの女、第2門解放間近だ。もし話しかけたら気付かれたかも知れなかったからな〕
第2門解放ってなんだ? それが俺達に何の関係があるんだ?
〔第2門っていうのはLv200のことだ。Lv100になると第1門解放、Lv300になると第3門解放って言われる。門を解放する毎にスキルを一つだけ覚醒させられるんだ。単純にステータスも上昇する。最悪、気付かれたら俺が破壊される可能性もある〕
いや、スキルの覚醒とかどうして破壊されるのかとかわからないことが増えたぞ。
〔そんなもん、後であの女に聞けばいい。それよりお前、模擬戦じゃ灰魔法は使うなよ。黒魔術と白魔術、あとは結界で戦え。灰魔術、異空間作成も禁止だ。魔法、禁術は他人に知られて損しか無いからな〕
ーーそれにお前なら、その3つのスキルで大抵の敵には勝てるだろう
その言葉が、なんだかすごく嬉しかった。
「サクマ様、そろそろ訓練場です」
言われて意識が現実に戻る。いつの間にか外に出ていた。前には、確かに訓練場らしき場所がある。その広さとただ平らな土の地面は学校のグラウンドと言われた方が納得できそうだが。
「グランツさん! お待たせしました。本日登録されるサクマ様をお連れしました」
声の先にいたのは銀色の胸当てと籠手をした、濃い抹茶のような緑色の逆立った短髪を持った強面、長身、ムキムキというなるべく関わりたくない男の人だった。
左手に円形の盾、右手に両刃の片手剣を持って、素振りをしていたところだったようだ。剣を振る手を下ろしてこっちを向いた。
「おう、待ちくたびれたぜ。こっちはもう準備はできてるがそっちのガキはどうだ」
「……ええ、俺も準備はできてます」
「ルールはここに来るまでに説明してあります。今回はサクマ様が魔術を使うため範囲制限は無しとします。どちらかが降参するか私が止めに入った時点で終了とします。それでは両者、距離をとってください」
言われて距離を取る。相手も同じように下がっているのを確認しながらどんな風に戦うか作戦を立てる。
同時にアレを実行しなければならないことを理解する。
「……その位置で結構です。それでは……始め!」




