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だからと言うわけではないが、目につくもの全てが珍しい。日本じゃ見たことの無いレンガでできた家。大きな道の両側を埋める屋台やお店の数々。さっき通りすぎたところには、3人程並んでいる井戸があった。すれ違う人も多かったが、誰も俺に違和感を持ってはいないようだ。
いつまでもこうして周りを見回していてもしょうがない。誰かに道を教えてもらおう。
ちょうど前の店から自分と同じか少し上の年に見える少女に聞こう。
「あ、ちょっとすいません。この町のギルドに行きたいんですけど、道を教えてもらえますか?」
「うん? ギルド? ……ああ身分証ね。いいわよ、暇だし案内してあげる」
案内してくれることになったのは、俺より少し背の高い、長い黒髪を持ち、サキと名乗った。
「こっちよ」
俺の前を歩くサキ。これまで俺が歩いてきた方向に歩き出したのを見ると、俺は本当に迷っていたようだ。
なぜだろう。サキを見ていると懐かしい気分になる。一週間洋食を食べ続けた後に和食を食べたみたいな。
なんだろう、なんだろうと考えていると、目の前の背中にぶつかりそうになった。サキが立ち止まっていたみたいだ。
「ここが、あなたの行きたかったギルドよ」
そう言って示された建物は、周りよりも一回り大きな、でもそれ以外は普通の外見をしていた。ファンタジー小説のように酒場なわけでも、宿屋なわけでもない。大きな家である。
「あなたの言いたいことはわかるわ。でもここは裏口というか表口というか。冒険者用の出入口は反対にあるの。まあ入って説明を受ければ理解できるでしょう」
サキの後ろについてギルドに入る。すると、中にいた人が驚いた様子で声をかけてきた。
「い、いらっしゃいませ、サキ様。本日はどのような御用事でしょう」
「今日用事があるのは私じゃないわ。用があるのはこっちよ」
そう言ってサキを俺を指差す。俺のことに気がついていなかったらしい、驚いていた。
「いらっしゃいませ。本日はどのような御用事でしょう」
俺は首から下げた板を見せながら言った。
「ギルド証を作って欲しいんです。あと、冒険者について教えてもらえますか?」
「かしこまりました。ではまずギルド証からお作りします。この紙に必要事項をお書きになった上、1000アルクと一緒に提出ください。あちらの机をご利用ください」
俺は少し離れたところにある机の一つに案内された。俺の前にはサキが座る。
「いくつか説明してあげる。
まずアルクっていうのはお金の単位よ。
銅貨は10アルク。銀貨は1000アルク。金貨は100000アルク。白金貨は10000000(一千万)アルクよ。金貨、白金貨は無いけれど、銅貨と銀貨はこれね。必要な1000アルクはこれでいいわね」
そう言ってサキは、机に広げたいくつかの硬貨の中から銀色のものを投げて寄越した。
「俺はお金は持ってないからありがたいが……なぜそこまでしてくれるんだ?」
案内は親切だで片付くが、さすがにお金までくれるのはわからない。そういうと、サキは呆れた表情を浮かべた。
「なにあんた、まさか気付いてないの? 私も日本出身なのよ。私がこの世界に来たときはかなり苦労したからね。ある程度の立場になってからは、なるべく日本人を助けるようにしてるの。ここには無いけど大きな街にいけば、日本人専用の集合住宅だってあるし、この国はかなり生活しやすいと思うわよ」
「は!? 本当に日本人なの!?」
「咲希なんて日本人っぽい名前、この世界じゃ日本人以外で使ってる人なんていないわ。それに黒髪だって珍しいでしょう? あとありきたりな町の風景で珍しそうにしているのも目立つしね。日本人ってかなりわかりやすいのよ」
そういうものなのだろうか?
「日本人は少ないけど居ない訳ではないわ。さっき言った集合住宅っていうのは国が日本人を集めるために経営しているの。日本人は何らかの特殊なスキルを持ってるからね。国に所属するのは嫌だって旅をする人もいるもの。……そろそろ書けた?」
「ああ、これとお金を持っていけばいいんだな?」
「ええ、基本的な説明はその時に聞けるわ」
俺は記入した紙を持ってさっきの人の所へ行く。
紙を渡すと、それをじっくりと眺めたあと話し始めた。
「……サクマ様ですね。よく使うスキルは黒魔術と白魔術。結界も使えるのですか……、支援後衛。レベルも76と高レベル。なるほど、かしこまりました。それではギルド証を作成いたします。少々お時間がかかりますのでその間にギルドについてご説明させていただきます。
ギルドはほとんどの国、都市、街にあります。一くくりにギルドと呼ばれていますが、それぞれの国から支援されているため別の国のギルドを利用する場合はその国で再度ギルド証を作る必要があります。ただ身分証としてだけなら別の国のギルド証も使用可能です。
ギルドに所属し、クエストをこなす方は冒険者と呼ばれます。冒険者にはランクがあり、上からS、A、B、C、D、Eの6つです。クエストにも同じランクがあり、自分と同じか一つ上、一つ下のランクのクエストしか受注出来ません。自分のランクを上げるためにはギルドの試験を受けていただいて合格する必要があります。
Eランクを除いた方々には、毎月初めにランクに応じた金額を入金していただきます。入金していただけなかったり、クエストの失敗が続いた場合にはランクを下げさせていただく事があります」




