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戦闘シーンを書いては消し書いては消し……

あ、細かいことですがバラムの口調を変更しました。気になる方は16話くらいから読み直して頂ければわかるかと思います。

「えっと……。バルザさんはその後どうして騎士になったんですか?」


 拓武が口を開いた。

 確かに、あのめちゃくちゃ優しくて頼れる大人感を出してるバルザさんが人を殺しまくってたなんて信じられない。でも、俺はそれ以上に、人殺しをあっさり受け入れている俺自信にびっくりしている。

 でも……魔物だってやっぱり生きてるんだよな。いろんな魔物を殺しすぎて感覚が麻痺しているのだろうか。


「刑の一環ですよ。本来なら死刑相当ですが、あの頃のバルザ君はまだ成人前でしたし。かといって半端な労働をさせるには罪が重すぎると上の人が悩んでいたところに、現団長がいったんですよ。

『それなら騎士見習いとして騎士団で働かせてみるというのは? 騎士団内の仕事は激務ですし』ってね。

 軍団長までいったのは、軍部が実力至上主義だからさ」





▼▼▼バルザ▼▼▼


ーーー聖騎士が狂殺師に変更されます


ーーージョブ変更に伴いレベルが変動します


ーーーレベル変動完了


ーーーステータス、スキルを変動させます


ーーー完了


 自分の脳に空白が出来るのがわかる。狂殺師でなくなってから積み上げて来たもの。自分を救ってくれたもの。それを与える側になりたくてがむしゃらに頑張った聖騎士。一つ一つがこぼれ落ちて、空白が出来ていく。

 見習いの時から一緒に頑張ってきた同僚は。ずっと気に掛けてくれた文官は。自分を人間にしてくれた恩人は、一体どんな人だった?

 自分は一体、何を守りたい?





▼▼▼咲真▼▼▼


「ハハハハハハハハ! これは凄い! まさか狂殺師だと!? そんな絶滅危惧種が見られるとは! 成る程、確かに貴様なら我が魔導人形を打倒しうる!」


 バラムが大きな声で笑い出した。俺にはバルザさんが棒立ちにしか見えないけど、もう狂殺師になった脳だろうか?


「フウウウウウウウッ!」


 バルザさんが動いた。鋭く息を吐きながら、右手でナイフを持ち、一直線にゴーレムに……って速い! 俺の目には二歩目からが見えなかった。


「狂殺師は攻撃のスキルを持ちません。使えるのは《身体強化》と《感覚強化》、それも戦闘中は常時発動するものです。自分に《フィジカルアップ》を掛けて置きなさい。動体視力も上がって見えるようになるはずです」


 先生が教えてくれる。確かにフィジカルアップで見えるようになった。

 ゴーレムに近づいたバルザさんは、そのまま斬りかかるかと思った瞬間、体を(ねじ)るようにして斜め後ろから斬りつけた。

 しかしゴーレムは左腕を跳ね上げて受け止めると、右腕で突きを放った。その時、俺の目でもぼんやりとしか見えないほどのスピードで右腕が回転したと思ったら、右手首から先が長い剣になっていた。

 バルザさんはそれを()()()()()()()()()、左の脇腹を抉られつつもう一度ナイフを振るった。


ガキィッ!


 驚いたことにさっきは腕に止められた斬撃が少し食い込んだように見えた。

 ゴーレムはそれを見て、右手の剣で大振りを放ってバルザさんと距離を置こうとする。バルザさんはそれに対して体を前に投げ出すようにしてゴーレムの足を斬りつける。ゴーレムはバルザさんが態勢を直す前に左手で肩を殴り付けた。

 ここまでたった数秒だ。ゴーレムもバルザさんも、速すぎる。


「ハアァァァァアアアッ!!」


 驚嘆していると、バルザさんが一気に勝負をかけた。

 殴られてから不自然に脱力している左腕を鞭のようにして動かし、その遠心力でゴーレムを連続で斬りつけ始めたのだ。


ドガガガガガガガッ!


 さっきよりもさらに威力が上がっている。それでも、切るというよりも削るが近い感じだ。ゴーレムもそれがわかっているのか、いつの間にか両手を短剣に変えて斬りつける。腕が一本のバルザさんと二本のゴーレム。僅か数瞬でバルザさんは血だらけになった。すると、


バスッ!


 バルザさんが急にゴーレムの右腕の肘を切り裂いた。そしてゴーレムは、腕を斬り飛ばされた瞬間にバルザさんの膝に短剣を突き刺した。バルザさんは自分の膝を見て、()()()

 体を屈め、左手を固定する形になったゴーレムの背中ー人間ならば心臓の辺りーに、ナイフを突き刺した。


「ーーーーー………………」


 これまでとてつもない威圧感を出していたゴーレムから、その威圧感が消えた。同時に、腕や脚、頭が胴体から外れていく。


「素晴らしい……。まさか魔導人形を倒すとは……。狂殺師、なんと素晴らしい。」


 バラムが何か呟いている。だがそれよりも早くバルザさんを手当ていないと!


「ダメだッサクマ君!」


 俺の腕を掴んで止めたのは先生だった。


「今のバルザ君は狂殺師だ! 近づけば君も殺害対象になる!」


 バルザさんはまだ動く左足だけで最も近くにいたバラムに飛び掛かった。


「なんと凄まじい。そしてなんと脆いものか」


 バルザさんは後ろから現れた巨大な顎に噛み砕かれた。


「全く……。どうせこんなことにはならないと適当につけただけだというのに、まさか作動するとはな」


 ゴーレムの胴体が転がっていた場所には蒼い鱗の巨大なドラゴンがいた。その口は赤黒く染まり、牙の間からはバルザさんの腕が覗いている。


「あああああァァァァァアアアアア!?」


「サクマ君! しっかりするんだ!」


〔ーーだーうだ! 今お前が狂っちまったらお仕舞いだぞッ!〕


 バルザさんが! バルザさんが! 後ろからあのドラゴンにーー


〔しっかりしろよ! 確かにあいつは死んだがお前は生きてる! あの竜相手にそんな状態じゃすぐに死んじまうぞ!〕

 

 うるさいな、何だよお前! 耳元で騒ぎやがって黙ってろよ!


「コレは我でも制御できんというのに……。我も怪我はしたくないからな。ここらで帰るとしよう」


〔おいッ! バラムが転移しようとしてるぞ! お前もこの部屋が凍りつく前に脱出しないと!〕


 うるさいなぁ! 何だって言うんだよ! バラムが居なくなる? だから? どうせあのドラゴンに殺されるんだよ!


〔何諦めてんだ! だったら俺がお前らを救ってやる! だからその体を貸せ!〕


「ではな、諸君。もしまた会ったら今度こそは魔物にしてあげよう」


 ああ良いさ、こんな状況で俺たちを助けられるって言うならな!


〔その言葉、忘れるなよ?」

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