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「《ヒール》! 《ヒール》! 《ヒール》! ヒー」


「もう、大丈夫です……。あり、がとう、ございます……」


 俺を止めたのは今まで動かなかった筈のアルレナさんだった。


「い、いやいや、何言ってるんですか! 喋るのもやっとじゃないですか!」


「それで…いいのです。この技を……撃つためには」


 そう言ってアルレナさんは斧を握った。


「退いてください、サクマ様。そこに居ては巻き込んでしまいます」


ーーー《起死回生(きしかいせい)》 《殲滅之斧(せんめつのおの)》ーーー





▼▼▼アルレナ▼▼▼


 ーーアルレナよ。この技は格上を倒すには最適の技じゃ。

 ーーだからこそ、決して格上に使ってはならん。

 ーー相手が何であろうとも、倒せる可能性ができる。

 ーーそれには、途方もないリスクがついてくるのだから。

 ーーお主の命の半分というーー


(すいません師匠(せんせい)。私は、貴方の言葉に背きます)


(守らなければならない人たちがいます。倒さなければならない敵がいます。そして、私はもう死にそうです)


(《ヒール》で回復するのはHPだけ。致命傷を負った私では、回復したそばから命がこぼれていく。ならば)


ーーー《起死回生》《殲滅之斧》ーーー


起死回生

 効果は、発動者の残HPを、最大HPの半分だけ削ること。そしてそれが致命的であればあるほど、次に放つ攻撃の威力を上昇させる。


殲滅之斧

 斧技系最強の技。発動条件は、発動者が死ぬこと。発動者の命を対価に、敵を()()()()殺す。例えば、殲滅之斧の威力が『10000』だとしよう。そして敵のHPが『7500』だった場合、残りのダメージ『2500』が()()()()()()()()()


 起死回生発動時のアルレナの残HPは673。削られるのは4069。すなわち、3396分だけが致命的となる。

 殲滅之斧の威力は28000。ここに起死回生の効果が追加されると、威力は『61094』。


 そして、アルレナは死んだ。





▼▼▼咲真▼▼▼


《殲滅之斧》ーーー


 そして、俺はアルレナさんを助けられなかったことを知った。どうしてかはわからない。でも、俺の頭が『死』を受け入れた。


ブウゥゥゥン


 アルレナさんの斧が、アルレナさんの手から離れていく。スキルの影響だろうか。斧に数字が被って見える。

 その斧が、アルレナさんが震衝で態勢を崩したミノタウロスに触れた。それだけで、


ドガッ


 ミノタウロスが倒れた。どうして、触れただけに見えて実は攻撃していたのだろうか。そういえば、被っている数字が『57860』に減っている。

 斧はそのまま、次のミノタウロスへ向かった。


49227


36501


19930


 最後のミノタウロスで一気に数字が減った。8000くらいで倒せた奴も居たのに、最後だけ17000近く減った。数字だけ見れば倍以上だ。

 まだ数字の残っている斧は、そのまま離れた所にいたバラムへと向かった。そういえば、ミノタウロスと戦っている間はバラムは何もしてこなかったな。

 バラムは、斧を避けようともしない。威力はミノタウロスで見ている筈なのに。


ガシィッ


 斧を止めたのは何処からか現れた、鎧を纏った腕だった。


「どうして我が、魔方陣を二重にしていないと思った? なあ、魔導人形よ」


 召喚されたのは、真っ黒な鎧で全身を包んだ人形の魔物だった。

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