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あらすじ
五階層の敵の強さを体験した主人公たちは、新たな力を手にしていた!
「ここ、だよね?」
「ここ、でしょうね」
「ここ、なんだろうな」
今、俺たちの前には、見上げるほど大きな扉があった。縦3メートルくらいとか、何が通ることを考えたんだろうな。
五階層の探索中に、浮かび上がるように現れた黒い扉。赤とか金とかで、いかにもって感じの装飾がしてある。
多分、ここがーーー
「「「ボス部屋」」」
ゆっくりと扉を開ける(拓武が)。これまでとあまり変わらない感じの薄暗さ。でもこれまで見たこと無いくらい広い部屋だ。それに足元もすごいゴツゴツしている。というか、これは、
「これ、魔物から出る箱? ここの床全部!?」
そうだ。魔物を倒すと出てくる『赤い箱』が床全体を埋め尽くしている。ダンジョンの魔物は地上の魔物と違って、倒しても確定で箱を出す訳ではない。五体に一体くらいで出てくるのだ。もしこの箱全てがダンジョンの魔物だったとしたら、誰かが魔物を何百体も倒したことになる。
自分の踏んでいた箱を開けてみると、中からは『小鬼の牙』が出てきた。これはゴブリンのドロップアイテムだ。
もしかしたらここは、大量のゴブリンの巣穴だったのだろうか。それで通りかかったすごい強い人が全て倒したとか。そうじゃないとしたら、これは
「ねえ咲真、梓。あれ、友好そうに見える? そもそも人、だよね?」
拓武が言っているのは、この部屋の中央に立っている人影のことだ。俺たちが入ってきてから一歩も動いていない。それ以前に、箱のゴロゴロしている部屋に居ること自体が異常だが。
少しずつ近づいていくことでわかる、その人影が剣らしきものを持っている。
「ウ……ウウ……」
黒がかった緑色の肌に、一七〇センチほどの背丈。これまでも何回も戦ったこの姿は、そう………
「ギシャー!」
ゴブリンだ。かなり刃こぼれした血濡れた剣を肩に担いで走ってくる。これまでのゴブリンとはスピードが桁違いだ。これでも五階層に慣れてから来たはずなのに、眼で追うのがやっとだ。でも他の二人は違った。
「《魔装》!」「《裂傷》!」
正面からゴブリンを押さえにかかる拓武と、毒を使っていく梓。二人が動いてくれたおかげで、俺も自分のすべきことを思い出した。
「《エンチャント・パワーダウン・ディフェンスダウン・スピードダウン》! 《エンチャント・パワーアップ・ディフェンスアップ・スピードアップ・聖属性》!」
聖属性も始めから使っていく。これさえ欠かさなければ、貰うダメージは少なく、与えるダメージは多くなる。
「《飛燕》!」
これは拓武の刀技のひとつだ。飛燕は相手の攻撃を避けて自分の攻撃を当てる、カウンターに近い技だ。相手が武器を振り切った所に攻撃を持っていく、限りなく避けにくい技だ。だがそれを、ゴブリンは首を捻って避けた。
あり得ない。さっきあのゴブリンは拓武に向かって剣を振り下ろした。体は下方向に流れているし、すぐには次の動きができないくらい思い切り振っていた。そこにカウンター。見えたとしても、反応はできないはずだった。それを最小限の動きで回避した。
拓武の攻撃が止まって見えるほどに相手が強いのか。それとも、全力に見えたほどの力が実は軽く振っただけだったのか。どちらにせよ、一番身体能力に優れている拓武よりもはるかにステータスが上。拓武よりも強いなら、俺なんて一撃でやられかねない。




