11
あらすじ
主人公たちはダンジョンへ向かった!
思いの外近かった!
「うっそー! また来たー!!」
「「「ギシャー!」」」
「え、《エンチャント・スピードダウンフィールド》!」
「《一文字切り》!」
ここはダンジョンの一階層と呼ばれる場所。ゴツゴツした足場の悪い床が体力を削り、ザ、洞窟といった感じの壁と天井に囲まれている。二股道、十字路、広い部屋、……。俺たちはこの迷路さながらの場所で連戦を繰り返していた。
「入ってまだ一時間しかたたないのに、もう十匹と戦ったわよ!? ここどうなってんのよ!」
「これもまたダンジョンの特徴ですよ。邪気を取り込むことで食事が必要無くなった魔物達が、次々に繁殖しているんです」
「あ、ちょっと待って。MP減りすぎて次エンチャントフィールド出せん」
「僕も、さっきのでスキル回数が無くなって……」
「ではここらで休憩を挟みますか。ダリアン君、準備をお願いします」
ここで俺たちは休憩に入った。正直一時間で休憩を挟むのは早いと思うが、何しろその一時間が濃厚過ぎた。多いはずの俺のMPや、温存するはずだった拓武のスキル回数が尽きたくらいだ。
スキル回数というのは、拓武が使った一文字切りのような強力なスキルについているものだ。魔術と違って少ないMPでも発動する代わりに、発動できる回数が決まっているのだ。拓武の刀技スキルは、刀を鞘に納めていることで回復していくらしい。
「はい、咲真。」
梓が渡してきたのはMPを回復する液体だった。
「あれ? これどうしたんだ? ダリアン先生が持っていたのは全部濃縮した個体のやつだろ?」
「さっき薬草を見つけたから作ったのよ。せっかくこの前生産系スキルを覚えたのに、使わないともったいないでしょ?」
こいつ、多才になってきたな。ていうか俺と拓武は戦闘でいっぱいいっぱいだったのに、こいつには草採ってる暇まであったのか。
「にしても一階層でこれだなんてな。二階層までで今日の探索が終了とはいえ、めちゃくちゃきついぞ」
「だよね。正直数が多すぎて、普通に切ってるんじゃ間に合わない。咲真が全体にスピードダウンかけてくれて助かってるよ」
「皆様、そろそろ出発しましょう。申します二階層まで半分を切りましたので、すぐに着くと思いますよ」
そう言われて俺たちは、アルレナさんの言葉で出発した。




