第十七話
「皆、言いたいことはわかっておるな?二度とブリッツ殿の陰口などを叩かぬように。それと、自由意志ではあるが、ヴァリスの爵位、法衣貴族ではあるが、贈呈したいと思っておる。勿論、其れによって生ずる義務は無効とし、此の王都に新たな城を建てて、邸宅としていただく」
この発言には流石にどよめきが収まらなかった。因みに爵位の説明を此処でしておく。
此の国の貴族は名前・家名・階級・領土という順番で名前が決まる。そして、その爵位に当たる部分には特殊な名前が付けられている。西洋の爵位に当てはめるとこんな感じになる。
騎士爵:テオ
準男爵:イア
男爵:アリ
子爵:ディア
伯爵:ネリア
辺境伯:ザムス
侯爵:サリム
公爵:ヴェロウ
大公:ヴァリス
王:ヴァスリア
大公は王家の者。公爵が親族である。一般人が貴族になって、それの最高位は侯爵である。これは武勲を上げる、商売で大成功する。等、いろいろな分野で活躍すれば爵位が上がる。だが、基本的には世襲制である。法衣貴族以外で、平民がいきなり貴族になれるとしたら、テオ、イア、アリ。このどれかである。法衣貴族とは一代限りの爵位だ。これはもともと敵国の間者が寝返り、二重スパイを行ったとか、他国の亡命者で、よっぽどの機密情報を持ってきた者等に与えられるものだ。法衣貴族は一代限りでネリアまでと決まっている。勿論、爵位が上がれば上がるほど必要な功績は大きくないと駄目だ。西洋とは違いはあれど、大体こんな感じだ。
「陛下!流石にそれは如何なものかと!」
「そもそもどこからその様な予算を持ってくるというのですか!」
王は答える。
「軍縮じゃ。軍を縮小させ、それで余ったお金を全てブリッツ殿のために費やす!」
どよめきはまだまだ続く。
「百歩譲ってサリムならまだしも、ヴェロウ以上というのはありえませぬぞ!」
「儂の娘を差し出す」
更にどよめく。
「何をおっしゃっておるのですか!今現在王女殿下で適齢期の者はおらぬではないですか!」
「……わかっておる。じゃが、ヴァリスの爵位を持つもの、後にヴァスリアになる者が居るではないか」
「まさか!何処の馬の骨とも知れぬ輩に王女殿下を差し出すなど!愚の骨頂でございますぞ!」
「黙れ!これは決定事項じゃ。王命じゃ。お主らも命が惜しければ、言うことを聞け!」
「陛下!それはあまりにも横暴が過ぎるかと!」
「お主も黙れ!近衛騎士団長!此奴もつまみ出せ!書紀!記録せよ!此奴の爵位を剥奪じゃ!後継者を即刻選定せよ!王命じゃ!」
あまりの王の横暴さに静まり返る。
「良いな!これは決定事項じゃ。覆すものは即刻処分する。発言する際は気をつけよ!」
重い空気が漂う。すると、急に部屋の真ん中に光が現れた。
「うむ。こういうのをデジャヴュと言うのだったか……」
そして、光の中からブリッツが現れた。
―――――
ブリッツは転移すると、速攻空を飛び、戦況を把握する。そして、複数体のアジ・ダハーカを出現させると、一気に敵を攻め滅ぼす。そして、転移。これを繰り返した。かかった時間は10分あったか無いか。弱いアジ・ダハーカに経験値を蓄えさせ、ホクホク顔で俺は再度転移を行った。
そして、先程の部屋へとテレポートする。その時に声が聞こえてきた。
「うむ。こういうのをデジャヴュと言うのだったか……」
と。
―――――
「あれ?皆さんまだ残ってたの?とりあえず、指定されたところは全部滅ぼしてきたよ?」
重いな~と感じていた空気が更に重くなった。
「ブリッツ殿。済まない。恩に着る」
「いや、別にやりたいことやってただけだし」
「今回の功績は大きい。それでなのだが……」
「ああ、地位とか報酬とかはいらんぞ?あ、いや、金は少しもらっとくか?」
「い、いや。金は支給させていただきたい。そして、同時に法衣貴族として、爵位をお渡ししたい。勿論貴族の義務は免除じゃ!ブリッツ殿はそれほどの功績を残しておる」
俺は少し考える。
「何?俺を此の国に縛りたいの?」
「め、滅相もない。ブリッツ殿を縛ることなど、誰にも出来はしない」
「ふ~ん、じゃあ何?」
「儂は、お主にヴァリスの地位を。後々、法律を改定して、ヴァスリアを名乗ってほしいと思っておるのじゃ。勿論、其れによって此の国に縛られることは無い。敵になったとしても、お主の分の給金は支払われる。金輪際お主の邪魔にならない事を誓おう」
「その地位が良くわからないんだけど、どんなやつなの?で、どれくらい金がもらえるの?」
「文官、説明せよ」
爵位と金の話をしてもらう。
「へ~、そんな事していいの?てか、俺、国は別にいらないんだけど」
「それは先程も言ったが、法律で一代限りの王と同等の権力を持つということで、ヴァスリアの名前を授けたいと思っておる。好きに此の国を使って良い。そうじゃな、権限は事実上ブリッツ殿の方が上になるじゃろう」
「……其処までして、俺を縛りたいか……まぁ、いいだろう。少なくても利害が一致する間は好きなようにしろ。俺は後帰るぞ?それと、出かけるからな?まぁ、何かあったら分かるように、リアの家の部屋に盗聴の魔法をかけとくから、そこまで来て呼び出せ。言っておくが、王の声にのみ反応するように設定するから、他の使者が来てもどうしようもないからな……後は……」
「そ、その前にもう一つ、頼み事がある」
「ん?何だ?」
「儂の娘を娶ってくれぬか?」
「は?」
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