第4話 無力
中学の時の友達の家に行ってゲームをしたり、高校の話をしたりして楽しい時間を過ごした。CODやスマブラなどそりゃあ、もう遊びに遊びまくった。まあ、その分負けまくったけど。
往々にして楽しい時間というのはすぐに過ぎ去ってしまうものだ。気がついたらもうあたりがオレンジ一色だ。少し遠くの方を見てみると薄っすらと空が紫がかり、月の到来が夜のおとづれを告げる。
俺の家に特に門限があるわけではない。だが、他の友達が門限で帰ってしまったので、友達と一緒に帰った。
久しぶりに会ったが、みんな楽しくやっているようだ。良かった良かった。思い出話に花を咲かせながら、楽しく家に帰った。
だが、楽しいだけでは終わらなかった。そう。今回も妹がやらかしたのだ。
家に入ると異様な臭いが鼻に付く。お酢や塩酸などの酸、特有のすっぱい臭い。
そして、何より妹が「お帰り!」と出迎えてこない。嫌な予感がプンプンする。
「あこ!」
妹は倒れていた。ゲロを身体中、カーペット中にぶちまけて、見るも無残な状態だった。ビクッビクッと身体を何回も痙攣させ、白目を剥いていた。いつもの元気な姿からは想像もつかない、だらんと弛緩した表情。わかってはいても顔が強張る。
やはり、嫌だ。こんな姿のあこを見るのは。
妹の様子から、“発作”を起こしてそこまで時間はたっていないだろうと推測し、親に電話して、来てもらうことにした。
タオルを取り出してカーペットについたゲロを拭いていく。臭いし、汚い。でも、妹が倒れているのを見ると止めることはできなかった。
多分、必死だったんだろう。気づいたら妹は目を覚ましていたし、親も帰ってきていた。
俺は静かに歯噛みした。自分が恨めしかった。妹が倒れているのに何も出来ない自分が。
結果から言うと、特に妹に問題は無かった。ちゃんと意識を取り戻して、次の日から、また元気でドタバタした1日が始まった。
でも、俺は少し元気がなかった。妹は「どうしたの? 元気ないよ? 」と呑気なことを言っていたが。お前のことだよ!
今日も俺は、妹の屈託のない笑顔と能天気さに救われた。妹の笑顔にはパワーがある。小さな悩みくらいなら吹き飛ばしてしまうような大きなパワーが。
少しばかり元気を取り戻した俺は、残りの休みで思う存分羽を伸ばし、夏休みをさらに満喫するのであった。
僕がこの小説を書こうと思った理由の1つです。
早く治りますように。
現実度 98%
脚色度 2%