第2話 進化した妹
まず言いたい。なんで俺の部屋から出てくるんだよ!お前自分の部屋あっただろ!
「だって、にいにをすこしでも感じたかったんだもん」
何その猟奇的な考え。やばいやつだとは思ってたけどここまでやばいやつだったっけ。
「にいちゃんの匂いがすこしだけ残ってたから。寂しかったけどなんとか耐えられたよ」
そう言って彼女はニコッと笑った。勘弁してほしい。こんなん彼女でもきついわ。可愛いかったら別だけど。実際俺の前に立って微笑んでいるのは山姥のような髪型をした少女。寮に入る前より身長が伸び、170に到達したらしい。うーん、なんだろう。漫画やラノベで出てくる彼女はもうすこし女の子らしくて可愛い子なんだけどなぁ。まあ、スタイルはいいからそこだけは認めてあげなくもないけど。
「本当に寂しかった!やっとにいにが帰って来た!」
あ、言っとくけど別に“にいに”って俺が呼ばせてるわけじゃないからね。高校行くまでは普通に、にいちゃんって呼ばれてたからね。
「頭なでなでして〜」
「いや、にいちゃんは疲れてるので寝ます」
「えー!ちょっとでいいから!お願い!」
はぁ。しょうがない。よしよしっと。
「はふー」
頑張れ俺!目の前にいるのは可愛い美少女だと思い込むんだ!可愛い美少女、可愛い美少女。
「ありがとう。元気でた!」
俺は精一杯の笑顔でニコッと微笑む。よし!ミッションコンプリート!さて、寝ますかね。布団に入っておやすみの体勢に入る俺。そして、当然のように入ってくる妹。
「おい」
「えへへ〜」
えへへじゃねーよ!さっきのはふーもそうだけど、そういうのは可愛い子がやるから許されるんだよ!それに同じ布団の中に入って一緒に寝るのは2人とも年頃の兄弟である以上色々まずい。愛さえあれば関係ないよね♡とかいうけど世間一般から見るとそれはまずいし、第1可愛くないやつにあげる愛はない!だが、俺も疲れている。もう無理やり追い出す気力もない。諦めるか…。
「あこ! にいちゃん疲れてるんだからやめてあげなさい」
すごすごと妹は引き下がる。ナイスアシスト!母さん、あなたは天使か…。俺は安堵の溜息と共に深い眠りに落ちていった。
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よく寝た!なんだかスッキリとした気分だ!うん?なんだか隣でゴソゴソ動いているが気のせいか。気のせいに違いない。
「あ、起きた?」
気のせいであってほしかった…。
「にいにの寝顔可愛かった!」
やめてください。は!スッキリしたのはもしかして…。いや、やめよう。母さんもいるしそんな間違えが起きるはずもない。っていうか起きたら俺は腹切って死ぬ。初めては美少女とって決めてるし。それに妹は確か、そういうのには疎かったはず。うん。大丈夫。俺の貞操は守られた。母さんに精一杯の恨めしい目を向けて、俺は昼食を食べる。とりあえず今日は予定はない。せっかく家に帰ったことだし、思う存分ニコ動とアニメを楽しもう!勉強は気がむいたらやろう。
それから12時間ほど俺は平和だった。久しぶりの家族との会話。家族との食卓。久しぶりに食べる母さんの料理は本当に美味かった。青椒肉絲があまりにも美味くて気づいたらご飯を三杯もおかわりしていて、自分でも驚いた。ただ、それ以上に驚いたのは妹が自分の茶碗に日本昔話盛りをしていたことだ。その状態で二杯もおかわりするのだから明らかに食べ過ぎだ。どうやって消化しているんだろう。そんなこんなで俺は楽しい食事を終えた。
寮の小さいうえに大人数で入る風呂と違い家の風呂は足をしっかりと伸ばせるから楽だ。ここにはシャワーで冷水をかけてくる先輩もいないし、熱湯をかけてくる先輩もいない。体育座りして風呂に入る必要もないし、何より着替えの服やバスタオルを風呂に入れられないよう死守する必要も無い。熱いお湯に我慢大会とかいって頑張って入り続ける必要もない。なんて、素晴らしい環境!なんて、落ち着いた風呂なんだ!風呂で体の疲れをとるっていうのは本当に久しぶりだ。寮の風呂は疲れるための場所だったからな…。久しぶりの良い風呂を堪能した俺は着替えと歯磨き、ドライヤーを済ませて自室のベッドにむかった。
ベッドに入り、アラームを全てきったのを確認した上で俺は眠りについた。明日もまた、朝から一波乱あるのだがそれはまた別の話…。
辛いけどこれ、現実なのよね…。
現代のゾンビからきた方ありがとうございます。投稿頻度は遅いですが、楽しんでください!
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