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勉強会

始業式早々の実力テストの結果の返却と言うという悪夢から覚めた翌日。

またいつものような特に何もない日常が再開された。

何もないことは俺にとっては幸せなことだ。

とは言え、今日から普通授業が始まったのだが。

今日も学校から帰っていつものように居間で涼んでいると、「ただいまー」が聞こえた。

「お帰りー」と、これまた反射的にいつもの返事をした。

今日は何の用事でメイはうちに寄ったのかな。

メイは居間に入るなり、いつものムーアとの甘い時間を堪能した。

ここまではいつもの流れであるが、今日はこの後のセリフに耳を疑った。

「じゃあ、数学始めますかっ。」

「えっ?」

「えじゃないよ。私の部活がないときは毎日数学一緒にやるって昨日約束したじゃない。」

はぁ?

そういえば、昨日そんなことをメイが言っていたっけ。

昨日は?

水曜日だった。

「昨日は部活があったってこと?」

「ないよ。始業式からやるような気合の入った部じゃないし。だから、昨日、おじさんちでご飯食べたんじゃない。」

そう言われればそうだ。

俺、何言ってるんだろう。

で、今日は木曜日。

マジですか?

あれ、本気だったの?

メイが座卓の俺の側に来る。

うちの座卓は異常に長い。

だいぶ俺から離れたところに座ったメイが、カバンから教材などを出しながら

「今日から授業が始まったでしょ。今日はあまり進まなかったから宿題も少なくてよかったね。まずは宿題のプリントからやろう。」

まずは、がひっかかる。

宿題だけじゃ終わらないような予感。

俺は灼熱の二階へ上がり、数学の教科書、ノート、宿題のプリントを持って降りた。

「私も宿題からやるから、わからなかったら聞いてね。」

と、メイが早々にプリントに取り掛かった。

俺も、どうせやるなら早いうちに済ませるのもいいか、夜に遊べるしと、覚悟を決めて取り掛かった。

一問目。

フムフムと解き進んだが、案の定いき詰った。

俺はいつもそうだ。

全く手が出ない問題はない。

だが、ほとんど途中でお手上げになってしまうのだ。

答えを見れば、な~んだと思うのだが、自力ではなかなか最後までたどり着けない。

「わからん!」

と、つい口走ってしまった。

「どこが?」

と、メイが、膝で歩いて俺の傍に寄ってきた。

俺のプリントをのぞき込む。

顔が近い。

いいい匂いがする。

「うん、ここまではいい感じ。」

と、シャーペンの先で指して、その先を消し始めた。

「でもこれじゃあ答えは出ないよ。」

と言いながら。

「ここから先はグラフを使うとわかりやすいよ。なんでかわからないけど、グラフを使うのをいやがる人が多いんだよね。」

と、グラフを描き始め

「で、ここで交わるでしょ。この接点が・・・。」

と、理路整然と説明しながら、あっけなく解き終えた。

俺は、「ふーん」と、素直に感心するしかなかった。

さらにメイは、

「数学は、最後まで自力で解ける問題を何問もっているかが勝負らしいよ。だから、もう一回、最初から解いてみて。」と言った。

確かに今までは、わからなくなると答えを見て写して理解した気になって終わりにしていた。

なるほど、もう一度自力で解くのか。

それが違いなのか。

俺は目から鱗が落ちる思いがした。

そして、レポート用紙にもう一度同じ問題を最初から解いてみた。

またもや同じところで詰まってしまったが、メイに教えてもらったことを思い出しながら、粘って最後まで解き切ることができた。

宿題プリントの二問目は類題であったが、なかなか手強く、かなりてこずったが、何とか最後まで答えが出せた。

合っているは自信はない。

メイに見てもらった。

何と

「合ってるよ。やるじゃない。こっちの方が、だいぶひねってるけど解けたじゃない。」

と、お褒めの言葉をいただいた。

無事宿題を終え時計を見ると、時間は意外にまだ早い。

メイも時計に目をやり

「少し教科書の復習ができそうね。」

何か嬉しそうだ。

本当に少し?もうお腹いっぱいなんですけど。

言葉を信じて、言われるがままに教科書を開く。

教科書の例題は解き方や答えも載っている。

その続きに類題が2問。

今日は、先生からのありがたい長いお話があったので、ここまでで授業が終わっている。

とりあえず、例題を答えを隠して解いてみる。

本来なら、宿題をする前にこちらを解いて解説を読み、内容を理解するのが先なのだが、そんな余裕のあるヤツはそういないだろう。

普通のペースで授業が進むようになると、宿題だけで手一杯になるから。

例題は、基本的にオーソドックスで素直な問題になっている。

やってみる。

普通に解けた。

解説を読む。

フムフム。

いいこと書いてるじゃないか。

これからは、これだけでも読むことにしよう。

続いて類題をやる。

教科書に答えは載っていないが、ノートをとっている。

1問目を解いてみる。

普通に解けた。

ノートと答え合わせをする。

合っている。

2問目。

すこしひねりが入っているようだ。

でも、解けなくはない。

合ってはいるが、なんか納得がいかないところがある。

メイに聞いて見る。

「これって、いるの?」

「へー、そういうのが気になるようになったんだ。なかなか鋭いな。実はね、暗黙の了解があってね、この場合は・・・。」

と、またもや大変わかりやすく解説してくれた。

納得。

時計を見ると、いい時間になっている。

帰る前に、メイはムーアに第二ラウンドを仕掛け、ムーアも待ってましたとばかりに大甘えしていた。

帰り際にメイは、「じゃあ、明日もね。」と言った。

明日もねっていうことは、明日も今日と同じように勉強会か。

いつもの俺なら面倒だなと思うのだが、きちんと理解して最後まで自力で問題を解くという今までできなかったことができて、かなり気持ちが昂っていた。

気が付くと

「うん。」

と元気よく返事をしていた。

今日は数学の根源に関わるいいことを教えてもらった。

最後まで解ける問題を何問もっているかが実力か。

これで力を付けて、次の実力テストでは、絶対に100番以内に入るぞ!

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