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大晦日と元日

今日は大晦日。

なので勉強会はない。

そういえば、ムーアのお迎え日でもあったな。

あのときは、小さくてかわいかった。

生まれて1月のわりには十分に大きかったけど。

ピョンピョン跳ねて、家中を探検してたっけ。

それが今や、と、長ーく伸びたムーアを見る。

まぁ、いいか。

ムーアのおかげで、とってもいい一年を過ごさせてもらったから。

俺はムーアの背中に顔を押し付けて

「ムーアに甘~。」

と、誰かのまね。

今、何してるかな?


大晦日といえども、俺には何一つ特別なことはない。

両親は今日は早くに店を閉めると言っていた。

大晦日くらい、ゆっくりと過ごしてもらいたい。

やることがないので、宿題をする。

これだけとっても、この一年で成長したな、俺、と思う。

以前の俺なら、少しでも時間があったら、何をして遊ぼうかとワクワクしていたのに。

メイの得意技の自画自賛をする。

こんなことならメイの強硬案に乗って、大晦日くらいは勉強会をやったらよかったなと思う。


宿題の休憩がてら、ムーアのケージの大掃除をしてやる。

ケージをそのまま風呂場に運ぶ。

枠の金網を分解してブラシでこすって洗う。

下の枠もこする。

トイレもこする。

トイレは拭いて居間に置くが、ケージのパーツは日当たりのいいところに干しておいた。

消毒にもなるんじゃないかな。

これでムーアも新年を迎える準備ができた。

では、宿題の続きでもするか。


そうこうしているうちに、もう夕方。

早いな、これじゃあ、すぐに一日が終わってしまう。

両親が店を閉めて上がって来たようだ。

下からテレビの音が聞こえる。

俺は宿題を続ける。

晩御飯にするよ、と声が掛かったので降りると、いつもにない和食中心のご馳走が並んでいる。

実は俺は和食も好きなんだな。

恒例のレコード大賞と紅白を見ながらご飯を食べる。

うちは小市民なので紅白歌合戦を見ないと一年が終わった気がしない。

ゆく年くる年の除夜の鐘がなり始めたので、寝ることにする。

本当に、今年はいい年だった。


翌日は元日。

目覚めた俺は、初夢を思い出そうとしたが、何一つ思い出せない。

去年の初夢は、真っ黒い尿が出るという無茶苦茶な初夢だったが、今年はダメだ、何も思い出せない。

いつもの学校に行くときの時間に目が覚めたので、割と早い時間だ。

毎年のことだが、今日はメイ一家が昼前にうちにお年始にきて宴会をすることになっている。

それが始まったら長いので、今のうちに宿題をしておこうか。

その前に蒼にLINEを。

新年のあいさつと、明日の初詣のこと。

明日会えるから、短めに切り上げる。

下に降りて、恥ずかしいが、両親に新年のあいさつ。

お年玉をもらう。

母ちゃんが餅を焼いて、雑煮を作ってくれた。

では、宿題に取り掛かるか。

一年の計は元旦にあり。

俺、すごいぞ。

またもや自画自賛。

俺がメイ化してどうする。


なんだか下の玄関先が騒がしい。

もうこんな時間か。

メイ一家が来たな。

「真ちゃーん」と下から母が俺を呼ぶ声が。

居間に入ると、メイ一家とうち一家が正座して向き合っている。

単身赴任の義兄さんも、毎年仕事終わりの日に新幹線に飛び乗って帰ってくるらしく、今年もフルメンバーで顔を合わせられた。

俺も末席に付き、互いに畳に手をついて、新年の挨拶を。

そして、食事というか宴会に移る。

今日のメイは水色で白い襟のワンピース。

これも十分反則・・・、ダメだぞ、この前のようなことがあったら、またややこしいことになる。

長い座卓の左端に俺が座ると、その正面にメイが座った。

メイ一家は義兄が真ん中

俺一家は母ちゃんが真ん中。

義兄が俺に

「真ちゃん、しばらく合わないうちに大人っぽくなったな。男子、三日会わざればって言うけど、一年ぶりだもんな、高校生になったんだもんな、そうなるよな。」

と一人で感心している。

この人は全然悪い人ではないのだが、どうも苦手だ。

何というか、波長が合わない。

「義兄さんも、お元気そうで何よりです。」

と俺がそつのない返事をすると

「そんな、他人行儀なことを言うなよ。真ちゃんとは赤ん坊のころからの付き合いだろ。」

と苦笑いする。

言われてみれば、この中で俺からすると義兄さんだけが他人だ。

残りは両親に姉に姪、みんな俺と血が繋がっている。

つまりあの血が流れているってことだ。

ところで父さんはどこに行ったんだ?

父さんがいないと始まらないじゃないかと思っていたら、厨房側の戸が開いて、皿いっぱいにエビフライを盛った父が戻って来た。

「ほら。これだけあれば足りるだろ。」

と、メイと俺の間に皿を置く。

「わー、おじいちゃん、ありがとう。」

メイの笑顔に父さんがドヤ顔。

おせちだけじゃーなと思っていたので、俺も嬉しい。

さすがに正月からカツカレーはないか。

そして、父さんの挨拶で宴会が始まった。


俺達はエビフライをパクパク食べながら、おせちもつまむ。

大人たちは酒を勧め合い、いい調子になってくる。

もともと酒が強くない義兄は、一人で飲んだように顔がもう真っ赤だ。

少しろれつが怪しくなっている。

ふと俺と目が合う。

「そうそう、真ちゃん。美樹から聞いたよ。彼女ができたんだって。」

「はあー?」

と思わず叫んでしまった。

何の前振りもなく、いきなりかよ。

さすが、メイの父さんだ。

メイ以上の剛速球を投げ込んでくる。

150キロは出てる。

メイを見る。

片眼をつむって、顔の前で手刀。

「本当かい?」

母が穏やかに尋ねるのが気持ち悪い。

答えない、というより答えたくない。

黙っていると

「何で私には言ってくれないんだよ。いつから?どんな子?」

酔っているせいか、語気が荒くなってきた。

メイが助けに入ってくれる。

「おばあちゃん、私、言ったよ。この前のおこパ、お好み焼きをみんなで焼いたときに。」

「何を?」

「彩音ちゃんがタカ君の彼女だって言ったでしょ。」

「それは聞いた。」

「そのとき、蒼ちゃんがおじさんの彼女って言ったじゃない。」

しばらく母ちゃんが黙る。

「本当だったの、それ?」

「本当だよ、おばあちゃん、ないないとか言って帰って行っちゃったよね。」

メイの援護に俺もここぞとばかりに畳み掛ける。

「そうだよ。俺もそろそろ母ちゃんに言わなきゃと思ってたところをメイが言ってくれたのに、全然相手にもしなかっただろ。あんなの見たら、もう言う気にもならないよ。」

いかにもメイと自分が被害者のように嘘も交えてまくしたてる。

俺もなかなかの役者だ。

またしばらく母ちゃんは黙った。

「そうだったの、蒼ちゃんと・・・。」

反省したように言う母ちゃんに胸が少し痛む。

ほんの少しだけ。

ここで、今までの事の成り行きを黙ってスルーしてきた姉が、そろそろ私の出番かなと言わんばかりに、計算高く思いやりにあふれた言葉を母に浴びせる。

「もういいじゃない。おめでたいことなんだから。お母さんも過保護はだめよ。子どもって、親がわからないうちにいつの間にか大人になっているんだから。美樹もそう。蒼ちゃんってとってもいい子なんでしょ、真ちゃんにもったいないくらいに。私も美樹から聞いてる。母さん、静かに二人を見守ってあげようよ。私はそのつもりよ。」

情にほだされやすい母ちゃんの責めどころをみごとなまでに突いたダメ押し。

「そ、そうだね。」

母ちゃんが落ちた。

でも気の強い母ちゃんは最後に一言。

俺に向けて

「あんないい子に愛想を尽かされないようにがんばんなよ。」

してやったりとばかりに、姉が俺を見る。

さすが、メイの母ちゃんだわ。

俺達との格の違いを見せつけてくれた。

かくして、メイの父がまいた種はメイの母によって刈り取られて終わった。

大人たちの酔いが回ってきて危ない話も出始めた。

母ちゃんと姉ちゃんがフルスロットルになってきた。

彼女らのためにも俺達はここにいない方がいいと、メイを連れて俺の部屋に避難した。

俺達は気遣いができる高校生だ。


「やっぱ、あのときの姉ちゃん、すごかったわ。」

俺が感嘆の声を上げながらベッドの端に座ると

「うん、あれできれいに幕引きになったもんね。それにしても、お父さんがごめん。」

謝りながらメイが隣に座る。

「いいけど、お父さんとそんな話するの?」

「したかなー。お母さんから聞いたんじゃないのかなー。うちは、お母さんに言ったら、すぐにお父さんに伝わるから。」

「ふーん。うちも。」

今となってはどうでもいことだ。

「蒼ちゃんとお正月はどこかに行くの?」

メイらしく、急に話題を変える。

「うん、明日初詣に行く。」

「そう。・・・他には?」

「特にない。」

「何で?せっかく三が日を休みにしたのに。」

「他に行くところないし。」

「何で?映画とか・・・いろいろあるでしょ。」

映画以外に何も出てこないが、俺よりまし。

「単身赴任してるお父さんが帰ってくるんだ。ゆっくりと一緒にいられるの正月だけだろうし。」

「蒼ちゃんが言ったの?」

「いや。」

「そう。おじさんがいいなら、私がどうこう言うことじゃないし。」

どう返事をしたらいいやら。

「ねぇ、初詣行った?私まだ。昨日遅くまで起きてて、ここに来る寸前に起こされたって感じなの。お父さんとお母さんはもう二人で行ったって。」

一年の計は元日にあるのに。

元旦にありともいうのに、お前の元旦は昼前か?日。

なので勉強会はない。

そういえば、ムーアのお迎え日でもあったな。

あのときは、小さくてかわいかった。

生まれて1月のわりには十分に大きかったけど。

ピョンピョン跳ねて、家中を探検してたっけ。

それが今や、と、長ーく伸びたムーアを見る。

まぁ、いいか。

ムーアのおかげで、とってもいい一年を過ごさせてもらったから。

俺はムーアの背中に顔を押し付けて

「ムーアに甘~。」

と、誰かのまね。

いま、何してるかな?


大晦日といえども、俺には何一つ特別なことはない。

両親は今日は早くに店を閉めると言っていた。

大晦日くらい、ゆっくりと過ごしてもらいたい。

やることがないので、宿題をする。

これだけとっても、この一年で成長したな、俺、と思う。

以前の俺なら、少しでも時間があったら、何をして遊ぼうかとワクワクしていたのに。

メイの得意技の自画自賛をする。

こんなことならメイの強硬案に乗って、大晦日くらいは勉強会をやったらよかったなと思う。


宿題の休憩がてら、ムーアのケージの大掃除をしてやる。

ケージをそのまま風呂場に運ぶ。

枠の金網を分解してブラシでこすって洗う。

下の枠もこする。

トイレもこする。

トイレは拭いて居間に置くが、ケージのパーツは日当たりのいいところに干しておいた。

消毒にもなるんじゃないかな。

これでムーアも新年を迎える準備ができた。

では、宿題の続きでもするか。


そうこうしているうちに、もう夕方。

早いな、これじゃあ、すぐに一日が終わってしまう。

両親が店を閉めて上がって来たようだ。

下からテレビの音が聞こえる。

俺は宿題を続ける。

晩御飯にするよ、と声が掛かったので降りると、いつもにない和食中心のご馳走が並んでいる。

実は俺は和食も好きなんだな。

恒例のレコード大賞と紅白を見ながらご飯を食べる。

うちは小市民なので紅白歌合戦を見ないと一年が終わった気がしない。

ゆく年くる年の除夜の鐘がなり始めたので、寝ることにする。

本当に、今年はいい年だった。


翌日は元日。

目覚めた俺は、初夢を思い出そうとしたが、何一つ思い出せない。

去年の初夢は、真っ黒い尿が出るという無茶苦茶な初夢だったが、今年はダメだ、何も思い出せない。

いつもの学校に行くときの時間に目が覚めたので、割と早い時間だ。

毎年のことだが、今日はメイ一家が昼前にうちにお年始にきて宴会をすることになっている。

それが始まったら長いので、今のうちに宿題をしておこうか。

その前に蒼にLINEを。

新年のあいさつと、明日の初詣のこと。

明日会えるから、短めに切り上げる。

下に降りて、恥ずかしいが、両親に新年のあいさつ。

お年玉をもらう。

母ちゃんが餅を焼いて、雑煮を作ってくれた。

では、宿題に取り掛かるか。

一年の計は元日にあり。

俺、すごいぞ。

またもや自画自賛。

俺がメイ化してどうする。


なんだか下の玄関先が騒がしい。

もうこんな時間か。

メイ一家が来たな。

「真ちゃーん」と下から母が俺を呼ぶ声が。

居間に入ると、メイ一家とうち一家が正座して向き合っている。

単身赴任の義兄さんも、毎年仕事終わりの日に新幹線に飛び乗って帰ってくるらしく、今年もフルメンバーで顔を合わせられた。

俺も末席に付き、互いに畳に手をついて、新年の挨拶を。

そして、食事というか宴会に移る。

今日のメイは水色で白い襟のワンピース。

これも十分反則・・・、ダメだぞ、この前のようなことがあったら、またややこしいことになる。

長い座卓の左端に俺が座ると、その正面にメイが座った。

メイ一家は義兄が真ん中

俺一家は母ちゃんが真ん中。

義兄が俺に

「真ちゃん、しばらく合わないうちに大人っぽくなったな。男子、三日会わざればって言うけど、一年ぶりだもんな、高校生になったんだもんな、そうなるよな。」

と一人で感心している。

この人は全然悪い人ではないのだが、どうも苦手だ。

何というか、波長が合わない。

「義兄さんも、お元気そうで何よりです。」

と俺がそつのない返事をすると

「そんな、他人行儀なことを言うなよ。真ちゃんとは赤ん坊のころからの付き合いだろ。」

と苦笑いする。

言われてみれば、この中で俺からすると義兄さんだけが他人だ。

残りは両親に姉に姪、みんな俺と血が繋がっている。

つまりあの血が流れているってことだ。

ところで父さんはどこに行ったんだ、父さんがいないと始まらないじゃないかと思っていたら、厨房側の戸が開いて、皿いっぱいにエビフライを盛った父が戻って来た。

「ほら。これだけあれば足りるだろ。」

と、メイと俺の間に皿を置く。

「わー、おじいちゃん、ありがとう。」

メイの笑顔に父さんがドヤ顔。

おせちだけじゃーなと思っていたので、俺も嬉しい。

さすがに正月からカツカレーはないか。

そして、父さんの挨拶で宴会が始まった。

俺達はエビフライをパクパク食べながら、おせちもつまむ。

大人たちは酒を勧め合い、いい調子になってくる。

もともと酒が強くない義兄は、一人で飲んだようにもう真っ赤だ。

少しろれつが怪しくなっている。

ふと俺と目が合う。

「そうそう、真ちゃん。美樹から聞いたよ。彼女ができたんだって。」

「はあー?」

と思わず叫んでしまった。

何の前振りもなく、いきなりかよ。

さすが、メイの父さんだ。

メイ以上の剛速球を投げ込んでくる。

150キロは出てる。

メイを見る。

片眼をつむって、顔の前で手刀。

「本当かい?」

母が穏やかに尋ねるのが気持ち悪い。

答えない、というより答えたくない。

黙っていると

「何で私には言ってくれないんだよ。いつから?どんな子?」

酔っているせいか、語気が荒くなってきた。

メイが助けに入ってくれる。

「おばあちゃん、私、言ったよ。この前のおこパ、お好み焼きをみんなで焼いたときに。」

「何を?」

「彩音ちゃんがタカ君の彼女だって言ったでしょ。」

「それは聞いた。」

「そのとき、蒼ちゃんがおじさんの彼女って言ったじゃない。」

しばらく母ちゃんが黙る。

「本当だったの、それ?」

「本当だよ、おばあちゃん、ないないとか言って帰って行っちゃったよね。」

メイの援護に俺もここぞとばかりに畳み掛ける。

「そうだよ。俺もそろそろ母ちゃんに言わなきゃと思ってたところをメイが言ってくれたのに、全然相手にもしなかっただろ。あんなの見たら、もう言う気にもならないよ。」

いかにもメイと自分が被害者のように嘘も交えてまくしたてる。

俺もなかなかの役者だ。

またしばらく母ちゃんは黙った。

「そうだったの、蒼ちゃんと・・・。」

反省したように言う母ちゃんに胸が少し痛む。

ほんの少しだけ。

ここで、今までの事の成り行きを黙って見守ってきた姉が、そろそろ私の出番かなと言わんばかりに、計算高く思いやりにあふれた言葉を母に浴びせる。

「もういいじゃない。おめでたいことなんだから。お母さんも過保護はだめよ。子どもって、親がわからないうちにいつの間にか大人になっているんだから。美樹もそう。蒼ちゃんってとってもいい子なんでしょ、真ちゃんにもったいないくらいに。私も美樹から聞いてる。お母さん、静かに二人を見守ってあげようよ。私はそのつもりよ。」

情にほだされやすい母ちゃんの責めどころをみごとなまでに突いたダメ押し。

「そ、そうだね。」

母ちゃんが落ちた。

でも気の強い母ちゃんは最後に一言。

俺に向けて

「あんないい子に愛想を尽かされないようにがんばんなよ。」

してやったりとばかりに、姉が俺を見る。

さすが、メイの母ちゃんだわ。

俺達との格の違いを見せつけてくれた。

かくして、メイの父がまいた種はメイの母によって刈り取られて終わった。

大人たちの酔いが回ってきて危ない話も出始めた。

母ちゃんと姉ちゃんがフルスロットルになってきた。

彼女らのためにも俺達はここにいない方がいいと、メイを連れて俺の部屋に避難した。

俺達は気遣いができる高校生だ。

「やっぱ、さっきの姉ちゃんすごかったわ。」

俺が感嘆の声を上げながらベッドの端に座ると

「うん、あれできれいに幕引きになったもんね。それにしても、お父さんがごめん。」

謝りながらメイが隣に座る。

「いいけど、お父さんとそんな話するの?」

「したかなー。お母さんから聞いたんじゃないのかなー。うちは、お母さんに言ったら、すぐにお父さんに伝わるから。」

「ふーん。うちも。」

今となってはどうでもいことだ。

「蒼ちゃんと、お正月はどこかに行くの?」

メイらしく、急に話題を変える。

「うん、明日初詣に行く。」

「そう。・・・他には?」

「特にない。」

「何で?せっかく三が日を休みにしたのに。」

「他に行くところないし。」

「何で?映画とか・・・いろいろあるでしょ。」

映画以外に何も出てこないが、俺よりまし。

「お父さんが帰ってくる。単身赴任の。ゆっくりと一緒にいられるの正月だけだろうし。」

「蒼ちゃんが言ったの?」

「いや。」

「そう。おじさんがいいなら、私がどうこう言うことじゃないし。」

どう返事をしたらいいやら。

「ねぇ、初詣行った?私まだ。昨日遅くまで起きてて、ここに来る寸前に起こされたって感じなの。お父さんとお母さんはもう二人で行ったって。」

一年の計は元旦にありなのに、お前の元旦は昼前か?

これでこの一年のメイが決まったな。

「いいや。俺、今日はまだ家から出てない。」

「えっ、何してたの?」

「宿題とか。」

「元日から宿題?おじさんが!」

メイが信じられないと言う顔で俺を見る。

失礼極まりないヤツ。

「じゃ、これから行こうよ、初詣。」

「えー、でも初詣って今年最初のお参りだろ。」

メイがそれどういう意味?という顔をした後

「そうか。明日の蒼ちゃんとのを初詣にしたいよね。だったら、私は初詣で、おじさんは今年最初とか関係のないただのお参りって事でいいんじゃない。」

何とも強引で都合のいい理屈。

んーそうだな、それでいこう。

いつからだろう、メイと二人で初詣に行くようになったのは。

中学くらいからかな。

去年も行ったな。

そうそう、今日みたいに宴会の途中で抜け出して。

「わかった。じゃ、行こうか、初詣。」

「だから、おじさんのは」

と言いかけて

「おじさんがいいなら、今年も一緒に初詣。蒼ちゃんには内緒。」

メイが悪戯っぽく微笑む。

「頼むぞ。」

と一応は言うけど、バレても何ら問題はない。

蒼はそんな器が小さい子ではないから。

体は小さくてかわいいが。


神様、今年もこのかわいい姪っ子と大切な彼女といい年が過ごせますように。

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