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『この滅び行く世界に祝福を』  作者: 早稲農家
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外伝・大和(贖罪)編

 突然現れた青年に動揺を一番隠せなかったのはヘワード卿だった。


 「何者ですか?」

 「あんたがここにとんでもないものを隠しているって知ってるものさ。」

 「お前は…『魔女の遺児』だと?」

 「その名前は好きじゃないな…俺の家をエストラル家のものにしたのはあんたの判断だろ?この剣、『昇月』と『落陽』が『古代遺物』だと知っているのはあんただけだから、適当な宝剣で交換してくれると思ったところか?」

 「…きさま、まさかそれが何か知っているのか?」

 「もちろん。こいつが『ルーンブレイカー』、『古代遺物』を破壊する道具だと知ってる。そして、マリアの話からてめえがここで何をしたいかっていう最悪の展開が容易に想像できたから、自宅からこいつを持ってさっさと帰る予定を急きょ変更してきた次第だ。」

 「ですが、私はあなたの剣ごときで倒せると思いますか?」

 「…あのさ。俺は『魔女』であった母さんから教会にいらっしゃる教皇のみが持っている『魔女殺し』と呼ばれる道具とその破壊の仕方を聞いているんだぞ?そんなちんけな『古代遺物』が集まったところで止まらないよ。」

 

 その瞬間、焦った表情で俺ではなくアルドラントに突撃していった。

 その致命的な隙を俺とアルドラントは見逃すはずがなかった。

 俺はその瞬間に拳銃を構え、無防備な背中を狙った。アルドラントは『魔女の血』を継ぐために詠唱がいらなくなった魔法で地面をぬかるませ、そこにヘワードを誘導し、剣に手をかけた。

 そんなことに気づかず、踏み出した一歩はぬかるんだ地面に取り込まれ、アルドラントが繰り出した抜刀しつつ放たれる切り上げを正面に、ヴェルトが放った数発の弾丸を背中に受け、そのままの勢いで地面に伏した。


 「…やったのか?」

 「…こいつの目。くりぬけるか?」

 「な…死体にそんなことは…」

 「まあ、そうだよな。」


 アルドラントはそう言って亡くなったヘワード卿の左目に触れ、それを素早く取り出した。取り出された瞬間、その眼は少し震え、淡い青の光を放ち始めた。


 「やっぱり、『天啓の翡翠眼』だったな。」

 「それは…義眼なのか?」

 「…まあいいか。こいつ、いや、この教会の地下にある『古代遺物』ってのは『魔女』が作り、人間に与えたものなんだ。俺は…『古代遺物』いや『魔女の至宝』を破壊しようとした『魔女』を教会が『異端者』として処刑し始めた頃にそう教わった。その中でも特に破壊しなければならないって言われていたのが、当時、教会が保管していた『昏き聖杯』と今も破壊されずに残っている『堕天せし女神像』、俺の家に保管されていた2つ、すべての『古代遺物』のことが記された『魔女の書』、今まで発動されたすべての魔法を記した『魔術全容』、そして、いまはもう…お父さんが最後、自分が死ぬ前に破壊した『最後の審判』だったんだ。『最後の審判』はみんなも知っているだろ?」


 『最後の審判』はありていに言えばただの破壊兵器だった。しかし、同時に地水火風の最上位魔法を起動させ、町一つを一瞬のうちに破壊するのだ。そして、それを起動したのは先代の教皇であり、『魔女』を殺すとして起動したそれは一瞬のうちに当時、最大規模を誇った交易都市を破壊した。起動したアホは最初にその兵器に殺されてしまったために止める方法はそれを破壊するしかなかったのだ。その破壊のためにアテナ・W・ヘキセンは自らの命を引き替えに破壊をもたらす魔法を使い、カエサル・K・ラインハルトはその詠唱の間、その身をもって彼女を守りきった。そして…彼がその兵器を王国に来るのを、体を呈して防いだのにもかかわらず、「魔女に加担し、王国にとって重要な都市を破壊した標本人」として処刑されたのだった。


 それを思い出し、沈黙が流れた直後、マリアが口を開いた。


 「…あなたの目的はそれなの?」

 「とりあえず、これから地下にある『堕天せし女神』を破壊する。」

 「…そのあとは?」

 「今、拠点にしている村に戻る。」

 「私たちと一緒に『古代遺物』を探すのじゃダメなの?」

 「…それはしたくない。この国に迷惑をかけるのは不本意だ。」


 そう言って彼は唯一焼けずに残った教壇を蹴っ飛ばし、その下にあった入口を引き開けた。そこから梯子で降りて言った彼に続いて二人も降りて行った。その梯子の先には確かに女神像があった。


 「これが件の女神像なのか?」

 「そうだ。起動してやろうか?」

 「やめてくれ。俺は言いなりになりたくはないぞ。」

 「そうか。なら、さくっと破壊してしまうな。」


 彼は持っていた双剣でそれをあっさり十字に切り落とした。


 「普通なら弾かれて切れないんだよな?」

 「そうだ。そして、これこそが『ヘクセンの秘宝』ってわけだ。」

 「…俺たちがこの国を再興しようとしているのは知っているよな?」

 「それがどうした?関係ないな。むしろ、あんたらのリーダーは…義兄の仇だ。」

 「それは…知らなかったよ。」

 「知っているほうが怖いな。じゃあな。」


 彼は剣を納め、梯子のほうではなく奥に広がる宝物庫のほうに向かった。


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