外伝・大和(贖罪)編
大通りに出た俺は彼をすぐ見つけることができた。
彼は騒ぎに乗じて強盗を働いたエストラル隊の騎士たちを処刑している真っ最中だった。
抵抗はしている。あいつは魔法使いだ。距離を詰めればいいのだが、詰める前に彼の周りに定期的に発生する地水火風の勾玉が彼らを正確無比な魔法で刈り取っていくのだ。しかも、近づくことができた運がいい騎士は彼が持っている剣、もしくは彼の周りを漂う盾に攻撃を防がれた後、その勾玉が発した魔法によってその命を散らしていた。
全滅したあたりで彼は勾玉以外のものを消し、こちらを見た。
「…よかったのか?こいつらと一緒なら、勝機がもっとあっただろ。」
「そうだろうな。だけど、俺はあいにく、お前を捕えに来たわけじゃない。」
その瞬間、炎の螺旋が4本。4方向からカーブを描きながら襲ってきた。俺は左手を左から下に、右手を右から上に移動しつつ、それぞれ2個の水球を放ち、それを無力化した。
「許してもらおうなんてこれっぽっちも考えていない。殺したいなら、時間はまたあとでやる。今は野々村が危ないんだ。」
直樹は詠唱をやめ、勾玉の活動を停止させた。黙ってこちらを見ている。
「…この火災はお前らの仕業か?」
「…どうしても貴族お抱えの騎士団に邪魔されるわけにはいかなかったからな。」
「これ以上罪を増やすというなら、お前は生かしておけない。」
「…ドラゴンがいるなら、心配はしてないが、南の正門を破壊してくれたか?そこさえ壊れてくれたら、どの方角にも逃げられるからな。北の方角は生息している魔物が強いし、あちらは貴族ばかりが住んでいるだろうから、誰も逃げないだろうからさ。」
「…そうか、この計画はお前が立てたんだな…お前、この国をどうするつもりだ?」
「立て直す。いろんな人の力を借りてな。だが、お前らの力は借りたくないんだ。」
「…独裁者になるつもりか?」
「ああ。でも、国民に贖罪をするためにだけどな。」
「信じないぞ。」
「そうしてほしい。さっきの話だ。ここから西に向かうと監視塔がある。そこから地下道に向えるんだ。きっと、瀬戸はそこから野々村を助け出した杉野を挟み撃ちにするつもりだ。俺を信じて向ってくれるか?」
「…いいだろう。だけど、忘れんなよ。必ずお前は俺が裁く。」
「ああ。そのときは…きっとすぐ来るさ。」
直樹はすぐ西の方角に駆け出して行った。
これで瀬戸は止められる。あとはあいつの私兵を止めるだけだった。
俺は通信機の画面を確認した。青のランプが光っているが、赤のランプは光ってなかった。まだ、あいつの私兵は来ていないのだろう。俺は急いでその方向に向かった。




