外伝・大和(贖罪)編
私は教会やその近くにある『宝物庫』に火をかけた。隊員たちにはこの国を見限ることも含めて自由に行動してよいと言った。どうしても調べたい場所が私にはあったからだ。それは『貴族街』でも高額納税者しか住めない場所に建てられたカエサル・K・ラインハルトの自宅だった。あの家の設計図から考えても一部屋が隠されているのだ。この家を回収したエストラル家がこの騒ぎに乗じてあの家を壊すかもしれない。
そう思うと駆ける速度が上がった。あの家に住んでいる次男は狡猾だ。あの家での思い出は私とアルドラントの共通の思い出だ。私もお父様もアルドラントに流れる、この王国が異端者として処刑した魔女『アテナ・W・ヘキセン』の血を受け継いでいたとしても、彼に罪はないと思っていたのだから。しかし、あの家にはその血を継いでいなければ入れない部屋があるかもしれないなんて言われた時は後悔した。彼はもういないのだから。
だからといってあの男に奪われるのは嫌だったのだ。私が到着した時はまだ壊されているような様子は全くなかったため、大いに安堵したのは言うまでもなかった。
「おや…兄様が殺したと思っていたのに。ゴキブリですか?」
「あいにく、あなたのお兄様に殺されるほど弱くはないわ。」
「それは丸腰じゃないからでしょう。全く。あの人は甘いから、返り討ちにされたんでしょうね?」
あなたのお兄様は『勇者』に喧嘩を売ったために殺されたわ。なんて言えなかった。
「…で、あなたは後ろの人たちと何をするつもりなのかしら?」
「…これから死ぬ人に何か教える必要もないのですが、特別に教えてあげましょう。この家を破壊します。『ヘキセンの秘宝』を手にするためにね。」
「そんなものがあると思うの?」
「あったんですよ。ですが、血のつながりがない我々では簡単には入れなかったので。いっそのこと、この混乱に乗じて破壊しようと思ったんです。まあ、ここまで教えてしまったあなたはここで死んでもらいますけどね!」
その言葉を言い終わると同時にナイフを大量に投げてきた。どれがどの毒なのか、どう回避すれば当たらないのか、そんなことを一瞬のうちに考え、間に合わないと思った時だった。目の前に土壁がそり立ち、そのすべてをことごとく防ぎ切ったのだった。
「いったい、何事ですかね?なぜあなたが魔法を使えるんですか?」
「…おいおい。このポンコツ騎士が魔法を使えるわけないだろう。よく考えろ。ギリアス・エストラル。俺が会わなかった数年間はお前の脳味噌をここまで腐らせたのか?」
土壁が崩れるとそこには剣を2本持った、この家で一緒に遊んだ少年の面影を持った青年がいた。ギリアス、エストラル家の二男坊は両手に十手を構え、あからさまに彼を警戒し始めた。
「ああ。確かに魔法使いを相手にする際は距離を取っちゃダメだったな。でも、それは俺の対策にならないから、どうしたらいいかを考えている感じかな?」
「ちっ…!」
考えを読まれていたために勢いよく飛び出していったが、彼に近づく前にバラの茨が太くなったような蔦が彼の目の前を飛び出し、彼にまきついた。
「こいつはいったいなんだ?くそ!」
「もがかないほうがいいぞ。それは『アイビーラッシュ』という魔法だ。そのとげには毒が含まれている。うっかり刺さってしまうと…ああ。手遅れだったな。」
ギリアスはその時にはすでに穴という穴から血をふきだして死んでいた。
彼らの部下に関しては全員、地面から突然突き出された杭によって体を貫かれていた。
「で、お前は何やってんだ?」
そう言った彼の眼には敵意があるようには見えなかった。




