外伝・大和(贖罪)編
「やめてください!何するんですか!」
その言葉が聞こえた瞬間、『遅かったか!』と思った。
俺が突入するとそこには先日手にかけたばかりのエストラル家の当主にそっくりの男が数人の兵士を連れて彼女を押さえつけていた。
「…エストラル家の次期当主だな?」
「あぁ?あー。勇者かよ。こいつは親父を殺した奴の親友でな。居場所を聞くために少し時間をいただくためにご同行願いたくてさ。」
「その方法だと誘拐にしか見えないぞ。」
「…それがどうした?ギルドの連中はいないし、国の連中は俺を捕まえることはしない。捕まっても勘違いだったで終了。俺はそういう生まれなの。お前もだろ?」
「あいにく、俺はそんな趣味がないからな。」
「へえ。獣人の冒険者を片っ端から殺しておいて?」
俺は回答に困ってしまった。確かにそうは言えないだろう。
殺すことが趣味とまではいかないが、弱い者いじめは今までやってきていたし、それはその対象を従わせているような感じでとても楽しかったから。
「…まあいいや。で、ここに何しに来たの?」
「…彼女に用があったんだ。治癒魔法が得意らしいからな。」
「え?お仲間さんのほうが優秀だろ?」
「あいつに教わることはできない。そんなこと言ったら、最後、『もっと私頑張るから!見捨てないで!』って言われるだけだ。あいにくそんな奴は必要ないからな。」
「へー。でも、彼女は渡さないよ。」
「渡す渡さないじゃない。俺は『ヒーロー』としてお前の越権行為を止める。それだけだ。その副産物で彼女は解放されるだけ。俺の目的は…エストラル家の滅亡だ。」
「まじかよ…めんどくさい野郎だな。」
その刹那、目の前からナイフが3本飛んできた。
とっさにそれを腕で受ける。『猛毒』『麻痺』『眩暈』の毒効果がすぐ現れた。
そのうちの2つ、『麻痺』と『眩暈』は耐性があったから特に影響はなかったが、『猛毒』は俺の体を少しずつ蝕んでいるのが感覚的に分かった。
「…この程度か?」
「おいおい。化け物だな。大型の魔物がそれだけで死ぬレベルの薬物なのに。影響はあんまりなさそうじゃないか。」
「なら、いかせてもらうぞ!」
俺は素早く飛び込んだ。奴はすぐ窓から飛び出そうとしたが、俺の接近のほうが早く、窓から出る前に俺の愛剣である片刃のバスターソードで胴体を上下に分けてやった。隊長が瞬く間に殺され、慌てふためいた部下たちはすぐ逃げようとしたが、2階から1階に続く階段の手前で現れた援軍の手にかかった。彼女は自前の槍で迫ってきた奴を穴だらけにしていた。
「…追ってきたのか?」
「ううん。違うわ。私の信頼できる上司が直接連絡であなたの身に迫る危機を教えてくれてね。急いで追ってきたの。正解だったわね。」
「それは…」
俺は急に体の力が抜け、片膝をついた。
どうやら毒が回ったらしい。吐血してしまった。
「大変!マリア!彼を運ぶのを手伝って!」
そんな助けようとした女の言葉が、俺が最後に聞いた言葉だった。




