外伝・大和(贖罪)編
俺はマリアを自宅まで運び、彼女にギルドの受付から聞いた『治癒魔法』をかけていた。あの回収した奴隷の猫人族の(『治癒魔法』でその切断部分を再生した際、初めてこの子がそうだったと知った。彼女は尻尾も切断されていたため、まったくわからなかったのだが、その切除されてしまっていた部分を再生できていた。)少女も同時に治療していた。
「…ここは?」
「起きたか。ここは俺の家だ。気分はどうだ?」
「悪くないです…父上は…」
「悪い。間に合わなかった。」
「ならば、あの男は?」
「お前さんを助ける際にひと悶着あったが、想像通り、殺したよ。今もあの家で肩から上が損失された状態で転がっているだろうな。」
「…私の家に戻らせてください。」
「今は無理だ。今、あの家には瀬戸がいる。謀反人としてあの方をさばこうとして誰一人戻ってこなかったんだ。そして、キミがいない。奴らはキミを躍起になって探している。」
「あなたは…私をかくまえば、それこそ危険じゃないんですか?」
「関係ないさ。あの家はオマーグ家が所有することになった。聞いたことあるか?」
「はい…もともとは南にある小さな村の長だったはずです。ですが…」
「追い出されて死んだはず…調べた内容と大差ないみたいだな。」
「…そこまで知っていてそいつを政治にかかわらせるんですか?」
「政治に俺は口を出さなかったんだ。今更、口出しても無視されるんでね。」
「そんな…」
「しばらく休め。俺は少し出かける。」
「待って。王子に会いに行く前に彼女にもあってほしいの。」
彼女は住所とその女の名前を書いてこちらに手渡してきた。
「こいつは?」
「あの男が探していた『姿を替えられる獣人の娘』よ。彼女、治癒魔法に精通しているから、彼女をここに連れてきてほしいの。彼女を失えば…戦争になるから。」
俺はその意味が分からなかったが、それに了承し、彼女に会うことにした。
俺は警備兵が多くなった大通りを歩きつつ、まずギルドに入った。受付の男が駆け寄ってきた。どうやら、無事手紙があちらに渡ったらしい。
「そうか。俺たちの事件はどう処理されている?」
「…あんたらの誰かの仕業だろうが、全く情報が入ってこない。魔物に殺されたとしか報告を受けていないからな。それがどうした?」
「緊急連絡網があるだろう?それで最近の高ランク冒険者の死亡はたいてい俺たちが殺しているからだと伝えてほしい。それと…この王都から住民を逃がす準備をするためにこの城壁を破壊する。俺一人じゃ、無力化できるのは2つが限界だから、どうにか手を貸してほしくてな。」
「そうですか…で、アルヴェルト様がなくなったのは本当ですか?」
「ああ。殺された。理由は知っているんだろう?」
「…本当なんですね?」
「一応、娘であるマリアは助けた。これから、彼女が紹介してくれた獣人の治癒師にあうつもりだ。あと…いないはずの王子さまにな。」
「彼ですか…彼なら、私が呼んできますよ。」
「知り合いなのか?」
「ええ。騎士団に所属していましてね。それなのに彼はこちらの課題も解決してくれるんですよ。勇者様からしたら、頭が痛い話でしょうが。」
「だろうな。だが、そんな奴がいるなら、会ってみたかったのも事実だ。今日中にでも会わせてもらうぞ。」
「まず、その子の保護をお願いするよ。エストラル家の息子は亡くなった当主をさらに残虐にしたような奴だ。襲名祝いに大通りで公開処刑に踏み切るかもしれない。だとしたら、時間があまりにも少ない。」
「…脱出手段の確立は少し厳しいか?」
「かもしれないな。そうなったときはどうする?」
「そのときは馬車の荷台でも貸してもらおう。護衛がつくってだけでお釣りになるだろ?」
「彼を使うのかね?」
「…ああ。あいつを野々村の護衛にする。」
「そうか。でも、いいのかい?今更かもしれないが、この先の道はキミ1人だ。」
「そんなこと、最初からわかってやってる。指摘されるまでもない。」
「そうかい。ならいいけどね。」
「決行は明日だな。協力者にもそう伝えてくれ。」
受付の男はうなずいた。それに俺は少し満足してこんなことを言ってしまった。
「そうだな。うまくいったら、ここもほかの3支部も明るくしてやるよ。」
「…本当かい?ギルドが活動するようになって困らないのか?」
「人が足りないだろう。今回のクーデターで人がいなくなるのは必至だ。」
「お互い補い合うってわけかい?」
「不可能だとは思わない。懺悔の言葉一つでそれは片付くだろうからな。」
俺はそう言ってマリアが教えてくれた場所に急いだ。




