~克己(竜騎士)編Prologue~
短くなってしまったので連続投稿
この世界に来て、最初に見たのは巨大なカマキリが担任だったクズ野郎を頭からぼりぼりと喰っているシーンだった。あいつの体はヒクヒクと動いていたが、その周りを赤く染める夥しい出血から生きているようには思えなかった。
みんなはカマキリから遠くなるように奴がいる方向とは逆に逃げて行った。でも、俺が見るにその方向は南であり、近くの木の葉っぱのある位置からしてもカマキリがいる方向に逃げたほうがどう考えても早く森から抜けられそうだった。
「幹の様子からして…こっちが北だな。」
俺は走った。カマキリは誰かを狙って移動したようだったが、その人が近くにいるような気配はなく、助けに行くこともできそうになかった。そんな時だった。左前方にもう一体のカマキリが見えたのは。
そのカマキリは女子3人を追っているようだった。近づいていくとそのうちの1人が不自然なこけ方をした。それに気づいた俺はラストスパートをかけるように一気に加速した。そして、その女の子の体に鎌が突き立てられるよりも一瞬早く彼女を抱えて飛び出すことに成功した。カマキリの野郎は鎌が地面にしか刺さんなかったことにイラつきながら、こちらを見ているようなふりをし、首をかしげた。
俺は彼女の手を握り、ゆっくり起こした。カマキリ野郎は俺も聞こえた何かが爆ぜるような「パチン」という音が聞こえた方向に近づいて行った。