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『この滅び行く世界に祝福を』  作者: 早稲農家
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外伝・大和(贖罪)編

 その翌日、ベスタ家の当主と会談した。こいつは朱里のお気に入りで、お金で何でも解決できる奴のようだった。こいつはいらないとすぐ判断できた。こいつから何かを受け取るわけにはいかないからさっさとご帰宅してもらった。だが、すぐには帰らず、朱里と会談し、これからの増税方針に関しての話をしていた。その翌日は教皇派のヘワード家と会談した。こいつは信心深いのかと思ったら、ただ教会からのわいろで財を成していただけだった。詳しく聞くと教会によるお布施の仕組みは15世紀のヨーロッパの仕組みそのものだった。救済をお金で買うなんてのはおごりでしかない。こいつもあの計画を伝えることなくおかえりいただいた。最後に対談したエストラル家の当主は瀬戸のお気に入りなだけあって極度の人間志向の男だった。獣人は奴隷もしくは敵と考えているようで彼らを捕獲もしくは殺害するために世界各地に飛ぶと明言していた。こいつのお抱えの奴隷にはさまざまな種類の亜人がいるが、みな例外なく傷だらけだった。今度の遠征の時期を聞いてきたが、俺の耳には入っていない。そういうことなんだろう。こいつは必ず排除してやる。そう考えた俺は当然のごとくこの男にも計画を話さなかった。


 その翌日、ギルドの受付の人から杉野が驚異的な速さでクリアしていることを知らせてくれた。その日は朱里と瀬戸の家に向かっていた。彼らの家にはこの世界に来てからためたコレクションがあるらしい。嫌な予感しかなかったが、それを確認することにしたのだ。案の定というべきか、想像をはるかに超えてきた。朱里の家はいろいろな人からもらったのだろう。数多の装飾品で彩られていた。彼女の生い立ち的にこんな豪勢な生活にあこがれていたのは知っている。しかし、ここまで節操なしだとは思わなかったのだ。玄関にはシャンデリア。自分の家の門には金の装飾品をこれでもかというぐらいめちゃくちゃにつけていた。いくら何でもつけすぎじゃないかといったのだが、聞く耳持たず、少しもってくなんて聞いてきたのだ。俺は首を横に振り、『これから瀬戸の家に向かわないといけないから』と言ってその場を後にしたのだった。

 瀬戸の家はもっとひどかった。エストラル家の進化バージョンと表現するのが正しいだろう。ほのかに家の中から血の香りがするのだ。それを指摘すると「かんちがいじゃねえ。本物の血を漂わせてるんだよ。いい感じに高揚するだろ?」と返された。さすがに俺も耐え切れなかった。虐待の数々。今もそれにさらされ、かろうじて生きているメイドの獣人たち。その中でも一番ひどかった猫耳の女の子を俺はとっさに抱き上げた。


 「あ?そんなやつがいいのか?そいつ、あんま泣かねえんだよ。」

 「そうか…引き取ってもいいか?」

 「もちろん。こいつじゃない奴のほうがいいんじゃないか?」

 「この子が一番ひどいからな。おまえにはわからないか。」


 『ひどい』という際にはわざと声のボリュームを落とした。それが功を奏し、瀬戸には聞こえなかったようだった。俺はその子を自宅に連れ帰り、彼女のけがの具合を確認していた。全身に数十か所の打撲。両手足の指の爪の欠損。両耳の切断。再生魔法が必要だが、そんなものは知らなかった。しかし、朱里を頼れば彼女の口から瀬戸に伝わるだろう。俺が現時点で頼れると思ったのはたった一人だった。


 「で、私のところに来たんだ…」

 「ああ。野々村にしか頼れなかったんだ。俺では女の子の裸を見るのも本来は避けるべきだろう?」

 「…でも、私は鍛冶屋。マスタースミスよ。力になれないわ。」

 「そうだよな。申し訳ない。そうだ…魔剣製作は順調か?」

 「ええ…順調よ。完成したら、この国を出るから。」

 「…その件だが、たぶん難しいぞ。」


 そう言いながら、俺は手紙を渡した。そこには『今、キミを脱出させる手はずを整えている。何とかして救い出すから、製作時間をなるべく伸ばしてみてくれ。この手紙はすぐ燃やすこと。』と書いてある。万一にもあいつらに伝えてしまうわけにはいかなかった。


 「…どういうこと?」

 「キミの監視体制は今まで以上に厳しくなっているからな。相当の準備なしじゃできないんだよ。だから、この国から出るのは厳しいだろうな。」

 「わかった。でも、私はあきらめないから。」

 

 俺はその部屋を出た。マスタースミスがわからないなら、そういうことの専門家に聞くべきだろう。朱里に聞くことができない以上、聞けるのはあいつしかいない。ならば、この吸湿作戦にアイツらも加えよう。そうすれば、きっと道が開けるだろうから。


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