~直樹(帰還者)編第三章~
数週間後、京子は歩けるまで回復し、そのリハビリを杉野が手伝っていた。
杉野はギルドとの約束があったらしく、その合間合間にギルドからの依頼をこなしているようだった。その甲斐もあり、彼が狩った魔物の素材でこの村にいくつもの施設が完成していた。
完成したものの中でも王国と引けを取らないものが鍛冶屋、診療所、そして、俺たちの村の名物品を唯一生産している研究所だ。それぞれの管理は京子と杉野、ちかと菜々子、そして、俺たちといったようにしっかり分担していた。
鍛冶屋は最初、簡単な鉄の武器を作成するための炉しかなかったが、杉野の持ってきた素材によっていくつもの装置がそろっていった。通気性や保存性に優れた魔物の皮と強靭な肉体を支える骨を加工することで魔物の素材を保管する保管庫、鋭い獣の牙を材料に使うことで鉄製品では傷つかないほど硬い魔物の皮を裁断する装置、魔物の炎をため込める部分を加工することで通常では融解しない金属を溶かす超高温炉など様々な加工ができるようになった。
診療所は主にちかが主導して…正確には彼女が生やしていった樹木によってもの凄い改築が行われていった。最初はボロボロの廃屋だったのだが、今では巨大なウッドハウスと化していた。一階部分は簡単な診療を行う部分、二階では患者を泊められるような病室、屋上はちか特製のハーブハウスだ。季節、場所関係なく彼女は生やすことができるため、今ではどうしても流通してほしい薬草があったら、それを出荷できるほどにもなっていた。
そして、俺たちの研究所。ここでは俺の『魔法』とみどりの『錬金術』による生産や新開発を行っていた。『ゴールデン・ローゼンディア』もその中の一つだ。研究所は4つの区画からできていた。1つが『発酵所』。お酒やチーズなどの発酵食品を生産する場所だ。2つ目が『農業区画』。ここではみどりの錬金術によって生み出された新種の野菜や果物を栽培する区画だ。3つ目が『魔導試験所』。『ゴーレム』や『リビングアーマー』などの魔導兵器を研究、生産している。『アイアンメイデン』と名付けた『リビングアーマー』は文字通り、魔物をその中に取り込み、串刺しにして放出する。こいつが村の周りに数機存在しており、リアルタイムで監視を行っている。4つ目が『調合室』だ。村人の怪我で薬が必要になった際、調合する場所になる。
ちかもレベッカにいろいろと教えており、簡単な手当てができるようになっていた。
そんなころだった。みどりも妊娠していることが分かったのは。
最初は彼女の『錬金術』が発動できなくなったことから始まった。
彼女はそれが病気のせいだと思ったらしく、パニックになっていた。
見たらすぐわかった俺は彼女にそれを伝え、レベッカとアリサにしばらく新種の生産ができないことと出産までの間は2人で『農業区画』を管理してほしいと伝えた。
それだけでもう妹か弟かの談義を始める彼女たちはほほえましかった。
王国からの移民でまた村が大きくなったころ、みどりの妊娠が発覚して2週間ほどたったころだった。この村に意外な来客があった。
王国からの移民でまた村が大きくなったころ、みどりの妊娠が発覚して2週間ほどたったころだった。この村に意外な来客があった。
男1人に女3人。その男は学ランを着ていた。隣にいる淫魔は制服。髪が緑色の女の子は腕が露出したロングスカートを身に着けていた。髪が深紅に染まっている彼女はチャイナドレスだ。しかし、今は冬に入る少し前。魔族がここに来るのにそんな軽装なわけがないと思い、俺は彼らを観察していると、その男がそう言った。
「ここが克己君が言ってた村だよね?」
「お兄ちゃんらしい村だね。みんな生き生きしている。」
彼女たちも口々にそう言った瞬間だった。魔法でその声を聴いて俺は彼らが誰なのかを悟った。村人たちも彼らに気づき、彼らを取り囲んだ。
「あれ…なんかまずいね?」
「…魔族と手を取り合って生活してるんじゃなかったの?」
村人たちも警戒心むき出しだ。そりゃな。みどりと菜々子、この村のアイドルが妊娠しているときに淫魔は来てほしくないと思ったのだろう。
「みんな。解散だ。彼らは俺の知り合いなんだ。」
そのタイミングで俺は姿を現した。
「春。船橋。康夫。よく生きてたな。」
直樹(帰還者)編第三章
完
これにて直樹編第三章は完結です。
実は…各次章を以て彼らが主人公の話をいったん中断します。
強くしすぎちゃったんで…同じ視点で新しい主人公を出します。
その数、7人。そのうちの3人の視点で同じように描いていきます。
その前に外伝を挟みます。
主人公は…和宮大和。こいつの言動が大きく変わっている理由を描いてから、クラスメンバーのまとめを行い、各最終章を描いていきます。




