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『この滅び行く世界に祝福を』  作者: 早稲農家
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~直樹(帰還者)編第三章~

 克己や杉野たちとともに戻った俺はまず新しく村にできていた診療所に野々村を連れて行った。調べてすぐ彼女の状態の異常さが分かってきた。彼女の服の両腕と両足の部分を割き、傷の様子を確認すると暴行の跡が見え隠れしているにもかかわらず、その傷はほとんど治療されていたのだ。


 「…どうしたらこんな状態になるのよ。」

 「治せそうなのか?」

 「治せなくはないけど…こんなに関節が粉砕されているなんて…きっと、生かすつもりはなかったのね。もう、両手足は動かないかも。」

 「…『修復魔法』じゃだめなのか?」

 「…試した。基本的な形は復元できたんだけど…まだ欠片がありそうなの。」

 

 俺と話しながらかけていたみどりの魔法の効果は一瞬で現れていた。めちゃくちゃな方向に曲がっていた彼女の両腕と両足は元に戻った。そこで俺も気づいた。永続する治癒魔法、第5階位に位置する『修復』を誰かが使っていたことに。


 「…こいつは、欠片はなさそうだな。」

 「ここまでして拷問したかったのかな?」

 「どうなんだろうな…ここまで歪んでしまったのか?」


 そう言って俺はあいつの言葉を思い出した。


『許してもらおうなんてこれっぽっちも考えていない。殺したいなら、時間はまたあとでやる。今は野々村が危ないんだ。』


 思い出し、改めて彼女の傷を見る。致命傷もあっただろうがそのことごとくは治療されていた。しかも、破壊されてしまった関節に関しても悪化しないように『修復』の魔法を使用していたのだ。この傷はその次の最高階位魔法『再生』、『リーンカーネーション』でなら、完治できた。つまり、朱里がやった治療ではない。


 「なになに?辛気臭い顔してどうしたの。」


 考え事をしていると部屋の隅から頭に花をつけた緑色の人型、アラウラネが現れた。

 とっさに『クサナギ』を召喚したが、その顔に思い当たるものがあり、すぐ送還した。


 「わるい。目次か?どうして魔物なんかになっている?」

 「ははは…あの直樹があんなに威圧してくるなんて…ごめん。腰抜かしちゃった。」

 「直樹…さすがにやりすぎよ。」

 「目の前に魔物、いや、話が通じるから魔族と言ったほうがいいか?そんなのが現れたら、普通はこうなる。ただ…申し訳なかった。」


 俺は手を伸ばし、彼女を立たせた。

 ちかはまだうまく立てないようだった。


 「まあ、いない間にいろいろあったのよ。」

 「その言葉で済ませてもいいのか?」

 「私は構わないけど…その…春ちゃんも魔物になったからさ。」

 「…春がどうしたって?」


 俺はまたすごい表情になっていたのだろう。みどりが俺の名前をすぐ怒鳴った。


 「私たちはこの世界に飛ばされてすぐ魔物につかまったの。そして、実験台にされた。春ちゃんは適性があったから、魔物になれたんだけど…適性がなかった人もいて…康夫君が亡くなったって聞いた。」

 「それは…本当なのか?」

 「うん。って、ごめん。なんで私も辛気臭くなっちゃう話しちゃったかなぁ。」

 「…ついでだ。保木と瀬戸。あいつらを殺した。」

 「…殺した?」

 「ああ。あいつらをそのままにしておけなくてな。」

 「…なんでかな?あの二人が死んだって話は全く辛くないや。むしろ…ホッとしてる。ってか。そっか。それで京子ちゃんをここに運んだんだね。あいつに襲われたの?」

 「遠からずってところだな。」


 ちかは自分の根っこのような腕をはわせた。

 何も言わないが、医者の娘らしく、これだけで傷がどんな状態かわかるようだった。


 「ねえ。これ…どうやって治療したの?腕だけじゃなく、体全体を粉砕されてるよ。こんなの、1時間も放置したら死んじゃう。正直、なんで生きてるのかわかんない。」

 「体全体?」

 「うん。腕だけに関しては肘から先が粉砕されてた。体は…肋骨が4本。尾てい骨、恥骨の粉砕骨折。足は…膝から下が肘下とおんなじ状態。こんな状態で今、全部が治っているのが信じられない。これって魔法で可能なの?」

 「できなくはないが…そんなにひどかったのか?」

 「応急処置ができないくらい凄惨な状態。」

 「…朱里も治療していたのか?」

 「かもしれない。腕の傷と体の骨折の治り方が違う。頭のほうも出血があったみたいだけど、鼻と頸椎の骨折と頭蓋骨の中身の治療の仕方も違う。」

 「目を覚ますのか?」

 「大丈夫。朱里は生きてるんだ。なら、大和君も生きてそうだね。」

 

 ちかは元来た道を戻り始めた。


 「ちか?」

 「京子に栄養たっぷりな野菜を食べてもらいたいから、少し栄養を分けてくる!」

 「栄養?」

 「私、アラウラネだもん。この村の新名産、作っちゃうよ!!」

 「…ほどほどにしておけよ?」


 彼女はVサインを出して潜った。潜った場所を確認したが、穴のようなものはない。


 「みどり…魔物ってすごいな。」

 「ははは。この村に魔物は何人かいるでしょ。何今更なこと言ってるの?」

 「確かにそうだな。」


 俺たちはそんなことを言いながら、京子の看病をしていた。


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