~直樹(帰還者)編第三章~
「…まさか、お前がここにいるとはな。田舎に逃げたと思っていたんだが。」
「野々村を殺そうとしているらしかったから戻ってきたんだよ。」
「じゃあ、お前は俺の邪魔をしに来たってことだな。」
「大筋としては正解だが、俺の目的は若干違うな。」
「そうか…だとすると、獣人どもに復讐でも頼まれたか?」
そう言って瀬戸は突進してきた。俺はそれを見ながら、この攻撃でカインは…と考えながら、地面に罠を張った。それを踏み抜いた瀬戸は影に拘束された。『影縛』という魔法だ。それを確認し、俺は周囲に白い霧を放ち、『模倣』という魔法でいくつもの分身を作成した。それに剣を持たせ、瀬戸に襲わせた。瀬戸は四方八方から迫る全くといっていいほど威力がない斬撃に堪忍袋の緒が切れたようだった。
「おい!八神!正々堂々戦え!」
「正々堂々か…お仲間さんを呼んでいるお前にそれが言えるのか?」
俺はその時、最後まで残っていた気配がなくなったことに気づいていた。
監獄にいた4人が最初から待ち伏せしていた1人と後から来た1人によって全員殺されましたなんて瀬戸に教える必要はなかった。
「あんなの、捨て駒だ。」
「そうかい。だとしても、この状況を打破しないと俺には届かないさ。」
「そうだな!死ね!」
何らかの方法で俺が発生させた『白霧』という魔法を払ったやつは数多の分身から唯一離れていた俺の姿を捉えたようでそれに向かって飛び出した。奴は確実に俺を仕留めたと思ったんだろう。
「シールドバッシュ!!」
そう言って奴は盾で思いっきり体当たりした。
直後、爆発が起きた。
「は?」
その爆発で…瀬戸は盾ごと自分の腕が失われていることに気づいた。
何が起きているかも理解してないようだった。
「全く。そいつが本物かどうかは確認しないとな。」
俺は分身よりも遥か後ろにいた。そりゃそうだ。あんな爆破魔法、『爆縮』という魔法を至近距離で発動したら、俺も危ない。それに、次の魔法は少し時間がかかる。
「お…俺の腕…腕があぁぁぁぁぁ!!」
「そうだな。なくなっちまったな。『圧迫』」
その魔法が発動した瞬間、瀬戸は地下道の先に叩き付けられた状態で固定された。
「この状況…何にも思い出さないか?」
「知るか!離しやがれ!さもないと…」
直後、瀬戸は悲鳴を上げた。そのはずだ。両肩に俺はクサナギを飛ばして突き刺したのだから。その状態で俺はもう一本クサナギを召喚し、その刃を『加熱』魔法で熱し、まだ生えていた腕を斬り落とした。再び上がる悲鳴。出血は斬ると同時に肉を焼き焦がしたことでそれほどひどくなかった。まだもがいているのを確認し、さらに2本召喚し、両足に突き刺した。そこは刺さると同時に出血し始め、あいつのズボンは真っ赤に染まっていった。だが、これで終わらせるつもりはない。なぜなら、あいつは、カインはこれ以上に苦しんで死んでいったのだから。
「なんなんだよ!俺はお前にはこんなことしてないぞ!!」
「ああ…俺にはな。お前はこんな状況で誰かを殺しただろ?」
「…まさか、あの人狼か?あいつはむかついたよ。痛いとかやめてとか言わなかった。だから、ちょっとやりすぎてさ。でも、それが何だよ。俺には…。」
「なら、お前にも少しやりすぎるくらいがちょうどいいな。」
そして、先ほどの過熱した剣で真一文字に両膝から先を斬り落とした。
今度は悲鳴をあげなかった。痛みで気絶してしまったようだ。仕方がないから、『水弾』の魔法をほとんどダメージがないくらいに遅くし、奴の顔にぶつけた。せき込み、起きる。そして、こちらを確認し、最初に口を開いて発した言葉は…助命の願いだった。
「頼む…こんな姿になったら、何もできないだろ?助けてくれよ。」
「…悪い。何か言ったか?」
俺は一瞬、何も聞こえなかった。まさかだろ?数多の人をこうも虐殺してきた野郎が自分の死ぬ瞬間にはこの様だと?許されると思っていたのだろうか?
「何が欲しい?金か?それとも女か?ああ。いい女を紹介するさ。あと、お前の指名手配も解除する。もちろん、みどりも一緒だ。」
「…がすとおもうか?」
「そうか!助けてくれるんだな?」
「逃がすと思うか?この殺人鬼。てめえはここで殺す。」
俺は指を鳴らした。その瞬間、こいつを固定していた剣は俺の元に戻った。さらに俺は8本の剣を召喚した。俺がこの『クサナギ』で放てる最高の技を放つために。同時に『風縛』という魔法で四肢を失った
「…数多の刃は無限の想い。その刃に貫けぬモノはない!覚悟を決めろ!『ミリオンフェンサー』!」
12本の剣は見えないほど小さい数多の光の刃に変わった。そして、空中にとどまっているアイツの周りに漂い始め、球状の軌道を描きながら、そいつを肉片に変えていった。術の真っ最中に発生した血だまりに沈んでいく男の肉片。それが真っ赤な山になっていくのを見ても俺は何も感じなかった。そして、奴が完全にその山に置換されたのを見届けた俺はそいつを放置し、すぐ正門の方向へ走っていった。




