~直樹(帰還者)編第三章~
今日まで連日投稿させていただきました。
明日からは1日おきになります。
杉野はギルドの人と一緒に地下道に下りた。地下道には蜘蛛型の魔物がおり、何度か襲われたが、依頼された魔物と比べたら、かわいく思えるほど弱かった。
そんな魔物を倒してつつ、先に進んでいると分岐路に差し掛かった。そこには以前、俺が裏通りで女の人を強姦しようとしていたところを逮捕したはずの男がいた。
「…あいつは俺が逮捕して数年間は監獄に収容されたはずの奴だ。なんでいる?」
「あなたのお仲間さんが最近、監獄によくいるという話は聞きましたが…もしかして、彼の手引きでここにいるんじゃないでしょうか?」
「だとしたら、斬り捨てるしかないな。」
俺は太刀を抜いた。その音に反応し、そいつは振り向いたが、その前に刃が男を一閃し、物言わぬ屍に変えた。その剣戟を見た案内人はしばらく黙っていたが、『ここからは一本道ですから、おひとりで向ってください。』といって逃げるようにいなくなった。
「仕方ない…少し急ぐか。」
そう呟き、俺はこの先にある場所に急いだ。
監獄に侵入した俺はすぐ彼女を見つけることができた。彼女はひどい虐待を受けた後だったが、なぜか彼女の関節があらぬ方向に曲がってしまっている以外は治療されていたようだった。一体誰が?そんなことを考えていると背後から物音がした。
「…誰だ?」
「…姿は見せられませんが、決してあなたと敵対する気はありません。」
その声は女性のものだったが、朱里のものではなかった。
「治療はお前が?」
「僭越ながら。関節に関しては損傷が激しく、ここで治療することができなかったので応急処置のみしか行っていません。こちら側には騎士団が集結していますので、元来た道から、できるだけ早くこの国からお逃げください。」
「…そうさせてもらおう。」
俺は納めていた太刀にかけていた手を放し、京子を背負った。
その軽さに俺は自分の無力さを悔いるしかなかった。
彼女を背負いながら、元来た道を引き返していると、あの分岐路で誰かが立っていた。
そいつは盾を持った状態でこっちを見ながら笑みを浮かべていた。
「どうやら…俺の遊び道具を盗んでいるみたいだなぁ。あの竜もお前らの仕業か?」
「竜?そんなのは知らないが…邪魔をするなら、容赦はしないぞ?」
「容赦しない?違うな。お前はここで死ぬ。俺が殺しを愉しむからな。彼女を降ろせ。」
俺は京子を地下道の端に降ろし、刀に手を懸けながら、瀬戸を凝視した。
瀬戸は俺の様子を愉しみながら、盾を構えていた。俺が抜刀した瞬間、その軌道に吸い込まれるように盾を構えている腕が移動した。この動きはおそらくあいつのスキルによるものだろう。しかし、俺の攻撃はそんなものでは貫通するはずだった。盾で受け止められた瞬間、斬撃に何かが干渉するような感覚が刀を通して伝わった。こいつは…。
「…物理耐性か?」
「さすがに分かるか…だが、こいつの対策を練る時間はないぜ。」
そう言った瀬戸はこっちに突進してきた。『盾騎士』なだけあってしっかりと盾でこちらの攻撃を受け切り、空いているほうの手でこちらを殴ってくる。それを回避しながら、反撃するが、俺の術技さえもしっかり避けるのだ。炎を纏う刀身での攻撃ではそれぞれの威力を減退させ、ほとんど効いていなかった。
「どうだ?こいつが『魔盾アテナ』の強さだ。」
「それが『魔剣』なんだな。京子に作らせた!」
「ふっ…そうだ。いいこと教えてやる。俺の私兵が時期にオマエの背後にある監獄の入口から来るはずだ。そうなれば、お前は挟み撃ち。野々村を守ることもできず、俺たちに殺されることになる。」
「そうなると思ったら、大間違いだ!」
俺は飛び出した。そして、俺はただの袈裟斬を繰り出し、瀬戸の視界が盾で隠れる瞬間にそれの威力を極端に弱めつつ、軽く盾をいなすようにして瀬戸の背後に回り込んだ。瀬戸は至近距離でガードが間に合わない状況での俺の一撃に思いっきりにやついた。
振り上げた瞬間、瀬戸は大きく後ろに飛んだ。その方向には京子がいた。奴は京子をここで人質に取るつもりだったのだとここで気づいた。しかし、ここから奴を追撃しようとしても間に合わない。そう思いつつも、瀬戸に手を伸ばした時だった。
瀬戸は横から突然襲ってきた何かに吹っ飛ばされた。
そのおかげで俺はまた京子のそばに位置することができた。しかし、新手は魔法にたけているのだろう。隙を見せるわけにはいかなかった。
「…警戒は正しい。が、さっさと京子を連れて行け。おぶっていくのは想像以上に時間がかかるぞ。ほら。急げ。」
そう言った誰かは起き上がろうとした瀬戸に容赦ない連続攻撃を放っていた。瀬戸はそのすべてを盾で受け止めていたが、その威力は半端なかったようで起き上がることもできなかった。
「くっ…すまない。」
「謝んな。さっさと行け。杉野。」
そう言った男は暗闇から姿を現した。なんとなく正体はわかっていたが、その男は左手を追い払うようなしぐさをして炎の槍を10本も召喚し、そのすべてを瀬戸に向けて放った。俺はそんな二人を背中に地下道の出口に向かって走った。




