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『この滅び行く世界に祝福を』  作者: 早稲農家
73/144

~康夫(魔族)編第三章~

今回は連続投稿になります。

少し時間差を作ったので見逃すことはないと思いますが…72話も見逃さないでね。

 僕は剣を振った。奴はボロボロになった左腕でそれを防ぎ、何とかして僕の猛攻撃を耐えようとしたのだろう。でも、それは一撃で宙を舞った。それに驚愕した奴はなんとかして逃げようとじりじり下がっていく。僕はその哀れな姿を見逃すつもりはなかった。


 「お前、何もんだよ!畜生!来るな!」

 「言ったはずだ。もう誰もお前に殺させはしないと!」


 僕は剣にマナを集結させていった。マナ、精霊たちが生み出した生命の源。命をもてあそんだ代償は命の源が生み出す力の本流に払わせてもらう。こいつだけは…こいつだけは跡形もなく消してやる!

 そう思いながら振るった一撃は僕ではまだ扱い切れていなかった。振り下ろした力の本流、精霊たちの切り札と言われていた魔法剣『精霊剣』はいくつかの形をとる。そのうちのもっとも扱いやすい『聖波』と呼ばれる極太レーザーを放つ技なのだが、それは奴に直撃させることができなかった。僕の魔法剣が最初にその威力を振るったのは奴の目の前の床だった。それはそのまま地面を砕き、奴を奈落、正確にはその下に広がっていたマグマに落下させた。奴は両手足を失っているために落下した先でもがくこともできず、沈んでいった。僕はそれを見届ける前に後ろに殴り飛ばされた守宮さんのもとに駆け付けた。

 彼女はひどい出血でふもとの町に戻っている余裕はなかった。彼女はまだ生きているが、死に瀕していた。彼女に触れて僕も初めて分かったのだが、彼女の体の中に炎のマナが宿っているのだ。彼女ならば、『イグニスの卵』と同化することも可能だと確信できた。でも、肝心の卵はいまだに見つからなかった。魔力が出入りするような場所が見つからない限り、卵のありかは見つからないのだから。そのとき、春がこちらに駆け付けてきた。美香も一緒だった。

 

 「大丈夫…とはならなかったみたいね。」

 「ああ。そうだ!マナの通り道、美香ならわからないか?」

 「え?目の前にあるじゃない。」

 「目の前?」

 

 美香はそう言って指さした。その先にあったのはマグマだった。

 

 「美香。僕は何にも感じないんだけど。」

 「…なら。その下に足場か何かないかな?」

 

 僕は春に彼女を任せて先ほど崩した足場の先を覗きこんだ。

 何もない。でも、覗き込んだ先にあったマグマだまりの中にはかすかに卵の波動を感じた。僕はそれが活性化するようにマナを活性化させた。その瞬間、立てなくなるほどの地響きが起き、同時に溶岩を伴ってマナの塊が飛び出してきた。立ち上がった僕はそれを持って彼女の前に置いた。


 「守宮さん。よく聞いてほしい。キミの体はもう限界だ。キミが助かるには一か八かだけど、これを取り込んで人の体を捨てるしかない。どうするかはキミに決めてほしいんだ。」

 「…せこいよね…生きたいかどうかを…聞くなんて…生きたいにきまってるじゃん。」

 

 守宮は右手を伸ばした。でも、それはあさっての方向であった。


 「ごめん…もう何も見えないんだ…お願い…」


 僕はその卵を彼女に握らせた。その瞬間、発生した炎に彼女の体は包まれた。

 僕たちは祈ることしかできなかった。

 彼女が精霊の試練を越え、それでもまだ生きたいと願ってくれることを。


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