~康夫(魔族)編第三章~
今日から4日間でこの章を終わらせます。
洞窟のような一本道を駆け抜けていくと天井が妙に高い場所に出た。
そこには天井に二人の女性が吊らされていた。それを目撃した瞬間、守宮さんが息をのんだあたり、きっと彼女の知り合いなのだろう。私は美香と目配せして飛翔し、彼女たちを解放してあげた。そのうちの片方は吊るされたまま亡くなっていたが、そのままではあまりにかわいそうだったため、その人たちも回収した。その広場に横たわらせた、生きている人と遺体の様子を見て、その特異性に気づいた私は思わず口を手で覆ってしまった。
「この人たち…出産してる。」
「出産?そんな…だって、私が離れていたのは2か月ぐらいだよ。」
「…でも、この臭いは間違いないわ。」
私は亡くなっている人の下腹部に触れた。そこにあるはずの感覚がない。彼女が吊るされていた場所の下には彼女の体液の痕跡がかすかに残っていた。だとしたら、ここは亡くなった彼女たちをこうした元凶の巣穴になるのではないだろうか?
「う…」
「シャル!しっかりして!」
「あれ…美弥子?よかった…生きてたんだね。」
「あの後、一体何があったの?」
「婆様は殺されちゃった。ナタリーもクレア、サシャも…みんな…あいつに…」
「シャル。落ち着いて。もう大丈夫だから。」
その時、巨大な雄叫びが聞こえ、彼女が急激に怯え始めた。
私でもわかる。この先にとんでもない化け物がいるようだ。
そいつを私は倒せそうになかった。そんなことを感じていると守宮さんが立ち上がった。このままでは彼女だけでも先に進んでしまうだろう。そんなことを考えていると私たちが入ってきた場所から3メートルくらいの巨人が出てきた。
「アデ?オンナ…オリテル。」
「オマエ、オロシタノカ?オヤジニコロサレルゾ?」
「チガウ。アイツラダ!」
3体目の巨人は何かを続けて言おうとしたが、そのタイミングで天井が崩落し、そこから滑空してきた影に首を斬り落とされてしまい、何かを言うことなく轟音と共に地面に崩れてしまった。その影は着地し、振り向きながら、持っていた剣に竜巻を纏わせ、もう一体の頭部をミンチにすることで討伐した。残された最後の一体が雄たけびを上げ、武器を取り出しているころ、守宮さんが奥の化け物がいるほうへ向かってしまった。
「康夫君!守宮さんが奥に行っちゃった!」
彼は剣でその巨人の攻撃を受け止め、応戦していた。再び鍔迫り合いになった瞬間、美香が作り出した風の弾を巨人の頭に向けて放った。それは巨人をひるませることに成功していた。
「康夫君!先に彼女を追って。こいつは相手できるけど、こっから先にいる化け物は私たちじゃ無理だから!」
康夫君は振り向き、こっちに走ってきた。私の真横を通るタイミングで『ごめん。気を付けて。』って言ってきた。全く。こいつをサクッと倒さなきゃいけない理由ができてしまった。よく言い聞かせないと。わたしたちにもうあやまらないってことを。
そんなことを考えながら、私は剣を抜き、目の前の巨人に集中した。
「女3人って聞いていたんだが…残りはどこにいるんだ?」
「二人は道を切り開いてくれた。まあ、もう少ししたら追いつくさ。」
守宮さんに追いついた部屋で5メートルくらいの巨人がいた。天井が高い上、地盤がしっかりしている。よっぽどのことがないと地盤が崩落するようには見えなかった。
「おや…お前…なんか見たことあるな…どっかであったことあったか?」
「…この姿で会ったことはないよ。」
「うーん。まあいい。これから死ぬ奴の名前なんかどうでもいいな。で、そっちの別嬪さんはなんで戻ってきたんだ?そんなに俺と遊びたかった?」
「森本…私はあんただけは許さない!」
「…人間風情に呼び捨てされるとは。お前も葛飾みたいに殺すぞ?」
彼女は少し驚いた表情になった。確かに僕がここにいるのに、彼は僕を殺したと言ったのだ。当時、軟弱体質でスクールカーストの最底辺だった僕と不良グループの一員で、スクールカーストではトップに近かった森本。どちらを信じやすいかは言わずもがなだろう。そんな奴のウソ。死亡確認をしないでそんなことを言っているのが悪い。
「森本君、悪いがここから退去してくれないかな?ここは…」
「あ?お前、魔物だろ?魔物風情がなんで俺たちの言葉を使ってんだよ。」
「魔物か…あれとは一緒にされたくないなぁ。」
「イライラするなあ。てめえらはゴブリンどもと一緒化、それ以下だよ。命令に忠実なアイツらのほうがいいがな。で、俺と謁見するには時間に相当する貢物が必要なんだけど?」
「…もういいかな。僕は警告したし。これしか解決方法はないんだよね?」
僕は仕方ないけど、剣を抜いた。
「守宮さん、申し訳ないけど、少し下がっていてほしい。今のキミでは足手まといだ。」
森本は立ち上がり、刃渡りが2メートルはある斧を構えた。
守宮さんが少し下がったのを確認して僕は飛び出した。




