~康夫(魔族)編第三章~
反動で少し短めになってしまった…
しばらく休んだ僕たちは再び守宮さんが向かっていた山頂へと向かった。その道中もゴブリンたちが進撃してきたが、今まで戦ってきた敵と比較すると物足りなくなるようなレベルであり、正直、守宮さんが前に出るよりも早く美香がシルフらしく風の刃を数多に召喚して飛ばすことで瞬く間に細切れにしていた。
しかし、それはちょうど頂上にある祭壇へとつながる入口に差し掛かった時、急に状況が変化した。ゴブリンたちが恐慌状態になって襲ってきたのだ。必死の形相でこちらに向かってくる固体の中には僕たちを無視して山を駆け下りようとするやつもいた。そんな奴らを僕や守宮さんが遺さず倒していたのだが、どうしてそうなったのかはその瞬間にはわからなかった。そうなった原因はすぐ明らかになった。そんな彼らを倒していくとその軍隊の末尾が見えてきたのだ。その背後には巨人が棍棒でゴブリン部隊の末尾を攻撃していたのだった。さすがに僕たちもそれを見て攻撃の手を緩めてしまった。あまりにも不憫だったからだ。巨人はそれに気づき、ゴブリンたちに何か指示を下していたが、誰も従うようなそぶりも見せなかった。ゴブリンたちは壊走し、残ったのはその棍棒を持った巨人だけだった。春さんと守宮さんがすぐ得物を構える。でも、その戦場は山道という狭い空間だった。春さんはともかく、守宮さんの槍は不利だ。だから、それを援護しようと美香も身構えている。時間がもったいなかった。
「みんな、ここは僕に任せて。先に向かってほしい。」
「…一人で大丈夫?」
「うん、こいつにてこずるほど弱くないからね。」
僕はそれだけ言ってあの剣を抜いた。最近は手入れのためにしか抜かなかったこの剣を右手に持ち、腰を低くした。そして、僕が駆け出した瞬間に彼女たちも駆け出し、僕を叩くために振った棍棒をジャンプしながらの飛翔で回避した。振りぬかれた後を彼女たちが駆け抜けていくのを確認しながら、目の前の巨人の頸部から胸部を通るように回転しながら斬りつけていった。奴はそれを回避できず、そこから血が噴き出した。斬り終えた僕はすぐ飛翔し、巨人の手が届かないところまで移動し、斬りつけた剣を中段に構えた。奴の目は怒りに満ちていた。このまま突進してきたところを掴んで握りつぶそうとしているのが分かった。でも、この距離に離れたのには理由があるからだ。僕は美香をシルフにしたことで自分の体にシルフの能力を取り込むことに成功していた。この距離はこの剣に竜巻を纏わせるのに必要な時間を稼げる距離であり、それに気づかなかった巨人は完全に無防備だった。
「くらえ!『タービュランス』!」
剣に風のマナを纏わせ、それを渦状にして放つ魔法だ。発生した竜巻は巨人の頭部を捉え、一瞬のうちにそれをミンチに変えてしまった。僕が着地し、剣を納めると岩場の陰から生き残ったゴブリンたちが顔を出していた。そちらを確認すると彼らはすぐ岩場の陰に姿を隠してしまった。そのままにしてもいいかなと思った僕は先に向かった彼女たちの後を追うことにした。




