~康夫(魔族)編第三章~
今回、いい感じに切れなかったので結構長めになってます。
1日目。太陽の光を浴びても大丈夫になった私は近くの町に入った。町の入口にいた衛兵には認識誤認の魔法をかけて無事に検問を通ってきた。いい感じだ。私の姿を見るな否や、この町の長の家に案内された。どうやらこの村は『ザイフィード』といい、通商の起点になっている村らしい。しかし、この村長はいけ好かない。王国が近い上、関税でホクホクの場所であるため、騎士団が常駐してくれているそうだ。市民は金さえ稼いでくれればいい。そう断言していた。いい話だった。なら、まず、騎士団を潰してしまおう。
2日目。騎士団のトップは死んだ。カウエンという男は高貴なる血に合わなかった。久しぶりの食事は大変おいしかった。吸血が終わり、私の血を入れた瞬間、腐ったのだ。しかし、収穫もあった。その騎士団の副隊長のナージャという女は私の血に適応したのだ。栄えある眷属となり、彼女はあのごみの代わりに騎士団を指揮してくれるらしい。これでやりやすくなった。自分の部下である女性騎士たちも眷属にできたのだ。この町には娼婦館があるらしい。今日はそこを落とすことにした。
3日目。娼婦館の者たちは皆、眷属になってくれた。しかも、彼女たちはその晩に訪れた家族を食べてしまったらしい。新しいメンバーが2人増えたと早朝に報告があった。そのうちの1人は15歳だったらしい。若いときにしかない独特の雰囲気がなかなか良かった。ああ。ナージャから今晩、この町で頻発している男性が行方不明になる事例を王国に報告しに行く者がいるらしい。その伝達員を消すように指示した。伝達員は2人いるそうだが、そのうちの片方は彼女の部下がどうしても襲いたいそうだ。襲うメンバーに関してはナージャに一任した。その後、私はもう1人いる女性騎士団の隊長を襲った。彼女も眷属になってくれたのだ。眷属になる方向性が分かってきたかもしれない。
4日目。伝達員の男が眷属になった。それともう1人いた女性騎士団隊長ミュゼの想い人だった男も眷属になったのだ。娼婦館でも3人の男が新メンバーに加わったと話を聞いた。そのうちの1人の商人は自宅の使用人に奥さんを眷属に変えられたと真っ昼間に報告してきた。私は女性しか眷属にできないと思っていたのにどうやらそうではないことがはっきりしてきた。もう少し考察してみようと思う。
5日目。やってしまった。町の長を殺してしまった。食事で食べてしまう以外に人を殺すことだけはしないつもりだったのに。まだ爪で引き裂いた時の感触が残っている。彼の娘に性的暴行を加えようとしていた場面に出くわし、衝動的に行ってしまったのだ。その娘は『父は通り魔に襲われた。』とまだ人である騎士団員に説明していた。頸動脈を一撃で斬り裂いたため、死因は失血死だ。しかし、予想外の出来事で私たちの存在が明るみに出る。そう思うと私は人を襲えなくなってしまった。
6日目。あいつが来た。ここを屍族の拠点にすると言ったのだ。どうやら、この町の南側に広がる『魔の森』に進撃するためらしい。この町を早急に落とさなければならなくなったのだ。その話をナージャとミュゼにすると意外な回答が返ってきた。『ここで彼らと手を切るべきではないか。』、『主は人を殺したくないのだろう。ならば、私たちに案があります。』と。その案は魅力的だった。私の眷属たちは日の光を浴びても生きていられる。そこで私がこの町の長になり、食料になることを容認した人々が住む地区と私や眷属と化した者たちが住む場所を分けてしまえばいい。そう言われたのだ。
20日目。久しぶりの日記だ。国王から送られてきた報告書やその町の納税金額が記載された引き継ぎ書類などの処理で忙しくて書けなかったのだ。とりあえず、すみわけに関しては成功した。実は前町長の黙認されてきた罪は想像以上に多かったらしく、町長の娘が積極的にこの計画に賛同してくれたのだ。2週間吸血をしなかったからか、私の牙はすっかり短くなり、人を襲いたいと思わなくなっていた。騎士団のメンバーも『高貴なる血族』を謳うようになった。納税が滞ったことで王国の騎士団が出向くことがなくなり、守りきれなくなってしまっているこの町よりも西にある村々に出向くことが多くなった。国王から送られてきた書類には大塚朱里のサインもあった。米山ならともかく、大和たちに協力するつもりはない。私は騎士団のメンバーにそう伝え、彼らの判断でこの町への移民、常在しての警備活動などの騎士団に許される行為を許可した。それと報告だ。これはここだけの話になるが、私の血と教会でもらえる『聖水』、そして、『ニンニク』を加えた薬で眷属化が解除できるのだ。私の最初の眷属であるナージャに効いたのだから、間違いないだろう。すぐ、眷属に戻してほしいと言われ、彼女はまた眷属にしたのだが、そうなるともう二度と効かないようだった。私が増やしすぎてしまった眷属たちに戻るかどうかを聞き、何人かは人に戻ったのだ。彼女たちの血を飲んで眷属化が解除されるかどうかを実験したところ、それは起きなかった。元眷属だった彼女たちは私のことを『高貴なる貴婦人』なんていうから、私はドレスを着ることを強要されてしまった。こうして、この町、『ザイフィード』は吸血鬼の街となった。明日はあの男が来る日だ。でも、私はこの町にアイツを入れるつもりはない。私は町民を守る義務があるのだから。
21日目。しのぎ切った。犠牲はほとんどなかった。この町で休憩するつもりだったのだろうが、住民たちの中にいた私の症状を詳しく分析してくれた神官が私を狂わせた原因ともいえる瘴気の結界を作ったのだ。そして、私が作らせた私の生首をミュゼの旦那であるジョセフ騎士団長に掲げさせたのだ。それを見たアイツはこの町に攻め込んできたが、瘴気を払うのに有効な炎の魔法で一部を焼き払うとそそくさと退散していった。この町に立ち寄れなかった以上、補給はない。『魔の森』があいつに占領された際はなんとか森に住む魔族たちを引き受けようと思っている。そうなると人員が足りなくなる。町民にそれを強要することだけはしたくない。少し様子を見ることにしよう。そういえば、吸血の頻度を減らしたからか、私は眠らないと体が持たなくなってしまった。増やしたほうがいいと神官殿はおっしゃってくれたが、あんな姿に戻る可能性があるなら、これぐらいがちょうどいいのだろう。私はそう考えている。
32日目。『魔の森』が堕ちた。ケンタウロスの部族とミノタウロスの部族がこちらに逃げてきたのだ。私はそれをすぐ受け入れた。彼らはなんとかして他の部族の脱出に協力したいと言っていたが、傷が深いものも多く、とりあえずは治療に専念するように言った。森の奥に生息域があった部族はことごとく全滅したようだった。オークにアラクネ、マンドラゴラなどの魔族は奴らの配下になってしまったのだろう。警戒を強めなければならないと思っている。もしかしたら、まだ森の一部が明るく輝いていることからそこに生き残りがいるかもしれない。明日、そこを調査しに向かうと騎士団のメンバーには伝えた。
33日目。結論から書く。あの森には侵入できなかった。あの森から漂い始めた瘴気は私たちの血を刺激したのだ。一時的にあの忌々しい姿になった私たちは急いで退却した。戻ってきた私たちは待機していた神官たちの手ですぐ瘴気を中和してもらうことで事なきを得た。あの森には私たちは近づけない。そう逃げてきた者たちに告げるのは心苦しかった。彼らは悔しそうだったが、こちらに非はないと言ってくれた。それと最悪な連絡が出張中の騎士団メンバーからあった。瘴気に侵された魔物が出たのだ。処置の方法は知っていたために大事にはならなかったが、各地に神官を派遣しなければ、ふとしたきっかけであの忌々しい吸血鬼になってしまいかねない。対策が必要だろう。
35日目。神官のリーダーであるオーバルと検討を重ねていた時、ナージャが飛び込んできたのは鮮明に覚えている。王国から逃げてきた人がこの町に流れ込んできたのだ。住める場所が一気に足りなくなってしまった。『魔の森』の近くにあった村はあの忌々しい瘴気に侵され、人も魔族も住めなくなってしまった。そのため、溢れるものはこれより西にある集落に住まわせる必要が出てきてしまったのだ。そんな時、前村長の娘であるナタリアが騎士団に入りたい人を募集するべきだと言ったのだ。そして、戦闘訓練をして屍族と王国騎士団と対立するべきと言ったのだ。長会議でそんなことを言われた私は動揺を隠せなかった。その案には反対しようとした時、オーバルがそれに賛同したのだ。神官候補も同時に募り、瘴気に対抗できるものを増やせば、各地に派遣した騎士団員たちの瘴気対策も可能なうえ、その対抗策に関してはベテランの神官に3人の新人で十分なんて言うのだ。商人長もそれに賛同したため、私以外がいいというなら、各方面に通達してくれという決まり事が通ってしまったのだ。
36日目。久しぶりに眷属化の儀式を行った。眷属になれずに死んでしまうかもしれないと言ったにもかかわらず、集まったのは14人。その中にはナタリアもいた。結果は全員が眷属になった。おそらくこの町民に対して愛着がわいたからなのではないだろうか。神官に関してはその倍以上の人数が集まったため、人材不足に関してはその日中にめどが立つなんて言っていた。それと南の村から使者が来たらしい。その人と明日、会談を行うことになった。面倒事が増えないことを祈ろう。
37日目。今日の日記でしばらくまたつけるのをやめようと思う。理由は情報を漏らさないためだ。今日、会談した相手とはいい関係を築けそうだった。その人たちと一緒に私たちは王国を倒す。屍族とは協力関係にもならないと明記した。私の体質が治ったのは確かに彼らのおかげだけど、だからといって無用に人を殺すようになるのはごめんだから。だから、ここに記す。私たちは独立すると。独立し、ここに闇夜の眷属と人々が一緒に共存する国を築くと。




