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『この滅び行く世界に祝福を』  作者: 早稲農家
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~康夫(魔族)編第三章~

 「森本サマ…侵入者ノ報告デス。」

 

 ゴブリンのリーダーが報告書を持ってきた。昨日から女1人がここに上ってきているらしい。もうとらえたのだろうと思い、大きくなった手でめくりにくくなった報告書をめくるとまだ捕まえられていないという文章が見えた。しかも、男が1人、女が2人追加されたらしい。そいつらは里まで登ってきており、昨夜は夜襲を仕掛けようとしたのだが、失敗したという部分まで読んで俺はそんな無能なリーダーを握りつぶした。


 「おい!ゴブリンども!出てこい!」


 俺が怒鳴ると3体のゴブリンが現れた。ぶるぶると震えている。そうだ。こんな感じに震えてくれないといじめ甲斐がない。そう。康夫みたいに。ああ。殺すんじゃなかったな。いじめる対象がなくなっちまったからな。最近は退屈すぎる。


 「こいつはどういうことだ?乞食ども。」

 「ドウモコウモアリマセン。我々ノ手ニハ負エナイ化物ナンデス。」

 「あ?それはお前らが必死じゃないからだろうが。よし。わかった。突撃しろ。」

 「…アノ?本当二突撃シナケレバナラナイノデスカ?」

 「こちらからも増援は出す。安心しろ。」


 ゴブリンたちはうなずいて下がった。ああ。言い忘れてしまった。後ろからは仲間も殺してしまうような俺の息子が迫ってくるから、さっさとその侵入者を殺さないと死んでしまうよと。さてさて。そんな些細なことは気にせず、息子たちに進撃させて、小峰に連絡しておこう。侵入者が4名いる。そいつらを捕えて犯しますって。ああ。どんな声で鳴いてくれるかな?先にあそこにまだ犯さないでいる女の子を犯そう。


 グヘヘと笑いながら、森本はその部屋を後にした。



 その頃、小峰の命令でモルガンダンテスの研究を解析していた米山は吸血鬼の屍族化を促す薬の調整に成功していた。そして、彼はその薬を持って間宮が潜んでいる、王国のすぐ西にある町に来ていた。この『ザイフィード』と呼ばれる町は西側の通商起点になる場所であり、宿場や馬借の場所として発展していた。直樹たちの村である『アルバレスト』は南の方角にある村なのだが、その村にも『ザイフィード生まれの馬』が数匹いた。そんな町のはずれにある森の中の館に間宮はいた。


 「ここがあの男が隠した『陰湿な館』ですか。全く。こんな暗い場所に住み続けられるなんて、彼女はどこまで根暗になってしまったのでしょうかね?」


 米山はそう呟き、館の玄関の扉を叩いた。しかし、応答は当然のごとく返ってこない。

 仕方ないので、彼はその館の中に入っていった。


 館の中はほこりまみれだった。

 人が生きているようには全く見えなかった。

 しかし、誰かが暴れていたような痕跡もなく、誰もいませんと言われても信じられるような状態だった。


 「…誰?」

 「久しぶりだね。米山だよ。魔王が代替わりしたのにあいさつに来ないから、心配になって来ちゃった。元気にしていたかい?」

 「…モルガンさんは?」

 「ん?ああ。彼がキミに食事を与えていたんだっけ?彼なら死んだよ。1か月前に。」


 それを聞いて間宮が上から降りてきた。彼女の肌は真っ白で血の気が失せている。食事ももう1か月はしていないのだろう。がりがりにやせ細っていた。


 「何の用?私の様子を見に来ただけなら帰って。」

 「…食事もしてないみたいだね。」

 「できないのよ…私は月明かりでも皮膚が焼けちゃうんだから。」

 「そうか…その体質、解決してみない?」

 「え?」

 「この薬を服用したら、もしかしたら治るかもしれないんだ。」

 

 その言葉を聞いた瞬間、彼女の表情が明るくなった。


 「でも、この薬を飲んだら、今迄みたいな生活はできなくなるよ。」

 「外に出られるなら、そんなことどうでもいいわ!早く頂戴!」

 「なら、約束してくれ。体質が改善されたら、僕たちの計画に協力すると。」

 「もちろん、どんなことでもするわ!」


 その言葉を聞けた俺は彼女にあの劇薬を渡した。『冷徹なる貴婦人』と呼ばれるこの薬は『トリカブト』、吸血された人を恍惚状態にしてしまう毒を持つ深紅のヒル『ブラッティーチ』、太陽光を浴びると巨大化し、残虐性が増す『デッドアーケロン』の甲羅を粉末になるまですりつぶしたものにゾンビの腐った肉をぐちゃぐちゃにした液体を加えたものだ。それを飲めば、すぐに彼女の体は拒絶反応を起こし、俺たちの仲間になる。


 案の定、飲み終わってから数秒後、彼女は悲鳴をあげながら両膝を抱え、頭を押さえていた。淡い茶髪は一気に真っ白に変わり、肌は若干、色が戻った。うずくまること30秒ほど。彼女は立ち上がった。その瞳は深紅に変わり、犬歯は口を閉じているにもかかわらず、隠しきれなくなるほど伸びていた。


 「これはどういうことかしら。すごく痛かったんだけど。」

 「副作用みたいなものなんだ。申し訳ない…で、調子は?」

 「愚問ね。光を浴びても問題ないけど…喉が渇いちゃった。」

 「そうか…協力してくれる話は忘れてないよな?」

 「もちろん。でも、おなかがいっぱいになってからね。」


 彼女はそう言って真っ昼間であるにもかかわらず、館から出てしまった。

 それをもう少し観察してから小峰に報告しようと思い、彼は彼女の後を追った。


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