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『この滅び行く世界に祝福を』  作者: 早稲農家
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~康夫(魔族)編第三章~

 私はサフィラに乗って里を離れ、近くの森の中にあった村に下りた。私の大切な人はかすかにしか息をしていない。到着と同時にサフィラは力尽きた。エリーゼとマリエノは怯えている。ジャックはその村にいた親切な村長のおかげで診察を受けることができたが、その時にはもう手おくれだと言われてしまった。その晩、彼は亡くなった。

 彼は村の外にサフィラとともに埋められることになった。村の中にも墓地があったが、そこに埋めることは村のものでなければしないという決まりだったらしい。しかし、埋葬を手伝うことに関してはしてくれたため、彼が好きだった湖の近くに埋葬してもらった。

 それからは大変だった。村の仕事を手伝いながら、私は戦う術を学ぶことにしたから。ここを出られるようなお金を稼いでから大きな町に行きたいと相談したところ、狩りをその村に在住してくれた冒険者に教わってからにしたほうがいいという話になったからだ。私が選んだ得物は槍だった。エリーゼとマリエノを食べさせるためにお金を稼がないといけない。村長はそんなことを気にしなくていいと言ってくれたが、甘んじたくはなかったから。


 私の仕事は村で買っている鶏の世話。そして、実戦だった。村の近くにいる害獣、イノシシのような魔物や『コカトリス』と呼ばれる大きな鶏を討伐することが多かった。それでずいぶん慣れた私はあたらしいハンターさんといわれるようになっていたのだ。


 しかし、それも唐突に終わってしまった。私の里を襲ったゴブリンどもが今度はこの村を襲撃したからだ。村の外で採集を行っていた人、エリーゼとマリエノではない、を尾行していた個体がいたらしく、この場所がばれてしまったらしい。その襲撃の際、私は彼女たちを大きな町に避難すると言った村長さんたちに任せて先に出てもらうことにした。村に在住していたハンターさんは彼らの護衛としてついていった。私は迫りくるゴブリンの首をはねたり、その体を斜めに切り裂いたりした。でも、数が一向に減らなかった。私の防具は『コカトリス』の羽毛や翼膜を加工して作成したものだ。覆っている部分である両手首はそれに守られているが、足のほうは守られていない。ゴブリンたちもそれに気づき、次第にその部分を狙い始めた時だった。


 「あー。こいつがゴブリン軍団ってやつか。」


 村の入口に背中に剣をいくつも装備した白コートの男が現れたのだ。彼はその剣ではなく、腰に差していた刀を抜いて下段に構え、こっちに突進してきた。彼は私のすぐ隣を素通りし、炎を纏った斬撃で一匹を斬り伏せると切り返した際の一撃で数体をまとめて斜めに斬り裂いた。私はすぐ彼の後ろに移動し、その正面にいたゴブリンの心臓部分を突き刺した。彼はその動きに何か言いたかったようだが、何も言うことなく刀を中段に構えた。そして、そこから放たれた突きは風を纏い、その軌道上にいたゴブリンを串刺しにした直後、纏っていた風によって遥か後ろへと飛ばされていた。しかも、周りにいたゴブリンたちもそれによって発生した鎌鼬によって細切れになっていた。

 その途轍もない威力を目の当たりにしたゴブリンたちはこぞって逃げ始めていた。しかし、彼が何かを唱え始めた瞬間、背中に装備している剣が抜き放たれ、逃げているゴブリンたちに追いつき、歯車のように回転したのだ。逃げ道は一本道、前には自分たちを切り刻む剣が、後ろからは逃げる仲間と迫る鬼神。そこにいたゴブリンたちは瞬く間に全滅してしまった。


 「…助けに来てくれたの?杉野君。」

 「ギルドの依頼でな。でも、少し遅かったみたいだ。大丈夫か?守宮さん。」

 「ええ。ここに来るまでに馬車とすれ違わなかった?」

 「それなら大丈夫だ。避難民として俺に同行していたギルドの助っ人が町に護送してくれてるはずだからな。で、守宮はどうする?できれば、一緒に王国に戻らないか?ここはいろいろと危険だし、今までどうやって生きてきたのか知りたいからさ。」

 「ごめんなさい。まだ、私にはやらなきゃいけないことがあるの。」

 「危険なことか?手伝うぞ?」

 「いらない。これは私が、私しかできないことだから。ああ。たすけてくれてありがと。」


 私はそう残して彼に背を向けた。すると彼は私を引き留め、一本の槍を手渡してくれた。

 

 「このさき、そいつだけだと危険だ。これは俺も使わないし、持って行ってくれ。」


 それだけ言って彼はまた村の入口に戻っていった。

 その槍は素晴らしかった。最初は今まで使っていた槍で戦闘していたのだが、ゴブリンの攻撃や肉を割いた時にできる刃こぼれによって『竜神の里』に到着する頃には使い物にならなくなっていた。しかし、その槍は相手の攻撃を穂先で受け止めるという荒業をしても全く刃こぼれを起こさなかった。その装備のおかげで私はここまで上がることができた。

 そして、里に入って間もなく、私は康夫君たちと再会したのだった。


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