~克己(竜騎士)編第三章~
少し短かったので連続投稿になりました。
その晩、俺は旅発つ準備をしているとその様子が気になったのか、菜々子が寝屋から見に来ていた。夜遅くだったために誰もいないような場所で彼女はランプを手にこちらまで来ていた。
「明日発つの?」
「もう一回、『竜神の里』に戻ろうと思ってな。」
「そっか。私もついていくからね。」
俺もそれに了承し、彼女の荷物も作ってあげた。
そして、翌日。
俺が『テイラー』に鞍をつけ、菜々子を一緒に背に乗せようとした時、見送りに来ていた直樹がそれを止めた。
「克己。それはさせないぞ。」
「菜々子を連れて行くなと?」
「そうだ。彼女はここにいるべきだ。こっちのほうが安全だろ?」
「…それもわかったうえで連れて行くつもりだが…文句あるのか?」
「そうだ。お前は2人の命を失うかもしれないんだぞ!」
「俺たちのことを気にするより、あいつの心配をしたほうがいいんじゃないか?俺たち2人が死ぬ確率よりもっと野々村が死ぬ確率のほうが大きいだろうが。」
その時だった。
『直樹君!しっかり伝えないとだめだよ。』と言いながら、みどりが現れたのは。
「克己君。私も菜々子を連れていくことは賛成できないよ。」
「お前も俺たち2人の命の心配か?」
「ううん。違うよ。菜々子は妊娠してる。」
空気が凍りついた。俺たちは何を言われたのかすぐ理解できなかった。
「今は何にも体に変化が起きてないけど、起きてからじゃ遅いんだからね。」
「妊娠?菜々子が妊娠しているのか?」
「…話についてこれてないみたいね。そうよ。妊娠してる。」
俺は戸惑いを隠せなかったが、彼女を抱くようにして『テイラー』から降ろした。
「菜々子、ごめん。ここにいてくれないか。」
「うん…妊娠は仕方ないね。待ってるから。」
俺は後ろ髪が惹かれるような思いで『竜神の里』に向けて飛び立った。
これこそが俺の旅の始まりで、この世界に移住し続けるきっかけになるなど知らずに。
克己(竜騎士)編第三章
完
これで克己編の第三章は完結です。
次は康夫編。復讐の物語になります。




