~克己(竜騎士)編第三章~
『正面検問所』は案の定、兵士たちが迫る国民たちに武器を向けていた。
どうやら、国民が逃げるのをここで食い止めているようだった。しかし、それも、『城壁』がかろうじて役目を果たしているために拮抗が保たれているような状態だった。
「国民を逃がすな!これは右大臣様の厳命だ!」
「右の検問所に関しては突破された模様です!」
「左の検問所には魔物を放ちました!」
「全兵力をここに集中させるんだ!」
命令がここまで聞こえる。もう聞かれても構わないと思っているのだろう。
でも、『城壁』が崩れたら、これが崩れるだろう。
『『テイラー』、盛大に破壊しろ。』
『御意。』
俺は城壁に飛び降りた。『テイラー』はすぐ空高く飛び上がった。『ドラゴン・ダイブ』で破壊してしまうつもりなのだろう。市街のほうを確認したが、戦闘らしき音は全くなかった。どこまで直樹は行ってしまったのだろう。そう思っていると『テイラー』の急降下によって城壁が見る影もなくなってしまった。兵士たちは流れる民衆によって城壁の外に押し出され始めていた。これなら、この国から逃げたいと思っている人なら逃げだせるだろう。そう思っていた時、左の門近くから誰かをおぶっている男が現れた。そのおぶられている人は各関節が機能してないのか力が抜けたようにぶらぶらしていた。
もしかして、あれが野々村なのか?
俺はそれを確認するために『テイラー』を着地させた。
「そこにいるのは杉野か?」
「…誰だ?」
「克己だ。平家克己。」
「克己?なんでここにいるんだ。」
「頼まれたんだよ。直樹にさ。で…その無残な姿なのが…野々村なのか?」
「…乗せられるか?」
「たぶん問題ないが…揺れるぞ。」
「かまわない。落ちないようにできるか?」
俺はうなずき、彼女を『テイラー』の背中に固定した。『テイラー』は彼女が危ない状態だとすぐに判断したようだった。
『すぐに発たないのか?もたないぞ?』
『わかってる。でも、もう少し待ってくれ。』
そう言った時、直樹が走ってこっちに来た。
「直樹!無事だったんだな。」
「それよりもさっさとここから抜けるぞ。早くまたがれ!」
直樹の扇動によって杉野も『テイラー』にまたがった。
『テイラー』が空に飛び立つと杉野が口を開いた。
「なあ、瀬戸はどうしたんだ?」
「…したよ。」
「え?」
「殺してやった。あの野郎…よりによって俺の息子の話をしたからな。」
その顔は見なくてもわかる。きっと暗い顔だ。あいつは…待てよ?
一人足りないじゃないか。
「直樹。お前の息子は?どうしたんだ?」
「…あいつからは連絡なかったのか?」
「おまえ!おいてきたのか?」
「いや。あいつは少し王国に残るそうだ。どうしても助けたい子がいたらしいからな。」
「助けたい子?」
「幼馴染の槍使いらしい。現場であって少し気になったから、先に帰ってくれと。」
「…お前、よかったのか?」
「…大和でもアイツは殺せないよ。あいつの一番得意なことは隠密行動だからな。」
それだけ話すと直樹は彼女の治療を始めていた。これ以上話すのは彼女の治療に専念してもらうためにもよくないと思い、俺は少しだけ『テイラー』を急かした。




