~克己(竜騎士)編第三章~
「ええい。何をやっている!ここは貴様らの命よりも尊いものがたくさんあるんだぞ!」
司祭らしき男がわめいている。そいつにも炎をお見舞いしたくなったが、そこは自制した。眼下には『宝物庫』を鎮火しようと教会の神父らが消火活動をしていた。しかし、何があったのだろう。一部の宝物庫はさらに炎が激しく燃え盛っており、消火不可能なほどに炎が大きくなっていた。もしかして、火薬庫だったのだろうか。その近くにいた司祭は頭を抱え、うずくまっていた。その時だった。下から矢が飛んできた。『テイラー』の翼のはためきでそれは落とされていたが、まだ抵抗する奴らがいるようだった。
「奴を逃がすな!あれは王国を滅ぼす悪魔の手先だ!」
先ほどわめいていた司祭だろうか?『宝物庫』によっぽど大切なものが入っていたのだろう。部下の教会員に武装させてこちらを攻撃していた。そんなに強くない攻撃のために『テイラー』も憐れんでいる。
『いっそのこと、鎮火できた『宝物庫』も破壊しないか?』
『ひどいこと言うなよ、テイラー。』
『これは我ら、竜に対する冒涜だ。こんな攻撃で我が落ちるとでも?』
『まあまあ。知らないんだからさ。』
『それで済まされると思ったら、大間違いだ。』
…着火した。『テイラー』は急加速し、雲の上まで来た。呼吸がしづらくなるが、俺は我慢する。その場所から弾丸のように回転しながら、落ちていく。このタイミングで俺は手綱から手を放した。俺が落ちるよりももっと早く落ちていく彼は自分の体で風の弾丸を作ることになる。それを衝突する数メートルで停止することで纏った風を衝突予定地点へ放つという的確なピンポイント爆撃を行う。これが『ドラゴン・ダイブ』という技だった。
その爆心地となった『宝物庫』は跡形もなく消えた。さっきまでわめいていた司祭は完全に意気消沈していた。俺は『ドラゴン・ダイブ』を放った『テイラー』に回収される形でまた騎乗していた。
「さて…次の場所に向かうか。」
そう言いながら、そのターゲットがある方向を向くとそこは既に火の手が上がっていた。
どうやら、市民の暴動らしい。町の各地でも火が上がり始めていた。
俺が到着した時にはもう『貴族院』はすでに火の海の中にあり、その中に子どもがいた。
『おかあさん!熱いよう!』と窓から叫んでいる。『テイラー』はすぐ俺の気持ちを察してくれて、窓の近くまで近づいた。少年は驚いていた。
「少年。飛ぶんだ!」
俺が飛んできたことに驚いたようだったが、彼は窓から飛び出してきた。
それを受け止め、頭をなでながら、『テイラー』とともに着地すると彼のお母さんだろうか?女性が一人、こちらに駆け寄ってきた。
「ああ…ありがとうございます。」
「ここは危険だ。なるべく早く離れたほうがいい。」
「そうですね…でも、私たちの主人が戻るまではここにいます。」
「…早く戻るといいな。」
俺は『テイラー』に飛ぶように指示した。あの家族はきっと逃げてくれる。
そう信じて俺は彼らが逃げられるように『正面検問所』に向かった。




