~康夫(魔族)編Prologue~
今回は少し長いです。
「何てことするのよ!」
「あ?魔物になれないごみはあれでOK。ああ。お前はまだ魔物じゃないからわからないんだよ。モルガン様。さっさとこの女をカプセルの中に!」
私は巨大な手に掴まれ、全く身動きが取れないまま、カプセルの中に入れられた。
「康夫君!きっと助けに行くから!」
私はそういいながら、意識がなくなるまでカプセルを何回も叩いた。
憎しみがあったからだろうか。施術が終わった後、私がまず思い出したのは森本への怒りだった。魔物と化して私はより一層康夫君に危害を加えていた面々や助けなかったクラスメイトに対しての殺意が芽生えていた。解放感など一切なかった。
「…気分はどうかね?ヤガミハルどの。」
モルガンは申し訳なさそうな顔をしていた。私が睨むとその視線から何かを感じ取ったのか。すぐに私に背中を向け、そのままの状態で念話してきた。
『彼を助けてあげよう。私が知っている方法で。それしかできない私を許してくれ。』
私は信用するつもりは全くなかった。でも、私がどうやら他の奴らとは違うとすぐわかっていたようで彼は他のメンバーをいなくならせた後、妖精を召喚していた。
「妖精よ。この先にいるはずの命の灯火が尽きかけている少年に祝福を与えてくれ。彼は殺されるわけにいかないんだ。」
妖精はうなずき、すぐその奈落の穴に入っていった。
「なんであんなことをしたのかしら?」
「…私のエゴですよ。私も魔王から名前をいただく前は人の名を持っていましたから。さて。彼はきっとこの先、ここに戻ってきます。最後の舞台にいた二人から邪な気配を覚えたんだ。その彼らに匹敵する日からを得られるのは彼だけです。」
「なんでそんなこと言えるの?」
「この結果があるからですよ。」
彼が見せたのは彼の能力値の測定結果だった。彼の基本能力値は最も低いレベルなのだろう。軒並み2桁だったが、最後の数値だけは100とぴったりした値だった。
「これは?」
「魔力適応度と呼ばれるものさ。我々の魔力を循環させやすいほど高位の魔物に代わる。キミの値は75。最後の彼でも70だ。彼はもっと高いのだからあの場で魔物に代わっていたら、最強の魔物になっていただろう。でも、彼らはそれを許さなかったはずだ。わかるね?」
「…でも彼は結果としてあの穴の中に落ちてしまったのよ。」
「そうだ。だから、私は命の灯火を付け直せる種族であり、すでに絶滅してしまったとされている『フェアリー』を私の部屋から呼び出し、彼を救うように頼んだのだ。あの子はきっと彼の命を繋ぎ止めてくれるはずだ。心配なら、しばらくここにいなさい。キミが『リリム』としての能力を使えば、新たな魔の息吹を感じられるはずだ。感じられたら、そのことを伝えてほしい。」
私は信じるつもりなんかまったくなかった。でも、その可能性があるのならと思うと動けなかった。そうして、5分ぐらいした頃、新たな命の息吹を感じ、それが彼だとなんとなくわかった瞬間、涙が止まらなくなった。