~克己(竜騎士)編第三章~
「そう。あなたは助けを求めに来たのね。」
マンドラゴラの女の子、キララはうなずいた。彼女は自分たちが住む魔の森に屍族と名乗る連中が現れ、侵攻してきたと話していた。進行によって森の守り神は死んでしまい、森は屍族によって変わり果ててしまったそうだ。しかし、その森の真ん中あたりにはまだ侵食されていない場所があるらしく、そこにいるアルラウネが浄化し続けているそうだった。彼女は人里に来て誰かに助けてもらいたかったらしい。ぶつぶついっていたのは人にモノを頼む際の言葉を考え、暗記していたモノだったそうだ。
「ってことは…戦うの?」
「そうね。実戦は経験したことないけど…待っていられないもの。」
「…『ティア』は?少し話したいんだけど。」
「もう寝てしまいました。」
「…移動手段は?」
「馬車ね。手配できたわ。」
私は覚悟した。目次さんを助けるためにも私たちでなんとかしないといけないと。きっと攻撃しないといけない瞬間もあるだろう。弓道部だったから、軽量の弓ぐらいなら扱える。そうなったときはそれであの魔物どもを撃つしかないと。そんな時、酒場でいち早く剣を抜いた人がやってきた。
「傭兵として雇われた…フロントアタッカーは俺だ。ここにいる2人が同行するのか?」
「道案内はあの子にさせる。でも、これは私のわがままよ。」
「気にすんな。準備はいいか?」
「私、武器がないの!」
「どんなのがいい?」
「弓。それなら使えます。」
「よし。俺がとりに行く。2人は先に馬車に向かってくれ。」
私たちはうなずいた。今夜出発したら、到着は明日の昼。危険を顧みないで進行することになるため、道中で襲われる可能性も考えていたら、寝ることなんてできなかった。
道中で襲ってくる魔物はいなかった。魔物は既に狩られていたのか行く先々で死骸が転がっていた。森の近くに差し掛かった瞬間、オークのような魔物が出てきた。しかし、左目は腐っており、体のいろんな部分がこそげて肉が見えていた。
私は矢をつがえ、その頭に穿つ。直撃した。でも、血は出ないし、動きも止めなかった。
よくみると体の肉のあたりから白い指のようなものがぽろぽろと落ちている。どう考えても生きているようには見えなかった。
『あれ…屍族になった森の住人。』とキララちゃんが言った。
『有効な攻撃手段は?』と傭兵のおじさんが言う。
「ないよ。炎は効いたみたいだけど、他の魔法は効かなかった。」
「おいおい…冗談だろ?」
話している間に森のほうから何体ものオークの死体が出てきた。
こちらに気づいているかもしれない。そう思うと足がすくんでしまった。
「私が一人で行けば何とかなるかしら?」
「無茶だ。」
「…それでも私は行くわ。キララちゃん。案内できる?」
みどりの言葉にキララちゃんはうなずいた。こんな小さな子が勇気を出して頷いたのだ。
私も何か彼女のためにしたかった。
「なら、私は彼女を連れて行くよ。」
「菜々子…でも、あなたはダメ。」
「行くって決めたから。」
その瞬間、傭兵のおじさんが私の袖をつかんだ。顔を横に振る。
「嬢ちゃん。死ぬぞ。」
「…そんなこと、言われなくてもわかります。でも、やらないで後悔するのはもっといやなので、止めないでください。」
「…そうか。そこまで言われたら、仕方ないな。俺はこれをいつでも動かせる状態にしておく。タイムリミットは夜明けだ。いいな?」
私たちはうなずいた。私はなんとなく、彼女を夜明けまでに助けられなかったら、手遅れになる気がしていた。だから、それに違和感を覚えることはなかった。




