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『この滅び行く世界に祝福を』  作者: 早稲農家
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~克己(竜騎士)編第三章~

 私、橋都菜々子はその村に到着するな否や見知った顔、鷺宮みどりとの再会に思わず抱きついてしまった。彼女はこの村の村長である直樹君のお嫁さんになっていた。結婚式やそれに準ずる行為はしていないみたいだったが、その村で『アルケミスト』としていろんな薬を作ったり、開拓に協力したり、自分の果樹園を管理したり、彼と引き取った家族にご飯を作ったりと忙しそうだった。彼女はそれに慣れてしまい、新しいことに挑戦したいと話していたが。

 だから、私はあのお酒のレシピを渡した。彼女はそれを見てすぐ製作に取り掛かったのだ。私は彼らが野々村さんの救助に向かっている間、それを手伝うことにした。彼女の魔法によって発酵・熟成の速度はほとんどないに等しかった。工程は原料を蒸す、果汁を搾る、発酵・熟成という3つだ。そこまで最後の工程に多くの時間がかからないため、2人が野々村さんを救出し終わるまでに試作品ができそうだった。

 彼らが飛びだった初日、私は果実の収穫を手伝った後、それらを蒸している間、アリサちゃんに騎竜のやり方を教えていた。彼女は呑み込みが早かった。上昇、飛行、下降に着陸。1日もかからず、それらがスムーズにできるようになっていた。

 その日の晩、蒸したいくつかの種類の果実を搾り、それらを混ぜた果汁を樽に詰め、納屋に運び込んだ。そこで一括管理して発酵を行うらしい。それに関してはすべてみどりが行うらしい。彼女はそこに全部運び入れた後、何らかの魔法で発酵・熟成のスピードを促進しているようだった。そのため、私は何もすることがなくなってしまった。

 だから、酒場に来ていた。私が入るとレベッカちゃんがこっちに来た。


 「あれ?菜々子さん。こういうの、大丈夫なんですか?」

 「大丈夫?どういう意味かしら?」

 「…お母さん、ここには来ないんですよ。こういうがやがやしたのが嫌みたいで。」

 「そうなんだ…で、オススメは、何かあるかしら?」

 「今日は『ダンゴナマズのかば焼き』です。それにしますか?」


 私は彼女に『それでお願い。』というと彼女は耳をヒクヒクさせて『マスター!おすすめ1丁!』といって台所のほうに戻っていった。あんなかわいい子が娘といえるあの子が少しうらやましくなっていた。そんな光景を見ながら、周囲を見渡していると目深にフードをかぶった少年がなにやらぶつぶつと言っていた。その子をよく観察していると何かに向けて話しているようであった。


 「あなた…何をしているのかしら?」

 

 そう声をかけた瞬間、ビクッと全身を震えさせてこっちを見てきた。

 そして、気づいてしまった。この子、人間じゃない。


 「あれ?菜々子さん?その子がどうかしたんですか?」

 「この子、魔物?」


 レベッカちゃんが席を移動していた私にそう言い、私が応じて返した瞬間、近くにいた男性が剣を抜いた。その切っ先はその子に向けられていた。

 

 「魔物だ?そのフード外してみろ。」

 「い…いやだ。」


 それは確かに女の子の声だった。その声を聴いた瞬間、その男の人は剣を納めた。


 「なんだい。魔物じゃないじゃないか。悪かったな、嬢ちゃん。」

 「え…私、しゃべれるけど、魔物だよ。」

 「そうか?魔物ってのは意思疎通ができない化け物のことを言うんだ。嬢ちゃんは違うじゃないか。」

 「一緒だよ…見てよ!」


 彼女が下ろしたフードの下からは見事な大きさと華やかさを兼ね備えた花が咲いていた。


 「…マンドラゴラかい?驚いた。」

 「マンドラゴラ?森の奥に住む魔物じゃないのか?」

 

酒場の各場所からそんな声が聞こえてくる。一部の人は彼女を完ぺきに狙っているような視線を向けていた。これはまずいと思った時だった。


「いい加減にしな!子どもに対して何てことしてんの!」

「この件は私、八神みどりが預かるわ。興味本位で首を突っ込まないこと!」


道具屋のおばさんとみどりちゃんがやってきた。みどりちゃんはなぜか、彼女のことをじっと見ていた。そして、彼女のフードをかぶせ、『何か事情があるみたいね。おうちで話そうか。』と優しく語りかけたのだ。道具屋のおばさんはさっき剣を抜いた人と話していた。


みどりちゃんは彼女を酒場から出してこう言った。


「レベッカ。菜々子のごはん、テイクアウトで。菜々子。あなたには最後までかかわってもらうからね?」


私は何か厄介ごとに首を突っ込んでいたことにその時、気が付いた。


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