~直樹(帰還者)編第二章~
今回は長いです。
バトルシーンは苦手かも…。
最初に討伐することにしたのは『ナウマンベア』。毛むくじゃらの熊だ。その毛に妨害され、斬撃が通りにくいのだが、俺には関係なかった。そいつの目撃情報があった場所に向かうと蜂の巣を破壊し、うまそうにその蜜を口に運んでいた。俺は抜刀しながら近づいた。熊の奴も俺に気づき、立ち上がって威嚇したが、俺の尋常じゃない殺気に身の危険を感じたのだろう。でも、もう遅かった。
「奥義『臥龍紅蓮閃』」
『臥龍』で近づき、そのまま刀身に炎を宿らせた状態で右肩から斬り下ろした後、もう一歩踏み込んで胴体を薙ぐ。斬る軌道上の斬撃は炎によって焼け落ち、そのまま斬撃が通るのだ。そうして、背中側の毛皮は無事なまま、その熊は絶命した。相手にとって弱すぎるが、討伐の証拠である熊の爪を全部落とし、毛皮をはぎ取った後、俺は次の依頼の場所に向かった。
次の依頼は『リクナマズ』。王国の近くの沼に水陸両方で生活できるモンスターだ。こいつは正直、全く害をなさない。害を起こすとしたら、沼での漁業ぐらいであり、そんな仕事はない。そのため、こいつの討伐はめったに出ないのだ。が、その外皮は使い道がある。水を弾くため、そういう使い道ができるように討伐しなければならなかった。
「奥義『牙突絶風衝』!」
この技は突進しながら放つ、風を纏う突きなのだが、あとから渦を巻くような真空波を放つ。命名したのは京子だった。威力のメインはその真空波であり、その通り道は旋風によってバラバラになる。そんな技を俺はリクナマズの口の中に放った。その直後、そのおなかが膨れ上がり、首の真横にある鰓から盛大に血をふきだして死んだ。俺はその四肢を斬り落とし、使える部分の皮を50センチ四方で数枚に分けて切り取った後、それを重ねてショルダーバックに入れた。
残る標的は『ベノムノクシャーシャ』と『デッカードラゴン』。前者は毒の霧を出す四足の魔物だ。後者は巨大なワニだ。どちらも斬撃、魔法双方に耐性があり、一人では倒せるような魔物じゃなかった。でも、俺はそれをやってのけなければならなかった。
先に倒すことにしたのは『デッカードラゴン』だった。こいつが現れると周辺一帯は立ち入り禁止となる。人の子どもも食べるし、家畜はもちろん、大の大人も喰われかねないからだ。武器は二つ。巨大な顎と巨木のような尻尾だ。俺は太刀を構えた。本当なら、ここに魔法使いの援助があるといいのだが、そんな甘いことは言えなかった。騎士団の連中もここには近づかないし、勇者の連中もこいつは相対しないだろう。そんなときだった。デッカードラゴンの頭が巨大な水塊に潰された。デッカードラゴンは怒り狂っている。巨大な川で水を飲んでいたデッカードラゴンを人魚が攻撃していたのだ。
あっちに気を取られている間に俺は近づき、『刹牙』という素早く上下から斬りつける技でうろこを一部はがした。その瞬間、奴はこちらに注意を向け、俺にかみついてきた。素早く回避し、出方をうかがう。人魚はこちらの様子をしばらく観察し、スイカくらいの大きさの水の塊を3つ出した後、そこから水圧カッターを放った。ちょうど、俺をかみ砕こうと顎を開いてこっちに飛びかかっていたタイミングであったためにそんな攻撃が来ていたなんて思わなかったのだろう。奴のしっぽは宙を舞った。人魚はすぐこっちに突進してくると思ったんだろう。すぐ水中に潜っていった。奴も潜っていったと思って追いかけていった。しかし、いなかったのか、深くまで潜っているようだった。
「おー。あいつ、やっぱり、探してるんだ。頭いいね。」
俺の隣に人魚がいた。彼女は水からもう上がっていた。俺は無言のまま、『鳴子』を発動し、川の水に電撃を流した。ガラスを粉々に砕いているような音を立てて流れる電撃にデッカードラゴンは感電しているようだった。その際に貯めていた空気を放出してしまったのだろう。電撃が流れなくなっても浮いてくることはなかった。
「よ。元気だった?」
「森下だよな?その恰好は…コスプレか?」
「あはは…そうなるよね。でも、残念。違うよ。」
「何があったのかを聞きたいところだけど…時間がないんだ。」
「どうしたのさ?深刻そうな顔してるよ。」
「京子、野々村が大和たちに殺されそうなんだ。」
「あちゃ…で、どうしてこんなところに?」
「協力の代わりに魔物の討伐を引き受けたんだ。後、一体。毒を吐く四足のドラゴンと戦わないといけないんだ。」
「…手伝いたいけど、この足じゃいけないから、その毒は何とかしてあげる。」
そう言って彼女はへその一枚しかない逆鱗を抜いた。『ん。』って声をあげている時点で痛かったのだろうと思ったが、そんなそぶりも見せず、それを水の弾で包んだものを渡してきた。渡された瞬間、それは中心に彼女の逆鱗が入った六角柱の水晶に変化した。
「それなら、状態異常を気にしなくて済むはず。出血大サービスだよ!」
「へそ…大丈夫か?」
「あれ?心配してくれるんだ。でも、大丈夫。すぐ生えるから。じゃ、またね。」
森下は手を振ってまた水中に戻っていった。俺は偶然の再開で少し勇気をもらえたようだった。そして、それを懐にしまい、『ベノムノクシャーシャ』が最後に目撃された場所に向かった。
そこはもう何もない場所になっていた。その四足の魔物が放つ猛毒によってすべてが腐り、消えてしまったのだ。奴が放つ毒は腐食性が高い液体だ。そのため、刀で受けたとしても刀身が溶け、その後に影響が出てしまうため、最悪の相性としか言えない魔物だった。
だから、ここはいつものスタイルにすることにした。『剣聖』は使う得物を選ばない。バックからは伸縮自在の槍を2本取り出し、一本を伸ばしておき、もう一本は腰に差しておいた。そして、自分の背中には直剣を4本差し、刀はしまっておいた。槍を使うのは久しぶりで心配な部分が多かったが、そんなこと気にしている暇なんかなかった。奴はまずその液体を飛ばしてきた。でも、俺はその軌道にはいない。素早く横に跳んだからだ。しかし、奴はその飛んだ先にも毒を吐こうと身構えていた。仕方ないので、俺は背中にさしてある一本を手にしてそれを投擲した。その剣は鼻を貫通するようにして顎下まで貫き、その液体をそのまま口の中にとどまるようにした。雄たけびも上げられない状態にし、俺はすぐ首元に飛び込み、数回突いた。しかし、うろこの部分しか削れなかった。それに反応し、奴は右足で俺を潰そうとしてきた。竜も人と一緒で腱の部分には毛が生えていない。踏みつぶす瞬間に俺は足元に潜り込み、その無防備な腱を、持っていた槍を振り回して斬った。もう穂先はボロボロだった。それを確認した俺は奴の首にのぼり、そのボロボロの武器を頭に突き刺した。肉を貫くような感覚の後、『ガキン』という金属音がした。奴は首を振り、俺を吹っ飛ばした後、無傷な左前足で俺を潰そうとした。しかし、そのまま態勢を崩し、そのまま地面に転がった。起き上がる前に俺は背中の剣でその足の腱を切り裂き、一旦離脱した。その竜は俺を殺そうとまだあきらめてなかった。しかし、それは無残な結末を迎えた。その竜が最後にやったのは酸を吐くことだった。それを森下がくれたお守りは弾き返したのだ。その酸をまともに浴び、その頭蓋骨は溶けきってしまった。
「これは…森下に感謝だな。」
正直、ここまでのお守りだとはこれっぽちも思っていなかった。




