~直樹(帰還者)編第二章~
ついに彼は王国を裏切ることを決意します。
俺は悔いていた。俺はあいつらがどんな奴らだったかを忘れていた。京子の『投獄』。罪状は『勇者たちに対する裏切り行為』。それが意味すること。それは重々承知だった。京子が殺されるかもしれない。そう思った俺は彼女がどこに収監されたのか、そこに侵入するにはどうすればいいかを調べるためにショルダーバックに愛刀を入れ、冒険者センターに駆け込んだ。
「いらっしゃい。おや?あんたは。」
「…情報を売ってほしい。」
「あんたなら、知りたい情報を貴族の奴らから聞けるんじゃないか?」
「…大和たち、他の勇者に知られるわけにはいかないんだ。」
「…いったい何の情報だい?」
「『魔剣』、ノノムラキョウコが収監された場所とそこへの侵入ルートだ。」
「そいつは…こちらへの見返りは?」
「俺ができることなら、何でもする。だから!」
「そうがっつくな。誰もその情報をやらないとは言ってない。」
「何をしてほしいんだ?」
「うむむ…いくつかあるんだけどいいかい?」
「任せてくれ。」
「三つある。一つが『クロスウェイ』の村長に連絡を取ること。二つ目がこの町に溜まっている依頼、騎士団たちが放置している大型の魔物の討伐。こいつは4件ある。最後はあんたが冒険者になることだ。もちろん、最後の奴に関しては各地に移動する、冒険者の中でも『遊撃隊』と呼ばれるものになってもらう。彼女を助け、この国を出るんだろう?キミの友人のせいでこちらは人員が足りないんだ。」
「何かしたんだな。申し訳ない。おれは…」
「キミのせいじゃない。どうだい、やってくれるか?」
「もちろんだ。そうだ、処分してほしいものがある。」
俺は右大臣が『剣聖』にふさわしいとして王国のシンボルカラーである白銀のコートを俺に贈呈し、『剣聖』として活動するときはそれを着用するように言われていた。でも、もう二度とその活動はないだろう。京子に手を出した時点でもうそれはない。そう。もうないと分かっているから、俺はそれを捨てることにしたのだった。
「待て。インナーだけでいいのか?」
「この4体なら。京子が頼んできたことがあるやつだからな。」
そう言って、俺はショルダーバックから愛刀を取り出し、インナーとジーンズのスタイルで腰にそれを差した。
「これで俺はもう『剣聖』じゃない。」
「…依頼、よろしくお願いしますね。」
俺はうなずき、すぐ依頼に取り掛かった。実は『クロスウェイ』から来ている行商人とはよく直接商品を買うくらい顔見知りだった。そんな彼なら、『『クロスウェイ』の村長にこの手紙を託してほしい。』と言えば引き受けてくれると思っていた。俺は手紙を書き、いつも彼が露店を開いているところに向かう。そこには王国の騎士たちが彼を尋問するために集まって彼を囲んでいた。
「ですから、何も知りません。王様を殺した犯人のことも!」
「言い訳は無用。王国の幻の果実、『アグリア』を扱っている時点で犯罪なんだよ。」
「なぜです!これは正規の方法で私が村から仕入れた品物だ!」
「ひっとらえろ!」
商人が両手を縛られた瞬間に俺は飛び出し、その騎士の腹部に拳をねじ込んだ。
近くにいた騎士は異常に気づき、俺を殺そうと剣を抜く。でも、それは遅すぎた。俺の後ろ蹴りがそいつの顔面にヒットし、そいつは宙を舞った。そして、俺は振り返りながら、刀を真横に振る。それだけであいつらが構えていた剣は真ん中から断ち切られた。その瞬間に奴らはパニックになる。逃げてくれるようだったから、俺は追わなかった。
「ローウェン。大丈夫だったか?」
「…その恰好ということはスギノ様ってことでいいんですよね?」
「『様』もつけなくていいけどな。一つお願いがある。」
「もったいぶってなんですか?」
「『クロスウェイ』の村長にこの手紙を渡してほしい。」
「彼…ナオキさんにですか?」
そう。俺は『クロスウェイ』の村長が直樹、八神直樹だと知っていた。京子がその日の晩にあったことを語った際に生きているかどうかが気になった俺はその村の偵察に来ていた。その際、この行商人が大きなクモに襲われていたのを助けたのが出会いの始まりだった。そして、俺は彼から村長の名前を聞いていたのだった。
手紙には『京子が大和たちに投獄された。いつ死んでもおかしくない。助けてくれ。』と書いてある。それを読めば、きっと来てくれると思っていた。
俺は彼と一緒にこの国を出国し、そこで別れた。




