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『この滅び行く世界に祝福を』  作者: 早稲農家
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~直樹(帰還者)編第二章~

俺が追っているとその先で彼女の悲鳴が聞こえたのだ。それで何かが起きたと思った俺は『アクセル』の魔法で加速した。彼女のお気に入りだったロングスカートが破かれ、彼女の胸が露わになっていた。その胸を揉みし抱こうと手を伸ばす男の姿が見えた。その顔は見たことがあった。俺はその状態のまま、その顔面に蹴りをヒットさせた。


「…保木。てめえ。そういうやつだったんだな。」

「あんた、誰だ?あったことあるか?」


俺はその質問を無視し、彼女を拘束していた土の魔法を解除して、俺は彼女に自分が羽織っていたローブを着せた。一応、これで隠せるはずだ。


「今日の採取は中止だ。みどりにこのことを話して先に避難しろ。」


アリサは涙を流しながらうなずいた。

保木さとる。少女嗜好があるとは聞いていたが、アリサに手を出したこと。後悔させてやる…いや。その程度で終わらせるわけにはいかなかった。


そりゃわからないだろうな。俺は指名手配犯だ。顔は変えさせてもらっているよ。


「俺の神聖な行為を邪魔したこと。後悔しろ!」


そいつはすぐ石の槍をいくつも召喚し、俺に向けて発射した。でも、俺はそれを逆にコントロールし、四つん這いになっている保木の両手足に4本還してやった。悲鳴が上がる。俺はその程度では収まらないほど怒りが募っていた。まだ俺の手には12本の槍があった。


「さてと…神聖な行為だって言ったな?何が神聖なんだ?」

「俺のことを知らないでやってんのか?俺は勇者だぞ?こんなことしたら!」


俺は槍を一本、右ひざに打ち込んだ。またわめいた。


「もう一度聞く。何が神聖なんだ?」

「…勇者の子どもをはらめる機会をあげたんだよ。」

「そうかい。それが神聖な行為なんだな。」


俺は槍を一本、今度は左ひざに打ち込んだ。


「なんで…なんでこんなことするんだよ。」

「なんでだ?てめえのことだ。何人にもこんなことしてたんだろ?」


俺は変装を解き、そいつの顎を掴んで俺の顔がよく見えるようにあげてやった。


「…八神だと?」

「お前の性格上、こんなことは何回もやらないとできないからな。悪いけど、あんたはここで死んでもらう。ああ。でも、俺は手を下さないことにした。何とか自分で生き延びられるといいな。」


俺は森の奥からこの森に潜む『カゲ』と呼んでいる巨大サンショウウオ、『ノマズナマズ』が来ていたことに気づいた。アリサの悲鳴にひかれたのだろうか?こいつは物理耐性が高いうえ、魔法は効かない。そんな魔物が彼の頭のあたりまで来ていた。あまった槍は消失させた。こいつに丸呑みされるなら、俺は手を下す必要はなかった。じっくり胃液に溶かされてもらおう。もう。あいつの悲鳴は聞こえなかった。


その日の夕方。俺と剣をまともに触れるアイザックという男性で帰ってこなかったカインたちの捜索に向かった。カインたちのルートは前もって決まっており、そこを何人かで決まった曜日に巡回していた。そんなルートをたどっていくと俺は感じ取ってしまった。毎日のように感じ取っていた息子のマナを。放出されるはずのないマナを。覚悟を決めてその方向に行くと息子、カインが木に四肢を固定された状態で放置されていた。俺は膝から崩れ落ちた。『誰の仕業なんだろう。』という疑問よりも『なんでカインが…』という気持ちで一杯だった。そんなに時間がかかることなくアイザックの慟哭が響いた。おそらく、相方だったカンタも死んでいたのだろう。俺は悔しさでいっぱいになりながらも、息子のことを固定している剣とその耳と額に刺さっているダーツを抜いてあげてから、そのもう硬くなり始めたからだを背負って村に戻った。


その翌日の行動はほとんど覚えていない。みどりと俺はずっと泣いていた。実はみどりのおなかには新しい命が宿っていた。それを俺以外に知っていたのはマナの把握がよくできたカインだけだった。そんなあいつは『じゃあ、もっと兄さんらしくしないとな!』と言っていたのだ。それなのにこんなところでこんな形で命を失ってしまうなんて俺もみどりも信じられなかったのだ。レベッカとアリサもずっと泣いていた。唯一、アルドラントだけは翌日、朝一で10キロ離れた町に向かうと言って村を出て行ってしまった。あいつのことだ。俺が考えていることにつながることを調べに行ったのだろう。アイザックのほうも同じような状態だった。


みどりとレベッカはその翌日も放心していた。俺も仕事は手につかなかったが、アリサは違った。雑貨屋のマーサと何かを話していた。そうして日が上ったころ、アルドラントが帰ってきた。彼は急いで戻ってきたようで泥だらけだった。


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