~直樹(帰還者)編第二章~
俺があの子たちを引き取り、3年の月日が経った。カインは俺とアルドランド・K・ラインハルトの二人に鍛えられたことで村の守り人として活動を始めていた。レベッカは今や俺の村長事業で欠かせない存在になっていた。彼女は俺が主に受ける『修繕依頼』やみどりがこなす『製薬・製造依頼』、アルドランド・K・ラインハルトがなぜかこなしている『行商人への発注依頼』を俺たちに伝えつつ、昼は雑貨屋、夜は酒場で働く元気な子だ。アルドランド・K・ラインハルトは…この村の財政を一手に担ってもらっている。彼が幻の実である『アグリア』の販売に漕ぎ付かせた。その種はアリサが持っていたモノであり、それを植えたいと言ったことで大きくなったのだが、この実は絶滅していたのだ。それを調査し、特定した彼は自分から『行商人と交渉する。』と言ったのだ。それ以来、彼に交渉事は一任しているのだが、その手腕がすごかった。村で足りなくなりそうなものに関しても管理しており、彼がそれを担当するようになってからはモノが足りなくなることがほとんどなかった。アリサは成長し、気品があるといえばいいのだろうか?雑貨屋のマーサが『船体の王妃様に似ていますね。』と言っていたのだ。こちらとしてはハラハラするしかないのだが、アリサはうれしそうだった。彼女は、昼はみどりの手伝い、夜は酒場の台所と休みなく働いていた。アリサとレベッカはもうこの村のヒロインだった。
そんな平和は突然消えた。予兆はあった。最近になり、この付近にあった村が消え、孤立したのだ。もともと王国の辺境にあったため、王国の騎士団たちは警備に来ることもなかった。しかも、最近になってそんな村の頼みの綱であった冒険者たちも数を減らしていたのだ。この村に移住した理由も貴重な戦力だなんていわれるぐらいだ。冒険者の減少は辺境の村にとって生死にかかわる問題だった。そんな村からの移住もいけいれていた俺たちの村、『クロスウェイ』は王国に目をつけられても仕方なかった。
その日はなぜかマナ、空気中にある魔法のもとでも言おうか、それが騒いでいたのだ。アルドラントに魔物の巣ができたのかもしれないから調査記録を出してもらったが、自分から手を出さなければ、襲うことがない『ニジクジャク』の巣があるのみであった。冒険者センターに連絡を取ることも考えたが、この近くにある冒険者センターは10キロほど先にあるため、朝出ても、到着は昼過ぎになり、そこから得られる情報を持ってきて議論するには遅すぎる。そんな予感がしていた。そんな時、カインが定時の周辺警備に向かったのだ。みどりも近くの森にアリサと向かうと言っていたので俺は戦闘能力が少ない、みどりたちについていくことにしたのだった。
「『レストの実』が何個だっけ?」
「20個よ。最近、みんな生傷酷いじゃない。大量に作るとなるとね…」
「そっか。なら、私、水辺で採ってくるね。」
彼女が選んだのは『レストの実』を生やす木がたくさん生えているところだった。なぜか、彼女は魔物に襲われないのだ。Aランク冒険者が恐れるような『ニードルピッカー』というダチョウが鋭いくちばしをもった感じの魔物なのだが、その卵をもらったって村に持ち帰ってきたときは本当に驚いた。その子は無事孵化し、今は村の果樹園で木に付く虫を食べている。同時ではないが、もう2個持って帰ってきており、レベッカとアリサによくなついているいい子たちだ。ちなみにそれで終わるはずもなく、俺たちの村ではウシ代わりに飼っていくことになった『ウルフカウ』、気性が荒く、集団で襲ってくる魔物の幼体を7体、その羊毛が快眠につながるという理由で乱獲されてしまった『アスプルシープ』の妊娠中の親とその子ども4匹(この子たちも村で飼育中だ。まだ羊毛に関しては行商にも出していない。)を連れてきている。彼女曰く、『勝手についてきちゃうんだよね…』という感じなので禁止とも言えなかった。そんな彼女だから魔物が守ってくれているだろうと思ったが、今日に限って魔物が周囲にいなかった。俺は仕方ないから彼女についていくとみどりに伝え、彼女の後を追ったのだった。
今でも思う。すぐに追わなかったら、魔物がいて俺が安心してしまっていたら、彼女はどうなっていたのだろうと。




