~康夫(魔族)編第ニ章~
私、船橋美香はここ、マナが溢れる峡谷の中心に近づくほど、風のマナが呼んでいる気がしたのだ。それを2人に話すと、それこそモルガンダンテスの研究にあった器の証だといわれたのだ。どうやら、モルガンダンテスは私が『器』であることに気づいていたみたいだった。それを話した私たちは『私を無事に『風の大精霊』にする』かを話し合ったのだ。その際、康夫君は周囲のマナから『人狼』の配置を聞き取っていた。幸い、そのマナのたまり場にはそんなに多くなかったから、彼は真っ向勝負を挑もうという作戦を提案した。それは彼が背後から迫る人狼たちを自分一人で相手するというものだった。春は迫ってくるであろう増援を足止めする。もし、遠吠えを聞き、その女の子が同化した場合はすぐに楽にしてあげることも彼女は自分の役目に追加していた。私はすぐそのマナの塊に触れ、『転生』することになった。
そして、その場所に来た。彼が事前に話していたように、彼が到着した瞬間、風のマナの塊が現れた。私はすぐそれに触れた。私の体にマナが流れ込んでくる。そして、魔物としての体が分解されていった。分解されていき、私はマナ、魔力の塊と変わっていく。風のマナは私を異物のように警戒しながら、まとわりつく。ある程度まとわりつき、私の形をマナで維持できるようになった時、私は私の姿をした何かと向き合うことになった。
「こんにちは。『私』。」
「…私なの?」
「そう…変わることが怖くて自分を殺しちゃうような私だよ。」
私は息をのんだ。これが試練なのだろうか。
「ねえ。この世界って、救う意味あるかな?」
「え?」
「だって、誰もがきれいごとを並べて殺し合う世界だよ?あなたがこの世界のマナを増やす手伝いをしたところであんな、自分たちの欲望を満たすためだけに余計な殺生を重ねる獣は増えるばかり。そんな魔物の血がこの世界を穢すの。そして、私は苦しむ。それをする意味はある?」
この質問が来た時、私は正直、ほっとした。
「意味あるよ。自分を殺して迷惑をかけてきた私にモルガンも康夫君も生きてほしいから助けてくれた。あの二人は私が『大精霊』になり、苦しむようなことができたら、それを排除しに向かってくれる。もうモルガンはいないけど、康夫君はその力を手に入れた。そんな彼と一緒に無謀なことに挑戦することに決めたの。他の誰かが無理だって笑うことに。だから、本当は意味があるなしじゃない。私は救うことにしたの。私たちのリーダーである康夫君がやると決めたから。」
「そっか。じゃ。『私』らしく頑張っていこうか。でも、もう自分を抑え殺しちゃだめだよ。それこそ、私たちのリーダーが困り果てちゃうわ。」
彼女は私の中に入ってきた。その瞬間、マナで覆われていた視界が晴れ、私は人の姿になっていた。もちろん、前と違う部分も多い。生まれたままの姿、つまり裸だから、私はすぐ向こうの世界でお気に入りだった腕が露出したロングスカートをマナで形成してそれを着る。髪の毛は萌木色。体の左側に風のルーンを示す模様の刺青がその髪色と同じ色で走っていた。




