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『この滅び行く世界に祝福を』  作者: 早稲農家
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~康夫(魔族)編第ニ章~

 そんでもって俺、明石大輔は仲間となった村人たちと一緒に待ち伏せしていた。


 「ソイツハ…クルンデスカ?ホントウニ。」

 「来るはずさ。あいつの、俺たちの大将の命令だ。」


 何かが飛んできていた。3体。1人は女の子…あんとき逃がした女を抱えている。


 「カモがねぎをしょってきた。」

 「オキロ…ショクジノジカンダ…」


 俺たちは構えた。カモを食べるために。

 でも、そんな中にイレギュラーが混じっていることに注意を払わなかった。



 「うん。たくさんいる。」

 「あそこが目的の場所なの?」

 「そうだよ…5体か。下りよう。」

 「どうするの?」

 「計画に変更はないよ。真っ向勝負だ。」

 「「わかったわ。」」


 2人の返事が聞こえたのを確認して、僕たちは着地した。僕、葛飾康夫が着地した瞬間、マナが溢れ、風を纏う塊が現れた。


 「…おい。何しに来たんだ?」

 「キミたちには関係ないよ。そちらが手を出さないなら、僕は手を出さない。」

 「ずいぶん余裕じゃないか。俺たちをそんな人数で対処できると思うか?」


 そのとき、美香がそれに触れ、風のマナが荒れた。一瞬で分かった。モルガンダンテスの研究にあった『精霊化』が始まったのだ。その瞬間、人の言葉をしゃべるオオカミが人の形になった。3年前から全く変わっていない。明石大輔は遠吠えをあげた。…計画通りだ。これで彼女は目を覚ます。これであいつらも僕たちが来たことに気づき、集合するだろう。どうなるかはわかんないけど、彼女のことは春に頼んだ。僕はこいつらを美香に近づけさせない。それだけを考えることにした。



 私、八神春は後ろから遠吠えを聞いた瞬間に剣を抜いた。

 彼女の体が反応し、人の耳が小さくなっていったからだ。その耳はなくなり、頭のてっぺんから耳が生えると髪の色も灰色に変わっていった。両手足も狼の足に変わり、少しずつ灰色の毛が伸び、毛深くなっていた。でも、それはすぐ止まった。両手は肘のあたりまで、両足は膝のあたりで。そして、目を開いた。その眼は人のものだった。彼女は起き上がり、こちらに歩いてきた。襲われるかもしれないと思った私は腰に差してあるレイピアに手をかけた。でも、彼女には敵意が見えなかった。

私は彼女を殺すべきかどうか迷ってしまった。


 「…ヤガミハルさんなんですね?安心してください。私はあなたを襲いませんし、後ろにいらっしゃる方にも何もしませんから。」


 彼女は私の名前を確かに言った。どうして名前を知ったのかは知らない。でも、彼女の言葉を私は信用した。康夫君の暗示がきっとうまく聞いたんだと信じて。



 私、ローズ・マリエルは暗闇の中をさまよっているような気分でいた。

 しかも、首輪をつながれている感じなのだ。そう。行動を制限されているような感覚だ。でも、起きることはできない。目を覚ますには何かが足りない。それがないと生きていくことも許されないのだ。そんな時、淡い光を纏う男の人が現れた。彼は私を見た瞬間にこの領域に住む私以外の住民にも気づいたようだった。その彼は『キミはこれから化け物に変わる。キミの村を襲ったやつらだ。そいつらと一緒になりたくなかったら、目が覚める時、強く願ってほしいんだ。なりたくないと。』と言ってまたいなくなってしまった。

 でも、私はそれで全部思い出した。私は『人狼』に襲われ、それになり始めている。でも、私はなりたくない。あんな化け物に。あんな人を殺して愉しむ存在に。

 それだけで十分だった。何かが私に迫り、私という存在を食べに来た、姿を持たないこの領域に住む住人は私を食べ、そのまま、消え去ってしまった。そうして目が覚めた私は頭の上にある耳で『目の前の女、ヤガミハルを組み伏せろ。』という命令を聞いた。なんで従わないといけないんだろう。私が動かなかったら、命令を下した奴はかんしゃくを起こしたようだ。想像以上に子どもで私は驚きを隠せなかった。

 目の前にいる彼女は私が何かするのではないかと警戒している。その警戒を解いてもらうために口を開いた。よかった。口は何も変わっていないようだった。


 「…ヤガミハルさんなんですね?安心してください。私はあなたを襲いませんし、後ろにいらっしゃる方にも何もしませんから。」


 彼女はそれを聞いてもすぐには警戒を解かなかったが、私のことを敵とは思わなくなったようだった。それで十分だった。私のことを助けてくれた人の隣に行こうとできたから。


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