~克己(竜騎士)編第二章~
「そっちはどうだった?」
俺は『オラージュ』の実を剥きながら、そうみどりに聞いた。
「克己君は『クロスウェイ』だっけ?見つけたんだったよね?」
「おう。そっちは何か収穫あったか?」
「王国のキナ臭い動きだけ。町の道具屋に話を聞いたんだけど、世界地図と一緒に説明してもらった。わかったのはその村が辺境にあるんだとしたら、その村以外はもう存在しないってことだけ。しかも、その村の様子を探るために『勇者』を送っているみたい。それで終わればいいけど、一番気になったのはその村が要塞みたいになっているってこと。もともとは辺鄙な村でそんな特産品もなかったんだって。なのに、ここ1年間でものすごく成長してるみたい。まるで敵対しているかのように成長しているから、行商人たちもそこに行くのは命を賭しているみたいだね。」
「ほう…行くのは危険か?」
「どうかな?少なくとも王国よりは信用できそうよ。その『勇者』、大和だから。」
俺は剥き終え、食べようとしていた『オラージュ』の実を落としてしまった。
それをすぐ拾い、口に放り込む。レモンのような酸っぱさとともに桃のような甘さが口いっぱいに広がった。
「冗談だろ?」
「冗談じゃないわ。私もショックすぎて名前を聞き直しちゃったし。」
「あいつら…この世界に来たら、ついに殺人に手を出したのかよ…」
「殺人?それ…本当なの?」
「ああ。しかも、頻繁にやっているみたいだ。そのせいでその付近から冒険者がいなくなっているみたいでね。魔物たちに襲われて亡くなってしまう町村も少なくないみたいだ。」
「最悪。あいつら…」
「…そこにいってみようか。」
「いいの?結構危険みたいな意見もあったけど。」
「それは地上を進むからだ。俺たちには『テイラー』がいる。」
「決まりね。行きましょ。」
俺たちはこうして『クロスウェイ』に向かうこととなった。
『クロスウェイ』に向かって数時間飛行すると町のような魔物が侵入しにくそうな壁が見えた。おそらくそれが件の急成長している村なのだろう。その村に向かっているとその村に続く道の途中で馬車が襲われていた。あの忌々しきゴブリンに。近づいてみると護衛もいないようだった。俺が我慢できなそうな顔をしているとみどりが手綱を握った。
「行って。私たちはここにいるから。」
俺は彼女に騎乗席を譲り、その襲われている場所に飛び降りた。その馬車を襲っていたゴブリンは6体。空からの奇襲でとりあえず1体、頭を蹴り潰した。奇襲に気づき、こちらに向かってきたゴブリン1体を袈裟斬りで2つにしたのち、後ろから飛びかかってきた奴を蹴り飛ばす。すぐ背後から振りかぶってきたゴブリンの胸を突き刺し、すぐその刃を抜きつつ、背後を確認する。奇襲してきた俺にかまわず、馬車の上で中にいる業者を襲おうとしているアホがいたから、すぐ馬車を駆けのぼり、そいつの顎を後ろ蹴りで蹴り上げ、着地地点でアホ面のままこちらを見上げるもう1体を巻き込むように落とし、2体まとめて突き刺した。蹴り飛ばした1体は逃げたみたいだったが、テイラーが吐いた火の玉によって燃え盛っているのが遠くからも確認できた。
「よし。これで終わりか。」
「…旅のお方ですよね?」
「無事か?」
「ええ。おかげさまで。」
「よかった。少し遅かったかもしれないと思っていたんだ。」
「いえいえ。これから、『クロスウェイ』に向かう途中なんですよ。仕入れに。ですから、荷物もなかったんで。そうだ。これから一緒に行きませんか?」
「行きませんかって…これから?」
「ええ。どうしたんです?」
「参ったな。連れがいるんだ。しかも、空に。」
俺が空を指すとその商人は口をあんぐり開けたまま固まってしまった。
しかし、首を数回横に振った後、顔を自分の平手でたたいてこちらを向いた。




