~克己(竜騎士)編第一章~
私、橋都菜々子は走っていた。ゴブリンたちは私を捕まえようと必死で追いかけてくる。走っていると急に右のほうから光がさしていることに気づき、そこに向かった。そこは崖だった。もうゴブリンたちが迫ってきていたため、私はジャンプしたのだ。その瞬間、私は金色に輝く足に体を掴まれていた。金色の女王竜サーシャはそのまま、私を山頂に連れて行った。
『大事ないか?小さきものよ。』
「ええ。助けてくれてありがとう。」
『礼には及ばぬ。実はな。おぬしたちが来たときに竜が二匹生まれたのだ。そのうちの一匹が『テイラー』じゃ。あの子はその主とともにすぐ大きくなっていった。しかしな、もう一匹は人に渡せるほど大きくはならなかった。その子をキミに世話してもらいたいのだ。できないだろうか。小さきものよ。』
サーシャはそう言って金色に輝く小さい竜を見せてきた。間違いなくメスの竜の中で最も強い種族である『ゴールドエンプレス』だった。
『その子の名は『ティア』という。』
「待ってください。掟では男のみが竜騎士になれると定められていたはずです。」
『確かにそう定めた。なぜなら、もはやこの世界に金色の女王竜が我以外に誕生することがないと思っていたからだ。金色の女王竜の主は代々女じゃ。先代もそうだったし、わが主も女だった。先の大戦で我よりも先に亡くなってしまったがな。』
「どうして誕生しないと思っていたんですか?」
『その生誕は『この世界の荒廃』を意味するのじゃ。もうこんな不毛な争いが亡くなるように我らは約束を結んだのにな…悲しいかな。これが現実じゃ。』
「…私は彼女に何を教えればいいのですか?」
『我が望むのは『平和』じゃ。そのために何をしてもよい。』
それだけ言うとサーシャはどこからかふた付きのツボを取り出し、蓋を破壊してその中身を飲み始めた。そして、こちらを見た。
『汝も少し飲むか?我と我が主、リーシャ・Q・シャーロットが好んだ酒。『ゴールデン・ローゼンディア』じゃ。』
「いただきます。」
初めて飲んだお酒は甘くほろ苦かった。
『このお酒はもう造ることもかなわぬ。しかし、汝らならば復活させるかもな。製法はここに記してある。もしよければ復活させてみてくれ。』
「サーシャさま!」
『あの青年とともに空を駆けよ。その先に明るい未来が待っておろう。』
サーシャはそれだけ言うとまた飛び立ってしまった。
それからしばらくして克己君がここに飛んできた。
「菜々子…みんなは?」
「わからない。たぶん、死んじゃった。」
「…キミはどうしてここにいるんだ?」
「サーシャ様が助けてくれたの。」
「そうか…テイラーの背に乗ってくれ。ここを離れよう。」
「うん。また戻ってこれるよね?」
「俺たちがもっと強くなったらな。必ず取り戻すぞ。」
私たちはテイラーの背にまたがってこの場所から離れていった。
必ず、この地を魔物たちから取り戻すと誓って。
「ったく。口ほどでもねぇじゃねぇか。このレベルで英雄だ?」
サーシャの口からは血が流れていた。それだけじゃない。頭も殴られ、骨が砕けていた。
(やはり…主が亡くなって以来、我は弱くなってしまったようじゃな。)
「興ざめだ。死んどけ。」
(リーシャ、シグルド、ジャック。我もそちらに向かうぞ…迎えてくれな。)
そうして彼女の意識は暗転した。
彼女は知らなかった。逃げ延びた克己たちが国を作ることにするなど…。
そして、この戦争は彼女が望んだ『本当の世界平和』をもたらすことになるなど。
克己(竜騎士)編第一章
完
これで各メンバーの第一章までの話が終わりました。
この後は一旦、クラスのメンバーがどうなったのかを整理した後に克己編に移ります。




