~克己(竜騎士)編第一章~
その直後、後ろから悲鳴が上がった。サマリが首を巨人の親指と人差し指につままれた状態でバタバタしていた。
「ギヒヒ。うまそうな女だな。あいつの薬を使ってみるか。どんな悲鳴を上げるかな?」
巨人はサマリを背中に担いでいた袋の中に入れた。
「…こどもは成長するまで家畜にするじゃん。後は…女ははらませてみるか!」
その巨人の声。私は聞いたことがあった。そう。間違いない。奴は森本だ。
私はその瞬間、どうしようもない怒りに襲われた。待ち伏せしていたのか、竜の巣はゴブリンどもが居座っていた。シューレは真っ先にゴブリンに襲われた。瞬く間に里の男子であったマルコ、ジャン、ヤックはとびかかってきたゴブリンに殺されてしまった。私はとびかかってきたゴブリンが持っていた槍を奪い、そいつの首をはねた。ジャックは巨人とサフィラと一緒に対峙している。シャルロッテもいつの間にか姿を消していた。里の女の子であるエリーゼとマリエノに襲い掛かった奴らはとりあえず八つ裂きにしてやった。私たちだけが残っている状況でジャックのほうを見ると彼は巨人の手の中で血反吐を吐いていた。
「ジャック!」
私は気をそらしてしまった。その瞬間、ゴブリンがとびかかってきた。
もう終わった。そう思った瞬間に感じたのは激しい炎だった。目を開けるとそこには金色に輝く竜がいた。その双眸ににらまれた巨人は手の中にいたジャックを投げ捨てた。
「あんたが女王竜だな?」
『左様。この地に何の用だ。わが子どもたちを殺し、汝は何を求める。』
「なんかさ…あんた、前にこの世界を救ったんだって?よくわかんないけど、俺たちはこの世界を統一、支配したいんだ。その計画にはあんたら、竜の存在は邪魔なんだよ。だから、滅ぼすことにしたんだ。おとなしく死んでくれよ。」
『断る。貴様らがわが盟友を殺害した張本人というならば、我は断じて許すわけにはいかない。わが全力を以ておぬしに牙をむこう。』
その戦闘は途轍もなかった。森本の拳をサーシャは前足で受け止めたと思えば、股下から振り上げられた尻尾が森本の顎に炸裂した。一瞬動けなくなった森本を飛び上がって上から踏みつぶしたサーシャはサフィラに怒鳴った。『我らが竜の意地を見せよ!』と。その瞬間、サフィラは咆哮を上げ、ジャックを右足で掴んだ。そして、こっちを見た。私はすぐエリーゼとマリエノと一緒に飛び乗った。
『しっかりつかまって。今の私は気を使ってあげられないから。』
そのサフィラの言葉の直後、彼女は今まで見た中でも最高の速度で空高く飛び上がり、里から離れた場所へ飛んで行った。文字通り、命を振り絞って。
はい。巨人は元クラスメイトの森本でした。
この因縁は別の章で。




