~克己(竜騎士)編第一章~
ウォッカは新入りのテッドと一緒に落石で態勢を崩し、後退し始めたゴブリンどもを追撃していた。しりもちをつきながら、後退していく奴らを倒し終わり、勝ち誇ったように振り向くとトラントのドラゴンがこっちに背中を向けて飛んできた。何が起きたのかと思い、改めて向きなおすと村の入口に巨人がいた。巨人は左手に持った棍棒でシュシュのドラゴンを騎手ごと叩き潰し、右手で誰かを掴み、握りつぶしてこちらに投げつけてきた。岩に叩き付けられ、血を吐いていたのはトラントだった。
「トラント。しっかりしろ!」
「ウォッカか?畜生。死ぬときは女の腕の中がよかったんだがな。」
「冗談言ってんじゃねえ。あいつはどこから来たんだ?」
「南だよ。あの断崖絶壁を登ってきやがったんだ。」
「そんな…」
「逃げろ。あいつにはかなわない…」
「そんなの、言われてはいそうですかなんて言えるかよ…トラント?」
もう一回話しかけた時にはもう息を引き取っていた。
「…テッド。お前は逃げろ。命令だ。」
「ウォッカさん?」
「俺よりも戦えない奴が無駄に命張るんじゃねえ!」
「ひっ…」
テッドはすぐ自分の竜に乗って逃げてしまった。これで最悪の事態になっても竜は滅びないだろう。あいつ次第なのは否めないが、きっと大丈夫だ。そう思うと手の震えは消えた。いいだろう。貴様がこの地を脅かしたことを少しぐらい後悔させてやる。
そう思いながら、ウォッカは目の前の巨人に突撃していった。
俺が掃討し終わり、西のほうに向かった時にはもう時すでに遅かった。ここを守っていた4人のうち2人は竜とともに死んでいた。唯一の生き残り、瀕死の状態で放置されていたウォッカは中央広場の柱に寄り掛かって座っていた。
「ウォッカ…何があった?」
「巨人が南の断崖絶壁を登ってきていたみたいです。誰も太刀打ちできませんでした。」
「奴はまさか…竜の巣に向かったのか?」
「はい。どうかみんなを頼みます…」
「…わかった。ゆっくり休め。」
「あ。そうだ…テッドは逃げてもらいました。あいつはまだ…」
その続きは語られなかった。ただ、項垂れた顔には涙が一筋流れていた。
私、守宮美弥子はジャックたちと一緒に逃げている真っ最中だった。
「ジャック…私たちはどうなるの?」
「大丈夫。キミは傷つけさせないよ。」
私は不安だった。菜々子ちゃんは周囲を警戒している。ゴッツとカイトは空を飛びながら、奇襲の警戒をしていた。そんなとき、周りの岩壁からゴッツに向かって何かが飛びつき、彼の首にかみついた。彼はそれを外すことができないまま、溶岩に突っ込んでいった。
「ゴッツ!畜生。敵襲だ!」
そうカイトが叫んだ瞬間、岩壁の凹凸から獲物を持ったゴブリンがたくさん現れた。
ジャックは私をかばうように移動したため、何人かの人がフリーになった。その1人がマックだった。マックはこっちに移動しようとしたところを跳びかかってきたゴブリンが持っていた槍に背中を突き刺されてしまった。それに気づいたカイトがそのゴブリンを殺そうと近づき、まだ岩壁に隠れていたゴブリンが弩で彼の頭を撃ち抜いた。即死した彼はそのまま墜落し、菜々子だけが取り残されてしまった。
「菜々子!」
「大丈夫。早く逃げて!」
菜々子は火口に向かって逃げて行った。そこは竜の巣とは違い、灼熱の袋小路だ。人も魔物もそんな空間では生きられるはずがなかった。私も追おうとしたが、ジャックは私の腕をつかんで首を振った。




