~康夫(魔族)編Prologue~
気づいた時には森の中だった。
周りにいたのは八神春さんや平家克己君などほとんどのクラスメンバーだった。でも、クラス委員の鷺宮さんや八神君、そして、大和の姿が見当たらなかった。
「何が起こったんだ?」
克己君がそう言った直後だった。目の前に見慣れたジャージを身に着けた右腕が飛んできた。そう。右腕だけが。飛んできた方向を見ると巨大なカマキリが斉藤の頭から体を食べていた。その周りには斉藤の体から出たのだろう液体が盛大に広がっており、その光景にはいてしまっている奴もいた。その光景を見てしまった春さんは両手を口に当てて震えていた。僕はとっさにそこから逃げるしかないと思って彼女の腕をつかんだ。
「春さん!逃げるよ!」
こうして僕らは散り散りに逃げることになったんだ。後からわかったけど、無事逃げられたのはたったの3人。その森の中でカマキリがいた方向に逃げた克己たちだけだった。その森の中では斉藤を始め、あと3人があのカマキリに喰われたらしい。5年後に再会したそう克己は話していた。僕らが逃げた方向にはフォークのような槍を持った悪魔が森の外で待ち構えていた。そうやって捕まった僕らは魔族が支配する王国の城に連れて行かれた。
「で?こいつらが人間どもの切り札だと?」
「はい。『勇者召喚』で能力を持ち得る素体です。」
「モルガンダンテス。全員お前にやる。」
玉座で肘をついている魔王に書類を持っていた羊人間がそう伝えたところ、ローブをまとった浮遊する骨に魔王はそう言った。その『モルガンダンテス』と呼ばれた骸骨は魔王に対してお辞儀をした後、こちらを見た。
「でわでわ。みなさん。私の実験に付き合ってもらいましょう。」
奴が手を挙げた瞬間、榎本祥子は真っ先に逃げた。逃げられると思ったのだろう。
しかし、その先には転移してきたモルガンダンテスがおり、彼女はそのマントにくるまれてしまった。
「全く生きがいいですね。でわでわ。彼女を最初に素体にしましょう!」
モルガンダンテスの表情は全く分からなかったが、うれしそうだった。
そうして、僕たちは奴の研究所へと何人もの武装したリザードマンに囲まれた状態で移動させられてしまった。春さんはずっと震えていた。僕は彼女の手を握るぐらいしかできなかったが、彼女が「ありがとう。」と何回か言ってくれていたのは覚えていた。
モルガンダンテスの研究所の中を歩いていくとその先にあった、三つのカプセルがある部屋に案内された。モルガンダンテスはそのうちの一番左のカプセルに榎本祥子を入れ、真ん中のカプセルと右のカプセルを開いた状態で振り向いた。
「この娘のデータがこれですか。うむ。そこの二人を連れてこい。」
船橋美香とよく僕を蹴っていた森本俊介がカプセルに入れられた。そして、二人のデータを受け取った奴は『X-001』という紅いアンプルを榎本のカプセルに、『X-002』という蒼いアンプルを船橋のカプセルに、『X-102』という藍色のアンプルを森本のカプセルに挿入した。
「さあ。実験開始です。」
モルガンダンテスが手を叩くと装置が動いた。




