~康夫(魔族)編第一章~
康夫編の第一章開始です。
話は3年前に遡る。
「おい。魔王。この命令はなんだ?」
「これはモルガンたっての頼みだ。あいつは最後の時を研究所で過ごしたいみたいだからな。それには優秀な悪魔が必要なんだよ。」
魔王は表情を変化させることなく小峰に言い放った。小峰はモルガンダンテスの研究所に配備された八神春のことだった。彼女の戦闘能力は『リリム』となったことで、単騎で村を魔族のものにできるくらい跳ね上がっていた。しかし、魔王はそんな彼女を戦力としてではなく、モルガンの助手として使ったのだ。それが小峰には気に喰わなかった。
「モルガンに騙されてるだけじゃないのか?」
「あいつはそんなことを考えないさ。お前は『賭博都市ガーランド』を破壊しろ。」
「ちっ…。命令に従ってやるよ。覚えておけよ。」
小峰は骨でできた大剣を担いで玉座から出て行った。魔王は玉座に座り、その天窓を見上げた。月が青白い光を放ち、玉座を照らしていた。
「ヤスオ君。すまない。キミの願いは叶えられそうにないな。」
魔王は目を閉じた。小峰はその任務を1年半かけて行った後、そこで死体を自分の兵士として量産し、魔王からの帰投命令を3回断ったのちにその軍隊を連れて戻り、魔王城を1日で攻略、魔王を殺害した。それは彼らがこの世界に来てから2年目のことだった。そして、小峰が魔王になり替わった。そして、春を魔王城に召喚しようとした。しかし、春は来なかった。モルガンを排除しなければ、春を自分のものにできないと理解した魔王コミネは米山にモルガン排除を命じた。それが半年前のことだった。
「モルガン様。今日もゾンビが30体ほど侵攻してきました。」
「ここの攻略を魔王に命じられたのかな?ここ半年、毎日来ているね。」
「モルガン様。ここを離れる準備をしてください。おそらく敵はこの建物の弱点に気づいています。あなたが死んでしまっては魔王さまの遺言を果たせなくなってしまいます。」
「もとより、私は果たせると思ってないよ。あの約束はな。」
魔王は死ぬ前にこの研究所に来ていた。そして、康夫君がどこまで課題をこなしているのかを確認していた。その日にちょうど、地下からあふれる瘴気が観測できなくなったのを魔王さまたちは確認していた。その日から彼は飛行をチャレンジし始めていた。
彼が奈落から飛んできているのを視認できた日、魔王さまが討たれた。重役もみんななくなってしまったらしく、その再編に小峰は苦戦しているという話だった。
モルガン様の研究費はその月からどんどん減っていった。そのかわり、米山君にどんどんお金が流れていった。何をしているのかは知らなかったが、魔王の遺言、『屍族は増やしていけない。増やせば、この世界が壊れてしまう。もし、屍族が増え始めたら、ヤスオだけは生き残らせろ。彼が持つ力、『妖精王の息吹』があれば、この世界は再生する。モルガンにはその研究を行ってもらう。彼の妖精の力を戦闘データから解析し、そこから、魔族を精霊に転化させる魔法の解析を行うんだ。あれは高位の妖精だけができる魔法だった。それこそがヒントのはずなんだ。ハルはその手伝いを行ってくれ。』といったことは当然、私たち以外に知られていない。モルガンはこの半年で何かをつかんだようで船橋美香をここに連れてきていた。
「最悪の場合。私たちはこの世界が滅びるのを止められないのかもな。」
「…あきらめないでください。何かわかったんですか?」
「…可能性しかわからなかったよ。でも、彼に託すには十分な情報だ。もし、彼らがここを破壊するのが早かったら、キミは彼女と一緒にあの穴を飛び降りてほしい。」
私はそういわれていた。だから、最悪の事態に備えて私はいつも武器だけは万全の状態にしていた。やられたとしても、あいつらに一矢報いてやる。そう思いながら。




