~直樹(帰還者)編Prologue~
「何も知らないから。他に用がないなら、退室してくれない?」
「だが、貴様が最後に王女とあっていたんだ!なぜ彼女は自分の部屋で死んでいたんだ!」
私は保木に迫られていた。知っている。アリサも死んだことにしたかったのだ。奴らは。私が知っているのは奴らがアリサそっくりの遺体を作って王様と王女が同時に亡くなってしまったという演出を行っているということだけだった。
昨日の晩、王様は庭園で亡くなった。彼の私室には襲撃者のものらしき血だまりと王様のものであろう血痕、そして、空の酒瓶があった。おそらく彼はそれを飲んでから庭園に来たのだろう。その最後をみとった私たちはすぐ工房に移動した。私は拳銃を作り、彼女から城外脱出の補助を頼まれた。私は彼女と一緒に地下水路に続く道に向かっていた。その道は彼女の言っていたようにほとんど兵士がいなかった。何人かいたのだろうが、黒装束を纏う連中が彼らを殺害していた。私は拳銃を構えた。こちらにいち早く気づいた奴に銃口を向けて発砲する。その反動で手がしびれるが、そんなことを気にしてはいられない。何が起きたのかをまだ理解できてなかったお仲間さんにも銃弾を撃ち込む。その発砲音に誘われ、何が起きたのかを確認しに来た奴らに向けてまた引き金を引いた。一瞬でそこは死屍累々の光景が広がった。私は動けなかった。『…お姉ちゃん?』と言いながら、袖を引っ張るアリサをみて我に返る。後悔するのはまだ早いと。
『大丈夫。先に進むよ。』と言い、私は先に進む。その先には誰もいなかった。地下水路を抜け、城門の外に出た私は待ち伏せがないか、周囲を確認していた。そして、曲がり角に差し掛かった時、何かが出てくる予感がしてすぐ構えた。
「わわ…まって。撃たないで。」
そう言って両手を挙げていたのは牢屋にいるはずの鷺宮さんだった。遠くからは兵士の悲鳴が聞こえる。そこから、私は彼女がここに来なければならないといった理由を理解した。彼らとともにこの国から逃げる。そうしたほうが彼女は安全だろう。私もそう思った。
「鷺宮さん。アリサをお願い。必ず逃げてね。」
私はアリサについていくように言った。アリサは私にもついてきて欲しいようだった。でも、私は『彼女が生きていること』を知ってアイツらを疑う。必要ならこの国にアリサが戻ってこれるように掃除しないといけない。もちろん、あいつらの目をかいくぐっての作業になるから難航するだろう。それでも、私はこの国を見捨てたくはなかった。
「ごめんね。私はまだやらないといけないことがあるの。」
「それが終わったら、来てくれるよね?」
私はうなずいた。鷺宮さんを見て促す。そろそろ、地下水道を通って何人かの兵士がやってくるはずだった。その前に私も退散しないといけなかった。
これが昨晩あったことだ。間違いなく彼女は死んでいない。どこにいるかまでは知らないが、鷺宮さんが亡くなったとは聞いていなかった。
王様と王女が亡くなった日から2日。彼らは悪名高い「ウィザード」と「アルケミスト」によって殺されたと発表があった。彼らの名前も公開されたが、誰も見つけることはできなかった。それと同時に国民の恐怖対称である魔物を滅ぼす希望として私たち6人が降臨したと中央政権は発表した。私たちは『国民の希望』らしい。
この持ち上げ方に嫌気を覚えていたのは私だけだった。
直樹(帰還者)編Prologue
完




