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『この滅び行く世界に祝福を』  作者: 早稲農家
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~直樹(帰還者)編Prologue~

あと一話でプロローグは完結です。

その後も彼の話が続きますが・・・

俺たちは廊下を駆け抜けていた。何人かの警備兵が追ってきている。そろそろこのペースを維持し続けるのは彼女が厳しそうだった。

 

 「少しペースを落としつつ、先に向かってくれ。後ろを足止めする!」

 

 俺は素早く術式を展開した。範囲は廊下いっぱい。そり立つ壁。それで十分だ。


 「アースウォール!」

 

 発動した瞬間にそり立った壁に正面衝突したのだろう。金属がこすれ合う音が聞こえた。俺はすぐ反転し、鷺宮を追った。俺たちはあの牢屋を出てすぐ、地下水道から逃げようとした。しかし、それを待ち伏せしていた部隊があった。それは国王を暗殺するための舞台だったらしく、その近くに右大臣がいた。奴は俺たちを見るな否や『魔女が逃げた!』とわめいたのだ。暗殺者たちは数人残って俺たちを殺そうと迫ってきた。2,3人は王様を殺害しに向かったのだろう。でも、それを気にしている場合ではなかった。左から迫る凶刃。それを回避し、風の刃をイメージしながら術式を展開し、横から近づいてきた暗殺者に放つ。盛大に右肩から出血し、戦闘不能にさせた直後に火の玉をイメージしながら、それを多重展開する。そして、前方から迫ってきた5人に向けて放つ、反応したのはそのうちの1人。それ以外は燃え盛る炎に包まれていた。俺が討ち漏らした奴らは鷺宮が生み出した土くれの手に掴まれ、握りつぶされていた。しかし、その対処に時間を取ったために俺たちは地下道に移動できなかった。そこで俺たちは城内を駆け回る羽目になった。そして、俺たちはやっと城内を抜け出し、城壁にたどり着いていた。


 「城門を閉めろ!」

 「城外に逃げだした際に終えるように馬を出しておけ!」

 「最後の目撃情報から位置を割り出すんだ!急げ!」

 

 俺は『反響』の魔法で彼らの伝令を盗み聞きしていた。


 「どうやら、まだ王様は死んでないみたいだな。」

 「ダメ。王様の魔力を感じない。発見されてないだけだと思う。」

 「ちっ…馬車は?見えるか?」

 「正門の前に隠密魔法で隠されてるね。」

 「先に下りていてくれ。俺は城門を封印する。」

 「ううん。逆がいいわ。あの門を接着するなら錬金術のほうが向いてるから。」

 「わかった。」


 俺は城壁を飛び降り、『滑空』の魔法で着地し、魔力の塊を捜索した。あっけなく見つかったそれに『解除』魔法を放ち、馬車を出現させた。鷺宮は正門のあたりまで走り、外側を金属コーティングすることで城門を封印し、そっから飛び降りたようだった。


 「馬は?」

 「いない。どうする?」

 「何とかできない?」

 

 馬がいないなら、作るしかないと思ったが、別の門から出てきた騎士が乗ってきていた馬を見てひらめいた。威力は最小。弾数は20発ぐらいにしてこっちに向かってくる兵士たちに狙いを定めた。それをみた鷺宮は後ろのほうを警戒してくれていた。


 「悪いな。そのお馬さん。拝借させてもらうよ。」


 俺はそのまま空気の弾を彼らに放った。放った弾は騎手だけでなく、騎馬にもあたった。6人ほど来ていたのだが、ほとんどの馬は倒れ、使い物にならなかった。最初に来ていた馬のみ無事だった。弾が当たった瞬間に騎手を弾き飛ばしたのだろう。首に当たった跡があった。それを魔法で癒し、その馬を引いて馬車にセットした時、鷺宮が王女、たしか、アリサとかいう名前だった、を連れてきたのだった。彼女は血にまみれていた。


 「…何があったかは馬車の中で聞く。早く乗れ!」

 

 俺の言葉に鷺宮はうなずいた。俺は彼女たちが乗り込んだのを確認し、馬に鞭を打った。馬車用の馬ではないため、速度は出ないと思っていたが、ある程度の速度が出ていた。遠くなっていく城門、それでも俺は安心できなかった。なぜ彼女が血まみれだったのか。王様はどうなったのか。なんで彼女一人があそこまでこれたのか。もし協力者がいたのなら、その人はどうなったのか。そこが明らかじゃなかったから。そして、あのボードが予言した『腐敗』。あの王国に一体何が起きてしまうのか。最悪の事態を予想しつつ、俺たちはどんどん城から離れていった。


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